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報奨金って何?

「それは災難だったな」


 酒場に行った翌日、俺は上級曹長殿に愚痴を溢していた。

 なんせ、昨日は理不尽な事ばかりで、挙句に奢らされて散々だったからだ。

 大尉と少尉は酒場に着くと真っ先にニーナを出せと騒ぐし、出てきたニーナが怯えて泣きそうになったら、オロオロ慌て出すし、その上、『軍曹、何とかしろ!』だもんなぁ。

 結局、俺が相手をして泣かずに済んだけど、その間に勝手に飲み始めてはまた騒ぐ。


「っ! 軍曹! 何だ、この酒は?」


 酒場の店主が出した酒を一口飲んで、大尉は声を荒げた。


「お口に合いませんか?」


「逆だ! これは美味い! これは一体何だ?」


「林檎のブランデーですよ」


「林檎? ブランデーなら知っているが、林檎のブランデーとは寡聞にして聞かないが?」


「この辺りでは珍しい物ではないんですが」


「ねぇねぇ。これってぇ、何で帝都に出さないのぉぉ? 絶対人気出るよぉぉ」


 いつの間にか()()()()()()()少尉が、ねちっこく聞いてくる。

 絡み酒とは厄介な。


「特に珍しい物ではないし、帝都で売れるとも思えませんが。男爵様にも一応、打診はしたんですが『……この酒はダウスター家が責任を持って買い取るが故に、帝都に卸すのは控えよ』って言われました」


「男爵……独り占めとは無粋な」


「それはぁぁ、良くないよぉぉ。よぉぉしぃぃぃ、お姉さんがぁ、懲らしめてやるぅぅ。というわけでぇぇ、主人(マスター)おかわりぃぃぃ」


 結局、店にあった5本の林檎のブランデーを4本空け、最後の1本は中将へのお土産って持って帰った。

 帝都の人ってお酒好きなんだなぁ。


「しかし、あの酒は高くついただろう? 全部、貴官の奢りか?」


「そうですよ! あの酒は1本金貨1枚! 5本で金貨5枚! それに他の酒も飲んだり、料理を食べたりして全部で金貨8枚ですよ! 小官は今月ピンチであります!」


「まぁ、そう言うな。報奨金から出せばいいじゃないか」


 上級曹長殿からの聞き慣れない言葉に俺は首を捻る。


「報奨金? 何でありますか、それは?」


「貴官は知らんのかっ! しまった、失念していた。これはいかん! すぐに会計科に行くぞ!」


 そう言われて、俺は上級曹長殿と共に領軍本部へ向かった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「はい。手続きは以上です。では、少々お待ちください」


 会計科で書類申請を済ませると、書類を持って係りの者が下がっていく。


「報奨金は戦功を挙げた者に対して軍から支払われるんだ。給金はと違って報奨金は本人ではなく会計科に支給され、本人が申請したら会計科から支払われるようになっている。申請がない場合はそのまま会計科が預かる事になっているのだ」


「報奨金が出る事の通知はないのでありますか?」


「本来なら論功行賞の時にあるんだが、お前は五階級特進のせいで、うっかり流されていたんだろう」


 うっかりは困る。

 危うく大損するところだった。


「お待たせしました。シュナイデン軍曹の報奨金です。内訳は初陣戦功で金貨1枚、敵兵5人討取で銀貨5枚、捕虜3名、内1名が下士官でしたので金貨1枚と銀貨5枚に金貨1枚を追加。そして敵将である少佐の討取で金貨50枚です。合わせて金貨54枚、お受け取りください」


「金貨54枚! そんなに貰えるんでありますか?」


「いや、少ない方だろう。敵将が金貨50枚とは随分低く見積もられたもんだ」


 上級曹長殿は納得いかないのか、腕を組んで考え込んでいる。


「申し訳ありませんが、ダニート・フォン・ライエル少佐は……」


「わかっている。戦功もないし、おまけに貴族特権での佐官ではこんなもんだろう」


 係りの者の言葉を遮って、上級曹長殿は自身を納得させるように言った。

 対象によって報奨金も変わるようだ。

 俺と上級曹長殿は会計科を後にして、食堂へ向かった。


「しかし、軍曹。これで昨日の奢り分は回収できたな」


「はい! ありがとうございます。お陰で食事を抜かずに過ごせそうです」


「それは良かったな。しかし、林檎のブランデーはダウスター以外でも人気が出そうなんだろ? 何故、男爵様は領都ウルグにしか流通にさせていないんだろうな」


「さぁ、それはわかりかねます。しかし、しばらくは林檎のブランデーは……」


「シュナイデン軍曹はいるかっ!」


 突然、大声が食堂内に響く。

 声の主は噂の領主、ダウスター男爵様だった。


「ここにおります。どうかされたのですか?」


「シュナイデン軍曹! 林檎のブランデーを大尉と少尉が飲んだとは本当か?」


 掴みかからんがばかりに男爵様が詰め寄ってくる。

 最近こんなんばっかりだ。


「は、はい。昨晩、酒場で……」


 男爵はショックを受けたように、筋骨隆々の巨体をよろめかせる。


「なんて事だ……これがもし、中将の耳に入ったら……」


「入っているぞ、ダウスター卿」


 食堂の入り口にニヤニヤした表情の中将が酒瓶を片手に手を振っている。

 酒瓶は当然、昨日の林檎のブランデー最後の1本だ。


「帝都で幻のブランデーと言われている《林檎の妖精(アップルフィー)》。まさか、ダウスター領で造られているとはな。卿も人が悪い」


「ジ、ジェニングス女男爵(バロネス)……こ、これは……」


 ジェニングス中将の冷ややかな言葉に男爵様はタジタジになっている。

 それにしても幻のブランデー?

 《林檎の妖精(アップルフィー)》とは何だ?


いつも拝読ありがとうございます。

評価、ブックマークしてくださった方々本当にありがとうございます。

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