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敢え無い結末

「お、おい……これは、どういう事だ?」


「……わ、わからん」


 ロイスとファーレンハイトは物陰から目的地を見て困惑していた。

 予定ではここにはおよそ五百人の兵士が警備に当たっているはずだった。

 それを突破するための作戦まで立てていたというのに、それが全く役に立たない状態になっている。


「あれは……何かの罠か?」


「わからん。だが、あれを出した以上、それを反故にするような事があれば、それは共和国の信用に関わる国家的な問題になりかねん。兵の暴挙にしても度が過ぎている」


「だから、結局どうなんだよ? 信用していいのか? 駄目なのか?」


「だから、わからんのだ! ……ここはやむを得んだろう。隊長に指示を仰ぐべきだ」


 そう言ってファーレンハイトは懐から淡く光る珠を取り出した。


「《通信珠(つうしんきゅう)》か。勿体ねぇけど、こうなったら仕方ねぇな。俺達には判断できねぇ」


 《通信珠(つうしんきゅう)》は魔道具の一つ。

 魔法使いが《伝達(トランスミッション)》の魔法を込めた物で、これにより魔法が使えなくても《伝達》の魔法が使用できるようになる。

 ただし、作成には高度な《魔法付与》技術が必要となるため、高価であり、高性能なほど等級が上がって価格は高騰する。


「それの等級は?」


「三等級だ」


「よし。この距離なら雑音も入らないだろう。頼んだぜ」


 《伝達》の魔法は頭の中で会話するため、使用者以外には会話は聞こえない。

 ファーレンハイトは無言で頷くと、《通信珠》を強く握る。

 すると珠はいとも簡単に砕け、破片がファーレンハイトの頭上に輪っかを作った。

 これは通信が成功した証拠であり、通信が切れた、又はなんらかの理由により繋がらない場合は破片は地面に落ちる。


『隊長。タウゼン隊長。こちらファーレンハイト大尉。応答願います』


『ファーレンハイト? 《通信珠》か? 随分と高価な物を使ったな。あとで軍から支給してやるから書類を提出しろよ』


 緊急事態に呑気な事を言う隊長にファーレンハイトは苛立ちを隠せなかった。


『隊長! それどころではありません! 問題が発生しました。申し訳ありませんが、隊長の判断を仰ぎたく……』


『わかっている。おそらく此方も同じ状況だ。さっきリンプトン中佐からも連絡が入った』


『では、どのように対応すれば?』


 少し間を置いてから、タウゼンはゆっくりと話し始めた。


『奴らの要求通りにしてやれ。それしかない』


「そ、そんな! 共和国兵(こいつら)を信用すると言うのですかっ!」


 信じられない言葉に、つい口に出してしまった。

 隣にいたロイスが怪訝な顔をしているのがわかる。


『ファーレンハイト大尉。此方でも今の指揮権を持つ代議士と第一秘書のサヴィンに確認した。敵はこ……』


 そこで声が徐々に小さくなっていき、やがて通信が途切れた。

 まだ、聞きたいことは山ほどあったが、それでも今後の方針は確認できた。

 そして、小声ではあったがはっきり聞こえた現状に戸惑い、声が出なかった。


「おい、急に大声出しやがって、馬鹿が。あいつらが動く気配はねえから良かったものの、ヒヤヒヤしたぜ。それで? どうだった?」


「……見たままを受け入れろ。もう戦う必要はない」


 そう言ってファーレンハイトは物陰から出て、隠れもせずに倉庫に一直線に歩き出す。


「お、おい! どういう意味だ? おいっ!」


 慌てて後をつけてくるロイス。

 当然だろう。

 俺だって未だに信用できないんだ。

 だが、これが事実ならシュナイデン少尉はもう……。

 警備兵達が二人を見据えている。

 その数は数え切れはしないが、おそらく五百は下らないんだろう。

 それでも歩みを止めないファーレンハイト。

 そして、事情はわからずとも、友から離れないロイスは五百人の警備兵と対峙する。


「この場の責任者の方は?」


「私だ」


 警備兵の中から顎髭を生やした精悍な顔立ちの男が前に出てきた。

 顔に刻まれた傷が彼が歴然の猛者だという事を雄弁に語っている。


「倉庫区警備隊隊長のリアスエロだ。我々の要求は伝わっているか?」


「ああ、わかっている」


「では、よろしく頼む。我ら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そう言って、リアスエロは山積みになった武器の後ろに下がり、警備隊員達と共に両手を頭の後ろに回して膝を付いた。

 その光景にロイスは唖然とする。


「こ、降伏だと! どういう事だ! ファーレンハイト!」


「聞いた通り、見た通りだ。ベェルト要塞司令部は降伏したんだ」


「そ、そんな……馬鹿な……た、隊長達は一体、どんな手を使ったってんだよ……」


 うわ言のようにロイスが呟く。

 それを聞いたファーレンハイトはロイスが思い違いをしている事に気付いたが、あえて訂正しなかった。

 なぜなら、未だに自分自身が事の真相を信じ切れなかったからだ。

 まだロイスのように隊長達が司令部をなんらかの方法で押さえたと言われた方が納得がいく。

 ファーレンハイトは遠くに見える外壁の上部を見上げた。

 そして、最後に聞いた隊長の言葉を思い出して、少し身震いがした。


『要塞守備隊壊滅につき、ベェルト要塞は陥落』


いつも読んでいただきありがとうございます。


もうすぐ7月も終わりですね。

この小説を始めたのが4月なので、はや4ヶ月が過ぎました。

そこでこの小説の構想を再度振り返ってみたのですが……これって結局までに一体、何話かかるんだろう。

長編になりそうですが、皆さまお付き合いくださいますようお願い致します。

私もなるべく更新を続け、完走できるように努力しますので。



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