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二人の子爵

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大した事ではないのかもしれませんが、私には大きな一歩であります。

これからもよろしくお願いします!

 ヨーゼフのおかげでジェニングス中将から解放された俺はとりあえず、中庭に移動した。

 それにしてもさっきの中将の様子を見るに、俺の貰った勲章や刀は思ってた以上に価値があるようだ。

 それにしても……。


「ジェニングス中将直属の部下でヴォルガング大尉とリンテール少尉が嫁……か」


 悪くない……悪くないんだよなぁ〜。

 はっきり言って今の生活に不満はない。

 寧ろ恵まれ過ぎているぐらいだ。

 ダウスター子爵様は良い領主様だし、良い主君でもある。

 ロースター軍曹にサイモン上級曹長も良い人達だし、領地の人達も温かく、優しい人達ばかりだ。

 だが、このままダウスター領軍にずっと居られるとは限らない。

 俺は帝国軍人であり、帝国軍所属だ。

 ダウスター領軍は配属先でしかなく、当然転属命令もあり得る。

 つまり、人事部の采配一つで俺は何処へでも飛ばされる可能性がある。

 だから部長である大佐も無理強いしなかったんだろう。

 それぐらいならジェニングス中将の下で働くのも悪くない。

 正直、最初の印象は良くなかった。

 ジェニングス中将もヴォルガング大尉もリンテール少尉もえっと……大佐も。

 勝手な勝負に約束破り、好意的でいられる理由はなかった。

 でも今は良好な関係を築けているし、昨日や今日だって世話になりっぱなしだ。

 俺はこれからどうするべきなんだろう……。


「あー、もうっ! 止めだ、止め! またごちゃごちゃ考えて、折角良くなった気分に水を差す必要もないよな。うん、そうだ、今は目の前にある事を一つずつこなして行こう! 今後どうするかは状況が変わったその時に考えればいいさ」


 俺は面倒な考えを振り払うように中庭で夜風に当たりながら、適当に歩いていた。

 夜風が心地よく、嫌な気持ちも洗い流してくれるようだ。

 そして、心地よい風は妙な気配まで運んできた。

 俺を見ているような……監視しているような感じだ。

 相手は2人、おまけに1人は自身の気配は全く感じさせない程の達人だ。


 「何者だ? とにかく様子を見るしかないか。下手に藪をつつく事もないだろう」


 しばらく動かずに様子を見ていると相手側から近づいてきた。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか……。


「失礼だが……」


「貴官がシュナイデン少尉か?」


 俺に声をかけてきたのは2人の将官だった。

 1人は細身で長い黒髪を後ろで縛っている鋭い目つきをした長身の男。

 もう1人は身長はそれ程高くないが、ダウスター子爵様に負けない程の筋骨隆々の金髪角刈りの男だった。

 軍服の肩章から2人は少将である事がわかる。

 そして2人の胸元には幾つかの勲章が輝いていた。


「はっ! 小官がリクト・フォン・シュナイデン少尉であります!」


 敬礼の姿勢をとって返事をする。

 また派閥の勧誘とかなら御免だが、上官を前にして逃げるわけにもいかないからな。


「そうか……私はアドリアーノ・フォン・ヴォルガング子爵だ。娘が世話になったようだな」


「ガッハッハッハッ! これから末長く世話になるかもしれんがな! 俺はマリク! マリク・フォン・リンテール子爵だ!」


 げっ! 大尉と少尉の御父上かよっ!

 っていうかイメージと違い過ぎる!

 確かヴォルガング子爵はヴォルガング流剣術の宗家で帝国軍の剣術師範を勤めているはずだし、リンテール子爵は魔法学の権威で、魔導師範を務めているって聞いた。

 それが体型だけ見れば2人のイメージは全く逆だ。

 ヴォルガング子爵は痩せ型でほっそりしているし、リンテール子爵はガッチリし過ぎ!


「ヴォルガング流剣術に無駄な筋肉は不要だ。膨張した筋肉は素早さを奪う」


「魔法使いにしても魔法兵にしても魔力が切れたら役立たずでは困るからな! ちゃんと戦闘技術も身につけねばならんのだ! ガッハッハッハッ!」


 俺の無言の質問に両子爵は丁寧に答えてくれた。

 言っている事は理に叶っているし、納得もできるんだけど……なんだろう。

 どうやら、人の思い込みってのは簡単には払拭できないみたいだな。

 ツッコミたくなってしまう。


「それより、シュナイデン少尉。貴官は我が娘、アリシアに剣で勝ったと聞いたが、相違ないか?」


「おおおっ! それそれ! 我が愛しのファンティーヌの古代魔法を斬ったとは真実(まこと)か? 正直、信じられないのだが」


 どっから聞いたんだろう?

 ダウスター領での話だし、本人達が話したんだろうか?

 まぁ、別にいいんだけど。


「はい。証拠はありませんが、御二方の仰る通りであります」


「……そうか、なるほどな」


「そりゃあ、いい事を聞いたぜ」


 な、何だ? 御二人の眼が怖い……。

 この眼は……そう! マルタン商会のデザイナーの眼と一緒だ! 

 獲物を狙う獣の眼だっ! 

 これは逃げた方がいいかな……?


「あの……お時間を取らせてしまい、申し訳ありません。小官はこれにて……」


「まぁ、待て」


「そうだそうだ! ゆ〜っくりしようじゃないか? なぁ?」


 あかんっ! 捕まった! 

 両肩を押さえられました!


「ふむ、ここはやはり私はから……」


「待て待て! こんな御馳走を前に俺にお預けさせようってのか? 俺が先だ」


「それは横暴というものだ。ましてや、この者は剣士ではないか。なら、正当な勝負となると、やはりこの私が……」


「今更それはないだろ! 俺にやらせろ!」


 何か知らんが二人が言い争っている。

 どうやら、何かの順番で揉めているようだが……いや、何の順番かはだいたいわかる……。

 何とか逃げ出したいけど、俺が少しでも動こうとすると二人が視線でそれを制してくる。

 隙がねぇよ……。

 その時だった。


「父上! 何をなさっているのですかっ!」


「お父様ぁ、これは何の騒ぎぃぃ?」


 聞き覚えのある二人の声が後ろからしてきた。

『助かった』と、振り返って俺は絶句した。

 そこには見たこともない2人の美女が立っていた。

 どちら様でしょうか?


いつも拝読ありがとうございます。

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