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第2話 旅立ち

時は遡り、クレリスが旅立った朝まで戻る。


「んじゃ、行ってくるよ。6年課程が終わったら戻ってくるから」


右手を挙げ、別れの挨拶を告げる。

なるべく寂しい雰囲気にならないように軽く済ませよう、クレリスはそう思っていたが…


「ひぎゃぁぁあああああああああ!!!嫌だぁあああ、いがないでぇぇ!」


「みっともないんだよ父さん!!大の大人がこの程度で号泣するな!」


テスラは顔を歪め、顔面を涙と鼻水だらけにして泣き叫んでいた。



「まあまあ、別に食肉として出荷される訳じゃないんだからそんなに泣くんじゃないわよ」


「それもそうだな、んじゃクレリス気をつけてな!」


ヴェルに窘められて一気に笑顔になるテスラ。全く邪な気持ちが存在しない、太陽みたいな笑みだ。

…さっきのは演技だったの?と言わんばかりにクレリスは眉を顰めた。


「おいおい嘘だろ?代わり身が酷いぞ?……ったく、時間に遅れるからもう出る。体に気をつけて、じゃ」


振り返らずに去る。別に格好つけたいからではなく、単純に顔を合わせると両親のどちらかがボケるからである。


西端にあるこの街から首都イースまでは、およそ2日の道程となる。


…そういえば、生まれてこの方自分の育った街の名前を聞いたことがなかったな。


乗り合いの馬車に揺られながら、そんな他愛もないことを考える。


自由国家アイデリオ――クレリスが住む大陸を治める巨大国家――は非常に先進的な国家だ。

20年前、『境界戦役』が起きる前までは独裁国家であったがかの戦役によって崩壊。


その後敷かれた臨時政府がそのまま現在に渡って統治している。


(それにしても、俺が歴史について何も知らず興味もなかったのは、恐らく母さんあたりの洗脳かな?『七英雄』であることを聞いた今、入試問題まで手回ししていた可能性まで考えられるが…)


考え過ぎか…と頬を叩く。乗り合い馬車の乗客に奇異の目線を向けられ、慌ててメモへと目を落とした。


次の宿場町で馬車を降りたら、後は「魔力軌道車」で移動、大体40時間経てば自動的に到着と言った算段だ。


自由都市アイデリオの発展を大きく助けたこの「魔力軌道車」は、地面に真っ直ぐ敷かれた金属の軌道の上に巨大な箱を載せ、人や物品を輸送するものだ。


馬車の何倍も早く、何倍も多く輸送でき、軌道さえ設置してしまえばほぼノーコストで維持できるこの仕組みが、広大な領土と急速な発展を支えていると言える。


乗合馬車を降り、魔力軌道車の乗り口へと向かう。


事前に調べておいた通り車掌さんにアイデリオ金貨を8枚渡すと、一等車両へと案内してもらえた。


魔力軌道車は直ぐに発車し、音や振動を立てることなく静かに軌道の上を滑っていく。

東へ東へと進んでゆく軌道車の車窓からは、地平線の奥へと消えてゆく太陽と、紅に染まる大地が美しく輝いていた。


クレリスは二人乗り客室の片方のソファに腰を下ろし、自分の荷物を確認し始める。


両親から渡されたお金は、アイデリオ金貨換算でおよそ200枚ほどと、相当な額だ。


首都で働く人の年収が、金貨換算で500枚位らしいからな…やはり『七英雄』、金がある。


「とはいえ、これから親に頼るつもりは無いんだよな。俺は自分の力で学び、運命を切り開く!」


立ち上がって虚空へと吠えるクレリス。

と、クレリス一人の世界を崩すノック音が鳴る。


「ッ!?」

「あー、盛り上がってることすみません!おにーさん、相席いいですか?」


桃色の髪を肩より上で切り揃えた快活な少女が、満面の笑みで立っていた。


「おー!おにーさんもシーリン魔術学院に?ってことはディアと同級生ですね!…これって運命ですよ!奇跡ですよ!ディアの事、ミス奇跡と呼んでもいいですよっ!一緒に運命、切り拓いちゃいます?(キリッ)」


「………」


「おっとー?元気がありませんね!乗り物酔いですかっ?ディアも小さい頃、砂漠に旅行に行ったときに乗り物酔いにかかりましてー、ラクダの背中に乗ってるだけで嘔吐!まっさかと思うかもしれないですけどこれホントなんですよぉ、あ、おにーさんラクダって分かります?」


「………」


「あーっ!!おにーさんの名前まだ聞いてなかった!というかディアも自己紹介してなかったかも…こいつぁ抜かったぜ、ふへへ。という訳でティーディア・ポルトスって言います!何を隠そう、かの『七英雄』、『霧』のリルック・ポルトスの親戚なのです!まあ、4世代くらい遡れば、らしいですけどね!」


「……………あー、俺は」


「おっとそこまでだッ!名探偵ディアが、おにーさんの出自をバッチリ暴いて見せましょう!そこの周辺では相当珍しい髪色…銀髪は『精霊由来』これは常識!むむ…となるともしや!もしや!…『天剣』ヴェル・A・フォルトの関係者とみた!ディアの推理に、狂いはないっ!」


ティーディアはビシッと立てた指をクレリスに向け、ドヤ顔で推理を披露した。


クレリスは…


「まさかあの『天剣』の関係者な訳ないだろ…俺はクレリス、宜しくな」


「うひゃー、また外しちゃいました!実は一回もあたったことないんですよね!じゃ、仲良くしましょー!!」


拳を天に突き上げ、元気よく叫ぶティーディア。


こいつ、めっちゃ畳み掛けてくるな……んまあ、楽しくなりそうだし良いか。


クレリスはぶんぶんと腕を振り回すティーディアを傍目に、まだ見ぬ都会での学園生活へと思いを馳せた。


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