共和国百勇士
「お、おい! 今からでも遅くない! あの若造を止めろ!」
シュナイデン少尉が部屋を出て行った後にマッコイ代議士が慌てて声を上げる。
「それはどういう意味でしょうか?」
「いいから彼を止めたまえ! あそこにはあの男がいるのだ! 敵うわけがない!」
声を荒げるのを止めないマッコイ代議士。
それにしてもあの男とは誰だ?
「あの男とは?」
「聞いたことがあるはずだ! ベェルト要塞守備隊隊長ジェラール・フェルド。共和国百勇士にも数えられる強者で忠義に厚く、敵に容赦などしない男だ! その男が外壁内部の守備隊詰所にいるのだ! さっき出て行った若造は司令部を落とすまでの間、守備隊を押さえるのが役割なんだろうが、フェルドが出てきたらすぐに突破されてしまう! そうなったらお終いだ!」
共和国百勇士。
それは共和国兵の中から選ばれた精鋭兵の通称だ。
選ばれた兵士である彼等は共和国内では絶大な人気があり、社会生活において特別な扱いを受ける事もできる。
そのため、その地位に甘んじる事のないように人数は百人と決められており、毎年入れ替え戦が行われているため、強くないと生き残ることができないようになっている。
確かにマッコイの言う通り、シュナイデン少尉の任務は要塞守備隊を司令部に来させないようにする事、つまりは足止めだ。
彼が持ち堪えている間に司令部、魔法兵力、食糧弾薬倉庫を押さえて、敵の士気を低下させ、更にそのタイミングで北方方面軍が現れれば、敵は敗走するだろう。
もし、敗走しなくてもそんな状態であれば、いかにベェルト要塞でも落とす事は簡単だ。
それだけに、この作戦の要はシュナイデン少尉がどれだけ足止めできるかという事にかかっている。
相手が精鋭である共和国百勇士である可能性も考慮していたが、それでもシュナイデン少尉にかけるしかない。
五千人という人数にしても結局、一人に襲い掛かれる人数は限られているし、そのフェルドとかいう奴ににさえ会わなければ十分時間は稼げるだろう。
「隊長! 少尉は……」
「任務に変更はない。各々、自己の任務を全うせよ」
「隊長……」
「中佐、このベェルト要塞を落とすのが俺達の任務だ。やるしかないんだ。覚悟を決めろ」
中佐は唇を噛みしめながら、睨むような視線を向けていたが、やがて敬礼して部屋を出て行った。
彼女の任務は魔法兵詰所の制圧。
これも一筋縄では行かないが、ベェルト要塞にいる魔法兵は要塞の防御術式のための魔法兵がほとんどで、戦闘行為には向いていない者が多い。
おまけに防御術式を昼夜絶えず展開させているため、魔法兵には魔力が枯渇しているか、術式を展開させているかのどちらかしかいない。
戦闘専門の帝国軍魔法兵団の第三席であるリンプトン中佐なら、奇襲で落とせるはずだ。
「隊長、俺達も行かせてもらいますよ。だが、確認させてもらいます。自己の任務の後であれば救援は構いませんよね?」
ロイス大尉とファーレンハイト大尉が揃って声をかけてくる。
中佐のように言葉には出さないが、二人の言いたい事はよく分かった。
「救援を急ぐあまり中途半端な事にならぬようにな」
「了解です」
二人は静かに部屋を出て行った。
彼らに任せたのは弾薬倉庫と食糧倉庫の制圧だ。
彼ら自身も言っていたが、これらは使えなくするだけでもいい。
その後に少尉の救援に向かってくれればいいのだ。
あとは司令部を俺とオルレアン少尉で押さえれれば……。
「頼んだぞ……シュナイデン少尉」
「隊長、早く行くよ! あたい達が早く司令部を落とせば、それだけ少尉の負担が減るんだろ? なら急ごうぜ!」
俺の独白に答えるようにオルレアン少尉が拳を鳴らしながら言った。
相変わらず修道女には見えないな。
だが、言っている事は尤もだ。
「そうだな。では、先生。御同行願いますよ」
「き、気は確かかっ! 司令部を押さえてもフェルドがやって来れば全て無意味なんだぞ!」
「そのために彼がいるんです」
「言ったはずだ! フェルドは百勇士なんだぞ? あんな若造が止められるわけがない! 貴様ら狂っているのか!」
「黙れ! それ以上口を開けばその首だけ運ぶ事にするぞ!」
部下への心配と作戦に対する焦燥感からつい怒鳴ってしまった。
まぁ、おかげでマッコイが黙ったからいいだろう。
項垂れるマッコイを連れて俺とオルレアン少尉は要塞司令部に向かった。
可愛い部下を守るためだ。
要塞司令部にいる奴等には悪いが、速攻で落とさせてもらう。
例え、そこにいる全員を皆殺しにする事になってもな。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ただ今、夜中の3時
相変わらずのテンションであります!




