表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/205

全力の……

1日のアクセス数が2000を超える日が増えています。

読んでくださる皆様に感謝です。


※投稿した日に改編する愚行、お許しください。

 部屋の一部は壁の残骸が崩れ落ちて瓦礫となっており、そこには大量の粉塵が舞い上がっていた。

 ダンジョンの壁や床は素材こそ不明だが、壊れにくい事で有名である。

 にも関わらず、その一帯の壁や床は傷つき、抉れ、焼け焦げで粉々に砕かれていた。


タワイモナイ(たわいもない)カトウナルニンゲン(下等なる人間)ナド、コンナモノヨ(など、こんなものよ)


 ダンジョンの主である四大精霊龍は、その瓦礫の山を見ながら、もうそこに存在していない目障りだった雑魚(ざこ)に向かって言った。

 ダンジョン最強である自分に立ち向かってくる勇者達を待ちわび、強者を制してこそ己が強さを誇る事ができると思っていたのに、やってきたのは脆弱な人間の子どもが一人。

 己が強さを愚弄された気がして、手加減ができず、死体すら残さずに亡き者にしてしまった。

 もし、強者に相応しくない行為だと思わないでもないが、自身の誇りを傷つけた者には相応しい末期だと思い、納得する事にした。

 これからまた、強者達が来るのを夢見て長い年月を寝て過ごすだけの日々が……。


「何処へ行く?」


 寝床へ帰ろうと踵を返した時に、後ろから声をかけられた。

 あり得る事ではないと思いながらも、四つ首の一つが振り返る。

 そこには瓦礫の山の中に立つゴミがいた。

 衣服は所々が破れさり、すでに用をなしておらず、そこから見える皮膚は傷だらけになっていた。

 頭から血を流し、身体中が汚れにまみれたその姿は屍者(ゾンビ)を連想させるに十分だった。


シブトイサダケハ(しぶとさだけは)ホメテヤルゾ(褒めてやるぞ)カトウセイブツ(下等生物)


 龍は称賛と嘲笑を立っている小さき者に送った。


「……下等生物ね。じゃあ、お前はその下等生物すら殺せない図体がデカいだけの蜥蜴だな」


ナンダトッ!(なんだとっ!) ムシケラノブンザイデ(虫けらの分際で)ワレヲグロウスルカ!(我を愚弄するか!)


 四つの首が一斉に牙を剥き、小汚い矮小な者を恫喝する。

 龍にとって蜥蜴などと一緒にされるのは最大の侮辱であり、怒りのあまり振り下ろした前足で、床が粉々に砕けちる。

 しかし、小さき者は動じない。

 その小さき二つの眼は、大きな八つの眼をしっかりと見据えていた。


「俺は最近、自分より強い者と戦ってなかった。雷の剣を持つ剣士にも、古代魔法を操る魔法兵にも、五十人の兵士にも、二十人の騎士にも俺は負けなかった……」


 小さき者が小さき言葉を語る。

 それは龍にとってはあまりにも小さき事で、聞くにすら値しない事だった。

 だが、小さき者は語り続ける。


「湖を吹っ飛ばした時にも思ったんだ。俺は全力を出しちゃいけないって。そして、俺はいつの間にか常に手加減して戦うようになっていた」


 小さき者の言葉が引っかかる。

 奴は『手加減して戦うようになった』と言った。

 その言葉は龍の自尊心(プライド)を激しく揺さぶった。


「お前は俺より強い。なのに、お前は俺に全力、俺は手加減している。勝てるわけがない」


デハ、ドウスル?(では、どうする?)


 龍の笑いながらの言葉に、小さき者も小さく笑った。


「俺も全力でやらせてもらう! これからが本当の勝負だぁああ!」


 怒号とともに小さき者の身体から凄まじい魔力が放たれ、周囲にあった瓦礫と粉塵を吹き飛ばしていく。

 瓦礫はさながら散弾のように龍の身体に当たるが、硬い鱗に阻まれて、虚しく地面に転がるだけだった。


「いくぜぇええ!」


 小さき者が先ほどとは比べものにならない速度で肉薄してくる。

 龍は前足で踏み潰そうとするが、小さき者はその前足の下を通り抜けてあっという間に腹の下に潜り込む。


「うぉおおおおおおおおおおっ!」


 怒声と共に刀を振り下ろす小さき者。

 所詮は脆弱な剣、鱗を斬ることはできないとタカを括っていた。

 しかし、その剣は龍の腹に大きな横一文字を描いた。


「グワァアアアアアアアアアア!」


 腹を切り裂かれた痛みに思わず、咆哮をあげる龍。

 そして、怒りに満ちた眼で尚も切りつけようとする小さき者を睨みつける。


カトウセイブツガッ!(下等生物がっ!)チョウシニノルナァ!(調子に乗るなぁ!)


 龍はその巨体を回転させ、尻尾で全てを薙ぎ払おうと試みる。

 しかし、小さき下等生物は信じられない速度で、舞い上がり、尻尾を躱す。

 薙ぎ払いに失敗した龍の身体は一瞬とはいえ、無防備な身体を晒していた。

 そこに下等生物の刃が襲いかかる。

 そして龍の巨体を滑るように移動しながら、至るところを斬り刻んでいく。


「ぁああああああああああああああっ!」


 下等生物は叫びながらも留まる事なく、龍の全身は斬り刻んでいく。

 しかも、その傷は一つ増えるごとに深さを増していき、龍の身体を着実に血に染めていっていた。


「グオオオオオオオッ! オ、オノレ、(お、おのれ、)ニンゲンフゼイガッ(人間風情がっ)!」


 龍は悪態を吐きながら、背中の巨大な翼を広げ、宙を舞った。

 下等生物である人間に空を飛ぶ術はない。

 覚悟するがいい!

 このまま空から魔法を放ち、嬲り殺しにしてやる。

 そう龍が思った時、小さき下等生物の咆哮が耳に届いた。

 地面に這いつくばる下等生物は武器を構えて、魔力を集中させている。


「全力でいくぞっ! 《暴剣・狂飆》!」


いつも拝読ありがとうございます。


日に日にブックマークしてくださる方が増えています。

眼に見える成果が得られるって素晴らしいです!

皆さん、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ