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単独行動

「オーマン伯爵家には少数ですが有能な人材が幾人か仕えており、その中で我々の戦功になりそうなのは代官のディラン・フォン・マックロン男爵、領軍の指揮をとるハインツ・フォンタール大佐、魔導士メリー・ネームの3名です」


 アンダーソン大佐が資料に目を通さずに説明する。

 っていうか、この人いたんだね。

 てっきりウルグに残ったのかと思ってた。


「ちょうど3人か。では、誰が誰をやる?」


 中将が大尉、少尉そして俺を見つめる。

 すでに俺の参加は決まっているようだ。

 別にやらなくていいならやりたくないんだけど、中将の命令だから仕方ないか。


「閣下。私に大佐の相手をさせてください。フォンタール大佐は帝国式剣術の達人と聞きます。是非、私に」


「私はメリーちゃんかなぁ? 魔導士ってぇ、結構、魔法兵を見下すんだよねぇ。痛い目に合わせてあげたいなぁ」


 大尉と少尉が各々希望を述べる。

 そうなると俺の標的は自ずと決まってくる。

 また男爵を斬ることになるとは、俺の前世は男爵に恨みでもあったのだろうか?


「よかろう。フォンタール大佐は司令官、魔導士メリーは参謀として領軍本部にいる。よって、大尉と少尉は侯爵軍、帝国軍本隊と合流し、先陣をきって本部を叩け。油断はするなよ」


「はっ! 必ずや大佐を討ち取ってみせます」


「魔導士如きに遅れはとりませんよぉ」


 大尉と少尉はやる気満々だなぁ。

 そんなに戦が好きなのか?


「さて、軍曹の標的のマックロン男爵だが、おそらく男爵邸にいると思われる」


「思われる?」


 先ほどとは違った中将の発言につい聞き返してしまった。

 本来なら上官に対して無礼な態度だけど、気にした様子はないのでホッとした。


「姿が確認できていないのだ。なんせ領軍本部は兵に紛れれば偵察もしやすいが、貴族の屋敷となると警備も厳重だ。よって、男爵の姿は未だに確認できていないのだ」


 俺の質問に中将ではなく、大佐が答える。

 言われてみればその通りだ。

 貴族の屋敷が易々と確認できるようでは困る。

 となると、潜入かな?


「どうする? 軍曹。こちらも本隊の到着を待ってから仕掛けるか?」


「意見具申をしてもよろしいのであれば、小官は単独で行動してもよろしいでしょうか? 潜入を試みようと思います」


 俺は自分の考えを素直に言っただけだが、大佐は口調を荒げる。


「馬鹿者! 軽はずみな事を言ってはならん! 今回の事は前回のライエル男爵の時とは違う! 屋敷には100人を超える兵が詰めているのだぞ! それをわかっているのか!」


「わかっております。ですが、失敗しても私が死ぬだけで済みます」


「軍曹。戦場とはいえ軽々しく命を扱ってはならない。それは貴官がいずれ部下を持った時に誤った判断を下すことになる。私としても反対だ」


 大佐も中将も俺の身を案じて諭すように声をかけてくれる。

 別に命を捨てるつもりはないが、他に人がいると出来ないこともある。

 なんとか説得できないかと思案していると。


「中将閣下、大佐。彼の言う通りにしてやろう」


 静かにそう言ったのは、これまで沈黙を保っていたダウスター男爵様だった。


「ダウスター卿。(けい)は自分が何かを言っているのかわかっているのか? 自ら有能な人材を捨てると言うのか?」


 中将が迫力のある視線を男爵様に向ける。

 しかし、男爵様は気にした様子もなく、閉眼したまま腕を組んでいる。


「有能であればこそ、信じているのだ。私は軍曹の実力を微塵も疑っていない。それに、彼はやれると言うだけの実力をすでに示している。ならば、上官として部下を信じぬわけにはいかん。シュナイデン軍曹、私が許す。思うようにやってみせよ」


「御意」


 男爵様、ありがとうございます。

 正直、気乗りしなかった任務ですが、御期待に添えるよう身命を賭してやり遂げてみせます。

 おっと、感動の余り肝心な事を聞き忘れていた。


「男爵様、つきましては二点確認したいことがあります」


「何だ?」


「先ずは標的の容姿、これがわからねば作戦は困難です。もう一点は、刃向かう者は全て斬り捨ててもいいのか、という事です」


 マックロン男爵の容姿については大佐が変わって教えてくれた。

 一年程前に帝都の晩餐会に出て以来、姿を公にしていないらしい。

 男爵は背は高くも低くもない小太り体型で、髪は金髪のオールバック、立派な顎髭を生やしているそうだ。

 特徴は常に汗っかきで頻繁に汗を拭っているらしい。

 もう一点の方は中将が許可してくれた。

 これは軍の本隊も関わる戦争だ。

 貴族や階級を問わず、敵は討って構わないそうだ。

 ただし、手柄としたいならその遺体か首を持ってこないと意味がないそうだ。

 俺には魔法鞄(マジックバック)があるから問題ない。

 俺は男爵様、中将、大佐に礼を言ってから準備のためその場を退室する。

 さぁて、思い切って潜入しますか。

 実戦でどこまでやれるか知らないが、やれるだけやってみるさ。

 俺は手早く準備を整えて、1人颯爽と敵の本拠地、ライエル男爵邸に向かった。


いつも拝読ありがとうございます。

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