波乱の自己紹介
今回で少尉編は終わりです。
次回、閑話を挟んでから新章、続・少尉編が始まります。
はい……階級で章分けした俺が悪いんです。
昇進させるわけにもいかず、こうなりました。
次回より気をつけます。、
「では、お前達に最初の命令を下す」
全身鎧の大佐は両肘を机に付き、顔の前で両の手を組んだ姿勢で、さっきまでより低い声で話し始めた。
さて、どんな命令が下ることやら……。
他の面々も若干緊張した面持ちで、次の言葉を待っている。
「……先ずは、自己紹介からだ」
「「「「「はっ?」」」」」
大佐以外の全員の声が揃った。
あれだけ緊張感を漂わせておいて、自己紹介って……。
ほら、他の人達も騒ついてるよ。
「鎮まれっ! 大事なことだ! よく知らない奴に背中を預けることなんか出来るかっ! 俺が手本を見せてやるから、その後は階級順にやれ! 俺はアラン・タウゼン大佐、この部隊の隊長で原隊はウォーレイク元帥直属部隊だ。装備は斧槍と全身鎧、38歳、独身で恋人募集中だ! よろしく頼む」
「えっと、じゃあ次は私ですね。ソフィア・フォン・リンプトン中佐です。この部隊の副官を務めます。原隊は帝国軍魔法兵団で第三席です。私は魔法兵で近接戦用の装備は細身剣です。年齢は……28歳、独身です。よろしくお願いします」
大佐と中佐が自己紹介を行ってくれているけど、最後の年齢はともかく、恋人の有無はいるのか?
「あ? 次は俺か? ったく、ギュンター・ロイス。階級は大尉、原隊は帝国軍帝都治安部隊だ。装備は片手半剣に鎖鎧だ。歳は32、嫁がいる」
「私はオスカー・ファーレンハイト大尉。原隊は帝国軍軍務省監査部。装備は長剣に鎖鎧。年齢は32歳、妻と子がいる」
まさかの大尉二人は既婚者かよっ!
二人の奥さんがどんな人なのか気になる……。
「あたいはマリー・オルレアン少尉だ! 原隊は帝国軍後方支援部隊で元修道女だから回復魔法は任せて……」
「「「嘘つけぇえええええええええ!」」」
俺を除いた男性陣から抗議の声が出る。
俺も同感だけど、相手は先任だから黙っておこう。
他の方々、言ってやってください。
「オルレアン少尉! 本当かっ! 本当なのかっ?」
「お前みたいな修道女がいるわけないだろ! どう見たって歴戦の戦士じゃねえか!」
「自己紹介の場で詐称は止めた方がいい」
そうだそうだ。
きっと修道兵の間違いだぁ! と、心の中で叫んでおこう。
「うるせぇ! 今回あたいはこの部隊の回復者として抜擢されてんだよ! ごちゃごちゃ言うなら回復してやんねぇからな! 歳は16で、恋人は……」
「「「「待てぇええええええええ!」」」」
今回は俺を含めた男性全員から抗議が上がる。
もう我慢できん!
たとえお天道様が見逃しても、この俺が見逃すわけにはいかん!
「16っ! 16なのっ? 本当に本当か?」
「テメェ! 大概にしとけよ、コラァ! テメェの身体の成長速度はどうなってやがるんだよ!」
「いくら何でも無茶が過ぎる」
「成人して1年の間に何があったんですかっ!」
大佐と大尉二人と俺は一斉に反論するが、オルレアン少尉は動じた様子もなく仁王立ちの姿勢でいる。
なんたる豪胆!
ちなみに中佐は呆れて声も出ないようで、頭を抱えている。
「うるせぇって言ってんだろ! 嘘じゃねえよ! この後、人事部でも原隊でも行って証明してやるよ! 恋人はいねえから寂しかったらあたいのところに来な!」
「行きませんよ! ったく……小官はリクト・フォン・シュナイデン少尉であります。原隊は帝国軍ダウスター領領軍であります。装備は刀で軽鎧です。15歳、妻も恋人もいません!」
「はぁはぁ……き、貴官のことは聞いている。《惨劇のシュナイデン》、《帝国緑風勲章》の実力、見せてもらおう」
先のオルレアン少尉のショックからやっと立ち直ったのか、息を整えつつ大佐が俺に声をかける。
そういえばそんな二つ名があったな。
早く忘れてくれればいいのに。
「よしっ! では、自己紹介も済んだところで出撃するぞ! 皆も知っての通り、ヴォルドン司令長官の暴挙は無視できないところまで来ている。最早一刻の猶予もない! 行軍しながら作戦を説明する! 目標、ルークリア共和国、ベェルト要塞! タウゼン特殊部隊、出撃だっ!」
「「「「「はっ!」」」」」
先程までのふざけた雰囲気はなく、張り詰めた弓の弦のような緊張感の中、全員が起立して敬礼する。
ここから本格的な他国との戦争に介入することになるんだな。
それにこれまでと違って初めてチームとして動くんだから、今までみたいな独断専行もできない。
とにかく、自分のできる事を精一杯やろう。
どうせそれ以上の事はできやしない。
俺は不安を抱えつつも、軍人としての本懐を全うできることに高揚していた。
陛下より下賜された刀にかけて、帝国のために戦う事を改めて誓うのであった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
6月に月のアクセス数が50000を超えて興奮してたんですけど、7月はもうそれを超えました。
評価もブックマークも皆さんしてくださるようになり、本当に嬉しいです。
相変わらずの稚拙な文章ですが、なるべく修正しながらでも書き続けますので、これからもよろしくお願い致します。




