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本当のメアリー

今月のアクセス数が30000を超えました!

ちなみに先月はトータルでも16000でした。

小さな一歩ですが、確実に前に進んでいる事を実感できて本当に嬉しいです。

皆さま、本当にありがとうございます!

 俺は鼻腔を擽る良い香りで目を覚ました。

 石造りの天井と壁、見慣れない部屋、使ったこともない上質な毛布(ブランケット)とシーツ。

 自分の置かれた状況に戸惑いつつも、俺はふらふらと良い香りのする方に歩いていった。

 そして、扉を開けた先……そこにはこの世の楽園が存在した。

 人が寝られるほどの大きさのテーブルには、所狭しと料理が並べられており、さらに奥の台所からはまだ新しい料理が誕生する音が聞こえて来る。

 そして、桃色の髪を束ね、額に汗を光らせながら料理をするエプロン姿の女神がいた。

 一瞬、自分は死んだのかと思ったが腹の虫が鳴り響いたことで、勘違いだと気付けた。

 女神も俺の存在に気付いたようだ。


「もぅ! やっと起きたの?」


 そう言いながら台所から出てくる女神、メアリーさんだ。

 それにしてもエプロンが似合いすぎる。

 最早、エプロンはこの人のためにあるのではないか、と思わせるほどだ。


「いつまでも起きないから料理がこんな事になっちゃった。もぅ! 全部食べてくれないとお姉さん怒っちゃうぞ! なんてね」


 相変わらずの可愛い笑顔を浮かべながら、メアリーさんがそう言った。

 なんとっ! 全部食べていいのか?

 これはありがたい!

 どれくらい寝てたかはわからないが、とにかく腹の中が空っぽで死にそうなんだ。


「あの……いただいていいですか?」


「えっ? ええ、いいよ。しっかり食べてね」


 俺はメアリーさんの返事を聞くや否やテーブルの飯にかぶりついた。

 美味い! 美味いぞ! これは帝都の屋敷で食べた料理の何倍も美味い!

 これは止まらん!

 俺は片っ端から料理に食らいつき、自らの糧とするために胃袋の中に収めていった。

 それでも俺の胃袋は催促をやめず、次々と料理に手が伸びる。

 どんどん料理がテーブルから消え、空の皿が積み重なっていった。


「えっ? えっ? えっ? も、もう、これだけ? ちょ、ちょっと待ってね! まだまだ料理出すから!」


 テーブルの上に空の皿が並んでいるのを見て、慌てて台所に戻るメアリーさん。

 なんて良い人だ!

 まだまだ出してくれるなんて!


 それからどれだけ経ったろう。

 メアリーさんの家の食器と食材を使い尽くしたところで俺の食事は終わった。


「はぁはぁ……ま、まさか全部食べてくれるなんてね。ここまで来ると嬉しいのか悲しいのかよくわかんないね」


「ふぅ、とっても美味しかったです! メアリーさん。ありがとうございました」


 肩で息をするメアリーさんに俺は頭を下げて、礼を言った。

 こんなに満足したのは久しぶりだ。


「まぁ、御馳走するって言ったのは私だからね。それより……少し、お話しない?」


 メアリーさんはテーブルの上の食器を全て台所に運び終えた後、唐突に聞いてきた。

 さっきまでとは表情が違う。

 少し思い詰めたような、悩んでいるような、なんとも形容し難い表情だ。


「何の話をしましょうか?」


 俺は雰囲気を変えようと敢えて明るく言い放ち、椅子に座ったが、メアリーさんの表情は変わらない。

 どうやら茶化していい話ではないようだ。


「単刀直入に聞くわね。君は……何者なの?」


 メアリーさんの表情は真剣そのものだった。

 とても『ただのGランク冒険者です』とふざけて言える状況じゃない。

 あの虎が世間的にどれだけ強いと認識されているかはわからないが、それでも普通の低ランク冒険者が倒せる奴ではないだろう。

 ここは正直に話した方がいいな。


「俺は……いえ、小官は帝国軍ダウスター領軍所属、リクト・フォン・シュナイデン少尉であります」


 俺は立ち上がり、敬礼をしながら名乗った。

 それが礼儀だと思ったからだ。


「帝国……それって、ヴァランタイン帝国の事よね? それを証明できる物は何かある?」


 俺は魔法鞄に入れていた階級章と指に嵌めていた貴族証を見せた。


「この紋章は間違いないみたいね……そっか、帝国の軍人さんだったのか。もぅ、道理で強いわけだ」


「冒険者として活動している時は所属は名乗らない方が良いと言われましたので、名乗らなかった非礼をお詫びします」


 俺が頭を下げるようとすると、メアリーさんはそれを手で制した。


「いいのよ。私も名乗ってないしね……そうだね、名乗らせておいて名乗らないのは礼を欠く事よね。もぅ! 覚悟は決めたわ! 私も名乗らせてもらうわね!」


 名を名乗るのに覚悟がいるのか?

 もしかして、敵対勢力の共和国の人間か?

 それとも帝国に怨みを持つ者か?

 もし敵だった場合、俺はメアリーさんを斬れるのか?

 そう考えると背筋を冷たいものが伝った。

 ふと、メアリーさんを見るとやはり緊張しているのか、表情が硬い。

 これは俺も覚悟を決める必要がありそうだな。


「覚悟はもぅいいかな? じゃあ、名乗らせてもらうわね」


 俺の覚悟を待っていたように、緊張した面持ちで話し始めた。


「えっと、その……メアリー・マニングってのは偽名で、ダンジョン研究家って言うのも何て言うか仮の姿で……ほ、本当は…………わ、私はシーラン大公国の第三公女、メアリー・シーランなのよ!」


「シ、シーラン大公国っ!」


 メアリーさんは思い詰めた表情をしながらも、意を決したように堂々と名乗りを上げた。

 それにしても、シーラン大公国って……。

 メアリーさん…………それって、何処ですか?


いつも拝読ありがとうございます。


ユニークで見ると一日に二百人以上の方がこの小説を読んでくださっているみたいです。

数字で言うと簡単ですが、想像してみると嬉しくて堪りません。

もっと多くの方に読んでいただけるよう頑張ろうと改めて思いました。

これからもよろしくお願いします。

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