表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/205

戦後の地獄

 あれから何日経ったろう……。

 時の流れは早いものだ。

 馬が駆けるが如く、矢が飛ぶが如く、そして……将軍閣下が目の前に来るが如く……。


「お前がリクト軍曹か?」


「はっ! そうであります! 中将閣下!」


 サイモン上級曹長からは3日後と聞いていたのに、まさか次の日に来るとは思わなかった。

 司令官である男爵様に呼び出されて、作戦室に入ったら見知らぬ人が数人いるんだもん。

 男爵様から紹介されて腰抜かしかけたわ!

 椅子に座ってるのが中将で、その後ろにいる男性は大佐、女性は大尉と少尉というではないか。

 全員で値踏みをするように見るもんだから何かおちつかないな。

 しかし、中央から来たという中将閣下は小柄な女性だったんだな。

 本当に軍人かと思わせるほどに光沢のある銀髪に傷一つない艶のある肌、やや吊り目がちの鋭い眼を僅かに口角を上げた口元で印象を和らげている。

 間違いなく俺が今まで見てきた中で一番美人だ。

 きっと街を歩けばすぐに男達の視線の的だろう。

 だが、それを許さないのが彼女の軍服だ。

 帝国の軍服は上下ともに黒だが、階級によって微妙に差がある。

 兵卒はただの襟付きの黒服で肩章は黒色だが、下士官は白色になる。

 尉官は肩章が銅色(あかがねいろ)になり、佐官は銀色、そして中将が着ている将官の軍服の肩章は金色となる。

 更に胸に付けている階級章で階級がわかる。

 階級章の地の色は肩章と同じでそこに帝国星章と呼ばれる細工を施された星型のピンが階級によって付けられる。

 大尉は3つ、中尉は2つ、少尉は1つ、准尉は無しという具合だ。

 下士官である俺の軍曹の階級章は白地に帝国星章が1つ付いている。

 下士官の階級は上から上級曹長、曹長、軍曹、伍長だからだ。

 ロースター先任軍曹みたいな先任は階級ではないので、階級章は俺と同じになる。

 そして、目の前の中将の胸には金地に帝国星章が2つ。

 これを見てナンパする奴はこの田舎には誰もいないだろう。


「ここは本当に田舎だな。まさか、来るのにこんなにかかるとは思わなかったぞ? お陰で大事な会議をいくつか任せてきたくらいだ」


「は、はぁ……あっ、御足労をかけて申し訳ありません!」


 何が言いたいのかよくわからないな。

 来て欲しいと頼んだ訳でもないのに、勝手に来ておいて随分な言い草だ。

 でも、とりあえずは礼を尽くさないと。

 軍って上官には逆らえないからなぁ。


「あはははははっ! 冗談だ! 純朴なのは素晴らしいが軍人としては問題がある。疑う事も覚えた方がいいぞ?」


「はっ! ありがとうございます!」


「中将。そのくらいで良いのではありませんか? 本題は何でしょうか?」


 げっ! 隣にいた男爵様がいつもの筋骨隆々な身体に真面目な顔でお伺いを立ててる。

 まぁ、階級上は中将と中佐だからな。

 それも仕方ないんだろう。

 それにしても昨日の書類仕事の時より更に似合わないな。


「性急だな、中佐。あまり草卒(そうそつ)なのもどうかと思うが、まぁいい。リクト軍曹に聞きたい。前回のライエル男爵領との(いくさ)では、随分と活躍したそうじゃないか? そのお陰で異例の五階級特進と聞いたが?」


「はっ! 幸運に恵まれました!」


「確かに運は大事だ。蔑ろにしていいものではない。だがっ! 戦場は運だけで生き残れるほど、まして簡単に大手柄を挙げられるほど甘くはないぞ? どうやったか聞かせて貰えないかな?」


 少し語気を強めた中将の威圧(プレッシャー)を感じる。

 もしかして、疑われてるのかな?

 確かに俺と捕虜の証言でしか俺の功績は証明できないからな。

 とりあえず、正直に言おう。

 それで信用されずに降格なら仕方ないさ。


「わかりました。僭越ではありますが、御報告させていただきます」


 あれっ? 俺が報告するって言ったら中将の後ろの人達が少し驚いた顔をしてる。

 なんだろう?

 まぁ、気にせず報告するか。

 俺は事の顛末をなるべく詳しく報告した。


「――――なるほど。そういう流れか。確かに筋は通っているな」


 俺の報告にとりあえずは納得してくれたようだ。

 良かったぁ。

 兵卒に戻って行軍訓練なんか嫌だからね。


「だが、証明できないのも事実という訳だ」


 あらら、簡単にはいかないみたいだね。


「……とは言っても、そもそも戦場で功績の証明など捕虜にするか死体にするかぐらいしか証明しようがないがな」


 えええっ! どっちなんだよっ!

 はっきり言ってほしい!


「では、小官はどうすればよろしいのでしょうか?」


 中将は俺の言葉を待っていましたとばかりに、ニヤリと笑むと、後ろを指差した。


「この2人と剣を交えてもらう。お前が勝てば……そうだな。私に出来る事であれば何でもしてやろう。ただし、負ければ戦功虚偽として軍法会議にかける」


 俺の地獄はまだ終わってなかったようだ。

 やれやれ、面倒な事になった。


拝読ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ