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王と面会

「謁見はいかがでございましたか?」


 俺の前を歩く白髪の執事が尋ねてきた。


「見目麗しき陛下に列席の方々の錚々たる顔ぶれ、絢爛豪華な室内と驚きの連続でしたが、なんとかキョロキョロせずに済みましたよ」


「それは良うございました。御留意頂けたようで幸いでございます」


 執事はこちらを振り向く事なくそう言った。

 顔は見えないが、少し弾んだ声は不機嫌というわけではなさそうだ。

 俺は今、陛下に呼ばれて応接室へ案内されている途中だ。

 案内してくれるのは、謁見の間に案内してくれた白髪の執事、顔は頑固一徹と言った感じなのに、話してみると意外と茶目っ気がある。


「陛下からの伝言です。『此度は公的でなく、私的な面会故に堅苦しい挨拶は不要』との事です」


「確かにお聞きしました。しかし、そうは言われましても陛下に対して馴れ馴れしくする訳にもいかないですから、どうしたらいいんでしょうか?」


「はっきり申し上げられなくて恐縮ですが、最低限の臣下の礼があれば良いと思われます。正直、陛下が私的な面会をされる事は少ないので、私としても此度の面会は少々、計り兼ねております。なんらかの意図がある事は間違いないかと思いますが……」


 珍しく歯切れの悪い物言いをする執事。

 これは意外だな。

 帝城を任される執事が計り兼ねるとは、よっぽど稀なんだろう。

 その分、余計に緊張してきたな。

 今回の面会に子爵様は呼ばれてないから側にいないしなぁ。

 ちょっと不安だな。


「シュナイデン軍曹、此方になります」


 両脇に騎士が並ぶ重厚な造りの扉の前に案内された。

 どうやらここが応接室らしい。

 執事が扉をゆっくり開ける。

 室内は高価そうに見える調度品が並ぶ豪華な部屋だ。

 天井には絢爛なシャンデリア、床一面に敷かれた質の良い絨毯、向かいにある大きなガラス張りの扉からは柔らかな日差しが差し込み、窓の外にはテラスが見えている。

 自分がこの場にいていいのか不安になるな。


「そちらの椅子にかけてお待ち下さい。まもなく、陛下も来られるでしょう……来られたら起立でお迎えください。では、失礼致します」


 扉の両脇の騎士達に聞こえないよう小さな声でアドバイスをくれた後、執事は退室していった。

 それにしても、座って待てと言われてもこんな部屋では落ち着かないな。

 しかし、早く帰りたいと思うのも不敬なんだろうなぁ。

 落ち着かないけど、何かくれるみたいだし、それを期待して待つとするか。

 俺が所在なげに待つ事、30分。

 扉がゆっくり開かれ、陛下が入室してきた。

 俺は執事に教わった通り、すぐに起立して迎える。


「堅苦しい挨拶は抜きでよい。テラーズに聞かなかったのか?」


 テラーズ? もしかして、白髪の執事の名前かな?


「執事殿からお聞きしておりますが、さすがに何もせぬ訳に参りません。お許しを」


「ふん。まぁ、いい。座れ」


 そう言うと俺と机を挟んで対面に座る陛下。

 俺も促されるままに椅子に座る。


「さて、お前には勲章以外にも褒美をやる。随分と久しぶりに笑わせてもらったからな」


 そんな事で褒美がもらえるの?

 だったら大道芸人とかは褒美が貰いまくりだな。


「……言っておくが、大道芸人などを呼んだら殴るからな」


 あっ、それは違うんだ。


「私は容姿には自信がある。更に《魔眼・魅惑の視線(チャームゲイズ)》の持ち主でもある。この2つを使って堕ちなかった者はそうそう居ない。特に成人したての小僧などに破れる代物ではない。少々からかってやろうと思ったら、あっさり破りおったからな、それが愉快だったのだ」


 そういうことか。

 確かに簡単に破れるものでは無い。

 《魔眼》は人が生まれながらに持つ特殊な技能だ。

 《魔眼》の効果は一人につき一つしか無いとわかっているが、それ以外は未だに解明されていない技能でもある。

 現状としては魔力的な要素はあるが魔法ではないという曖昧な解釈となっていて、メカニズムも解明されていないから破る事は困難なのだ。


「これは機密事項に当たるが、精神系の《魔眼》は本人の強い精神力や気合といった技能で対処可能な場合もあるらしい。お前は気合で私の《魔眼》を破ったというわけだ。大したものだ」


「お褒めに預かり恐縮ですが、あれは偶然です。二度できるかどうかはわかりません」


 実際、自分らしくない思考だと思ったから、俺は気合を入れたに過ぎない。

 それで《魔眼》を破れるかはわからなかったし、破れたのはたまたまだった。


「何にせよ、お前は私の《魔眼》を破ったのだ。破った褒美と破り方を他言せぬよう口止め料代わりの褒美をくれてやる」


「決して他言はしません」


「そう言うな。形ある物が楔となる事もある。まぁ、やると言うのだから素直に貰っておけ」


 そこまで言われたら断るのも無粋だな。


「わかりました。では、有り難く頂戴します」


 俺の返事に陛下は何処からか見覚えのある酒瓶を出してきた。


「まぁ、褒美をなんにするかは飲みながら話すとしよう。こいつはアーベルが持ってきた一級品の酒だ。名は無いそうだが、かなりの掘り出し物らしいぞ。私とサシで酒を酌み交わすなど大貴族でも滅多にない事なのだから光栄に思え」


「あ、ありがとうございます。いただきます」


 まさか、こんな所で飲む羽目になるとは……。

 まぁ、陛下の感想が聞けるのは貴重だし、いいか。


いつも拝読ありがとうございます。

今月のアクセス数が先月のアクセス数の20倍以上になって、とても嬉しいです。

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