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家名難航

「そうか。階位(かいい)申請が通ったか。ならば、良い家名を考えないといかんな」


 司令官室から戻った俺は宿舎の食堂で昼食を摂っていた先任軍曹殿を見つけたので、対面の席に座り、昼食を摂りながら家名の話をしてみた。


「先任軍曹殿の家名はロースターですよね? どのように考えられたのか、助言をいただけたらと思いまして」


 俺の質問に少し戸惑ったような表情になる先任軍曹殿だったが、しばらくして何かに気づいたように口を開いた。


「あぁ、そう言えば言ってなかったな。私はここダウスター男爵領から帝都を挟んで反対にあるロースター男爵家の三男なんだ。家名はそのまま使っているんだよ」


「貴族家の御出身でしたかっ! これは知らなかったとはいえ、ご無礼を……」


 先任軍曹殿の言葉に俺は姿勢を正して謝罪する。

 しかし、先任軍曹殿は気にした様子もなく、笑っていた。


「はははっ、男爵家の三男では跡取りにはなれないからな。それで軍人になったのだ。もう貴族籍も抜いているし、今は同じ名士(めいし)なんだから気にしなくていい。それと、私の事はロースターでいい。先任とはいえ、同じ階級だ。堅苦しいのはよそう」


「わかりました、ロースター軍曹殿」


「殿もいらんよ」


「では、ロースター軍曹……小官も早く家名で呼んでいただきたいものです」


「おっ! やっと《小官》もスッと出るようになったな。普段は構わないが、上官とか貴族相手には《俺》はマズいからな。気をつけろよ」


 ロースター軍曹はニッと笑って言った。

 本当にロースター軍曹には世話になっているな。

 軍曹としての仕事だけでなく、軍人としての立ち振る舞い方や上官、部下、更に貴族との接し方まで色々と丁寧に教えてくれるから助かっている。

 五階級特進の成り上がりの俺は他の兵士達から、あまり良いように思われていなかった。

 しかし、ロースター軍曹と一緒に行動したり、接し方を教わった事で、今ではほとんど偏見の目は無くなっている。

 本当に頭が上がらない存在だ。


「それより家名だが、どうするんだ? 神話や伝説から取るのも悪くないが、一般的には住んでる土地の特徴とか地名を()じったりするそうだ」


「土地の特徴ですか? 小官の生家は山の中です。特に特徴となるものは……」


「どうした? 何を悩んでいるのだ?」


 俺とロースター軍曹が考え込んでいる時に後ろから声をかけてきたのは上級曹長殿だった。

 昼食を摂りにきたようで、手には膳を持っている。

 どうやら、俺とロースター軍曹が一緒にいたので声をかけてきたようだ。


「これは上級曹長殿! 気がつかず失礼しました」


「そのままでいいぞ。それより、貴官らは何を悩んでいたのだ?」


「実はリクト二等兵の家名を考えておりまして」


 ロースター軍曹が上級曹長殿に事の経緯を説明してくれた。

 上級曹長殿は話を聞いて俺の横に腰を下ろした。


「なるほどなぁ、確かに家名は悩む。俺も随分悩んだもんだ」


「上級曹長殿の家名はサイモンでありますが、どのようにお決めになられたのですか?」


 上級曹長殿はロースター軍曹とは違って平民の出なので自分で決めた筈だ。


「俺も結構悩んだんだが、ちょうどその時に祖父が亡くなってな。それで祖父の名を家名にさせてもらったのだ」


 なるほど。

 言われてみれば、サイモンって家名というよりは名前のように聞こえるな。

 あれ? じゃあ、上級曹長殿の名前って何だ?


「あぁ、そうだったのですね。だから、名前と似たような家名だったわけですか」


「そうだ。リモン・サイモン。少々、言いにくい名前だが、慣れてくるとしっくりくるぞ」


 俺の疑問に答えるようにロースター軍曹が上級曹長殿に名前を聞いてくれる。

 それにしても親族の名前と言うのは困ったな。

 ウチの家族は全員健在なので、名前を家名に使ってしまうとややこしい事になる。

 残念だが上級曹長殿の真似はできないな。

 他に方法は無いものか……。

 3人で考えていると結構時間が経っていたようで、周りには誰もいなくなっていた。

 まぁ、今日の午後からは特に予定がないからいいんだけど。


「そうだ。話は変わるが、リクト軍曹に伝えておかないといけない事があったんだ」


 ふいに、サイモン上級曹長が辺りを見回しながら俺にこっそり話しかけた。


「何でしょう?」


「ここだけの話だが、軍曹に会いに中央から将校殿が出張ってくるらしい。査察という名目らしいが」


 はっきり言ってピンとこない。

 将校といえば軍のお偉いさんだろうし、俺みたいなのに用なんかないと思うが。


「それってよくある事なんですか?」


「はっきり言って……ない。こんな地方の男爵領に中央の将校なんか来るわけがない。少なくとも私がここに配属されて20年になるが、一度もなかった事だ」


「ライエル領も同様です。隣の伯爵領であれば年に何回かはあったと思いますが、ここに来る理由は思いつきません……となると、厄介事ですか?」


「……懸念はある。しかし、無下には出来んだろう。下手な扱いをすれば男爵様にまで迷惑がかかる」


 サイモン上級曹長もロースター軍曹もかなり警戒しているようだ。

 しかし、今はこれ以上心配をしていてもどうしようもないという事になった。

 ここへの到着は約3日後。

 とりあえず、それまでに家名を考えておくとしよう。

 でないと、格好がつかないからな。

 でも、全く思いつかないんだよなぁ、どうしよう?


いつも拝読ありがとうございます。

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