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冒険者組合にて

 御前での論功行賞を終えて外に出ると、俺達6人に各1台ずつ馬車が用意されていた。

 今日は自宅で待機ってのは、本気らしい。

 普通なら祝勝会とかするんだろうけど、陛下の御下命とあらば仕方ない。

 皆、大人しく馬車に乗り込んでいった。

 仕方ない、俺もとりあえず帰るか。

 そう思って馬車に乗り込もうとした時、後ろに気配がした。

 振り返るとそこには見知った人が立っていた。


「テラーズさん? どうしたんですか?」


「おや、気づかれてしまいましたか。さすがに鋭くていらっしゃる」


 そこにはいつもと変わらない姿のテラーズさんが立っていた。

 何か伝え損ねた事でもあったのかな?


「実はシュナイデン卿に寄っていただきたい場所がありまして。それに御屋敷も初めて行かれるとの事、それで陛下より案内をするよう申しつかりました」


 そういえば、屋敷の場所も何も知らないや。

 地図で見ただけだから外観もわからないし、案内してもらえるのは助かる。


「ありがとうございます。さぁ、どうぞ」


 俺は先に馬車に乗り込んで、テラーズさんを招き入れる。

 上座に促したけど、それは固辞された。

 今日主役はあくまで俺なんだそうだ。

 仕方なく上座に座ると、テラーズさんが行者に何か伝えて馬車が動き始める。

 そういえば何処に寄るんだろう?


「寄る場所って何処ですか?」


「冒険者組合(ギルド)です。シュナイデン卿の冒険者ランクが決まったそうで、なるべく早めに来て欲しいと連絡があったのですよ」


 あぁ、あれか。

 そういえば出立前にそんな事があったっけ。

 ついでに宝箱の買取金も受け取らないといけないな。独立貴族はお金がかかるって言うし、ついでに魔法鞄の中の素材とかも買い取ってもらおう。

 兎やら牛やらを入れっぱなしにしてたままだった。

 ちょうどいい、休暇前にお金を調達しておこう。


「そういえば、シュナイデン卿は口座をお持ちですかな?」


「口座?」


 テラーズさんの不意な質問に首を傾げる。

 口座とはなんぞや?


「口座とは金銭や資産を代行管理してもらう管理所の個人帳簿の事です。軍の給金はともかく帝都の物流における利権で得た金銭は口座に入れられますので、お持ちでないと不便ですよ」


「そんなものがあるんですね。何処で作れますか?」


「大きく分けて3箇所ございます。帝国財務局の口座、冒険者組合の口座、商会連合の口座です」


 聞いてみるとどれも一長一短らしい。

 帝国財務局は管理自体は国営のためきっちりしているが、帝国内でしか活用できないとの事。

 冒険者組合は支部があればどこの国でも使えるが、他の冒険者が側にいる事が多く、犯罪に巻き込まれる可能性が高いらしい。

 商会連合の口座は街単位で使える所が多いらしいが、その分管理料が高いそうだ。

 ちなみに商会連合とはある一定の条件をクリアした商会のみが加盟できる商会の組合(ギルド)みたいなものだそうだ。

 商会連合に加盟してるってだけで信頼度も物の質も値段も高くなるらしい。

 さて、どれにするかだけど、正直よくわからないんだよなぁ。


「テラーズさんは何処で作るのがいいとかありますか?」


「そうですね。2つ作ってはいかがですか? 財務局と冒険者組合で1つずつ。帝都の利権分は財務局の口座へ。冒険者としての稼ぎは組合の口座へ入れられてはいかがでしょう」


 1つしか駄目って事はないんだ。

 なら、ここはお勧めに従うとしよう。


「では、そうします」


「かしこまりました。では、こちらが財務局のシュナイデン卿の口座を示す割印(わりいん)メダルになります」


 そう言ってテラーズさんは掌サイズのメダルを半分に割ったような物をくれた。

 仕事が早過ぎる……。


「もう作ってくれてたんですか?」


「勝手を致しまして申し訳ありません。振込先が無く、財務局の者が手続きで困っておりましたので僭越ながら先に作らせていただきました」


 そう言って頭を下げるテラーズさん。

 むしろこっちが頭を下げないといけないのに、律儀は人だな。


「いえいえ、助かります。それより、これってどう使うんですか?」


「こちらの割印(わりいん)メダルは片方を登録者が、もう片方を財務局で管理しております。この2つが合わさる事で本人確認となり、金銭の利用が可能となります。また、そちらのメダルには番号が刻まれておりますので、今後取引の際にはそちらを先方に伝えてください。振り込むだけなら管理場所と口座番号がわかればよろしいですから」


「2つが合わさるだけで証明になるんですか?」


「《魔法付与》で偽造防止、本人以外使用禁止となっておりますから、これだけ持っていても意味はありませんから御安心を」


 つまりこれ自体が高度な魔道具なわけか。

 無くさないように気をつけないとな。


「シュナイデン卿、組合(ギルド)に着いたようですよ」


 テラーズさんがそう言うと同時に馬車が速度を緩め、大きな建物の前に止まる。

 ここに来るのは冒険者登録をして以来だ。

 テラーズさんがサッと降りて、馬車の前で立っている。

 俺が降りると、先導するように建物の中へ入っていったので後を歩く。

 テラーズさんは扉横にいた組合員と一言二言言葉を交わした後に階段に向かい、上がって行くのでそれに倣う。

 そして3階まで上がると一番奥の扉前まで行って、扉をノックした。


「入ってよい」


 中から声がかかり、扉を開けるとそこには2人の男が立っていた。

 1人は見覚えがある。

 確か、組合の副ギルドマスターだ。

 名前は忘れた。


「よく来てくれたな。前に会ったと思うが、副ギルドマスターのヨハン・チェスターだ。それとこっちがギルドマスターの……」


「モーリス・バイエンスだ。まぁ、掛けたまえ」


 ギルドマスターを名乗る涼しげな目をした長髪の男は俺に座るよう促してから自身も椅子に座った。

 俺と副ギルドマスターも座るが、同席していたテラーズさんは俺の後ろに立ったままだった。


「そちらの方は我々を信用できないようだな。まぁ、いい。今日用があるのはリクトさんの方だからな」


 ギルドマスターが話を続ける。

 信用できないってどういう事だ?


「さて、リクトさん。君の冒険者ランクについてだが、今回かなり揉めたんだよ。なんせ新人であるGランクがとんでもない物を持って帰ったんだからね」


 そう言いながら、冷ややかな眼で俺を見るギルドマスター。

 どうも好意的じゃないな。

 隣のヨハンさんもちょっと狼狽てるようだし、どういうつもりだ?


「我々としては正直に話してくれればいいと思っている。どうだろう、この場で真実を明らかにしないか?」


「何の事ですか? 申し訳ないが俺には全く話が見えない」


 なんとなくイラッとさせる物言いに少し言葉が荒くなった。

 このギルドマスターの眼は明らかに人を下に見ている眼だ。

 気分が悪い。


「そこまで恍けるなら仕方ない。君を逮捕する」


「はぁ?」


 階下から複数の足音がけたたましい音を立てて近づいてくるのがわかる。

 どうやら、厄介事のようだ。


いつも読んでいただきありがとうございます。


評価、ブックマークしてくださる方々が日々増えており嬉しい事この上ありません。


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