冒険者組合フェンドラ支部
帝都から乗合馬車に揺られて6時間。
帝国領内で唯一ダンジョンがある街、フェンドラに到着した。
フェンドラは帝国直轄領で帝都より派遣された男爵が代官として取り仕切っている街だ。
ダンジョン目的の冒険者が多数いるせいで正確な人口はわからないが、とにかく住人より冒険者の方が多いのは間違いないらしい。
あー、それにしてもけつが痛い!
なんせ馬車の中はむさい男だらけで狭いし暑苦しいし、臭いしでたまらなかった。
あんなのばっかりがいるダンジョンなんて、中はどんな地獄だよ……。
なるべく清潔だとありがたいんだけどなぁ。
さて、とりあえずこの街を拠点にしてダンジョンに入るとするか。
先ずはこの街の冒険者組合に行って、お勧めの宿でも確保してから今後の方針を決めるとするか。
俺は街の中心部に向かって歩き出した。
この街は冒険者組合を中心に円状に広がっているから、初めてでも迷わないのがありがたい。
しばらく歩くと、前方に高い建築物が見えてくる。
なんとっ! ここの冒険者組合は四階建てかよっ!
造りは同じでも帝都支部よりデカいなぁ。
俺は感心しながら中に入っていくと、さらにびっくりした。
「角虎の肝が高値だな。狙いに行くか?」
「ばぁか! それより隻眼熊の眼球の方がいいんだよ! これから値上がりしていくはずだからな!」
「今日はさっぱりだったぜ……」
「オークキングの肉を高値買取中です!」
冒険者組合の中は多数の冒険者で溢れかえっており、活気に満ちていた。
へぇ、これはすごいなぁ。
やっぱりダンジョンがあるとこれだけ盛況になるんだな。
おっ! 獣人やエルフ達もいる。
ダウスターには一人もいなかったから初めてみたよ。
と言っても、当たり前か。
ここはダンジョンがある街で国家、種族間の諍いは禁止されているからいいが、普通に帝国領内を獣人やエルフが歩いていたら捕まるか殺されるかだろう。
俺は無いけど、年配の人ほど過去の大戦のせいで獣人やエルフ、魔族に強い忌避感を持ってるからなぁ。
そのせいで差別や偏見がなかなか抜けないんだよ。
まぁ、関係修復にはまだ時間が必要なようだ。
おっと、そんな事を考えに来たわけじゃない。
俺も依頼掲示板に目を通しておこう。
…………なるほど。
ダンジョンの依頼はフィールドの依頼と違って受注制じゃなくて、高値で買取している物を貼り出しているだけなのか。
フィールドだと依頼票が貼ってあって、自分が受けたい物を受付に提出して受領してから依頼をこなす。
しかし、ダンジョンでは依頼というものはなく、ただ高値で買取している物を貼り出しているだけで、受領する必要性はないようだ。
でも、これって他の冒険者と依頼の取り合いにならないのか?
折角取ってきても他の人が先に納品してたら意味ないよなぁ。
って事は、あんまり人気のないものを選ぶべきなのか?
「よぉ、兄ちゃん。字が読めないのなら代わりに読んでやるぜ。10分銅貨1枚でな」
身なりのいい中年男性が声をかけてきた。
生憎と俺は字が読めるんだが、識字率の低い土地の者には必要な事だろう。
あっ、読めないフリしてこの人から情報を得ればいいか。
組合員は忙しそうで、話を聞いてもらえる雰囲気じゃないしな。
「少し疎いところがあるので、お願いします。これはなんて書いてありますか?」
「これは『兜虫騎士の甲殻を金貨1枚で買取る』と書いてあるな。だが、こいつはやめといた方がいい。兜虫騎士は小さくて素早いからな、倒すのにはコツがいる。だが、その割には報酬が安い」
書いてある内容だけでなく、追加情報までくれるとはありがたい。
この調子で色々聞いていこう。
「取りっぱぐれのない物はありませんか?」
「そうだなぁ。腕に覚えがあるならさっきから組合員が言ってるオークキングの肉だな。あれは高級食材でかなり需要があるから先ず買取が下がる事はない。だが、オークキングは他のオーク達を従えているから大規模なパーティーで行かないと命はないぞ。もし、一人なら、こっちの綿毛兎の毛皮の方がいい。こいつはコートの材料になるから、今の時期は需要が高まるんだ。それに綿毛兎自身はすぐに逃げてしまうから難易度は高いが、生命の危険が低いのも一人向けだ」
そうか。
難易度が高い=強敵というわけでもないのか。
解体とかってどうすればいいんだろう。
自前か?
「解体とかってどうするんですか?」
「難しい部位は組合の解体班がやってくれる。デカいのを狙うなら組合が有料で魔法鞄を貸し出しているからそれを利用するといい。さて、10分経ったが、まだ必要かな?」
意外と早いな。
だが、もう少し情報収集させてもらおう。
情報はダンジョンでは重要だからな。
俺はその後も色んな事を尋ね、結局謝礼も込めて銀貨1枚を渡した。
それに対して男は笑顔でルイードと名乗り、情報屋もやっていると言った。
そして、大抵ここにいるからいつでも声をかけてくれと言い残して去っていった。
さて、聞きたい事は全部聞いたし、全てを鵜呑みにはできないが軽くダンジョンに入ってみますか。
どんな所か分からずに先輩冒険者について行くだけだは面白くないからな。
先ずは一人で入って、パーティーを組むのはその後だ。
俺はそのままダンジョンに向かった。
いつも拝読ありがとうございます。
……だけでは寂しいので今回から少し雑談を載せる事にしました。
次回よりダンジョンに入るのですが、あくまでこれは帝国の任務という形ですので、小説スタイルを冒険者に鞍替えするわけではありません。
ですが、しばらくの間はダンジョンでの活躍が続きますので、よろしくお願いします。
新しいヒロインの登場もある……かも?




