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第1話 衝撃の事実!

「実はな、父さんは『英雄』なんだよ」

「……あー、お父様?遂に頭をおかしくなさったのですか?」



17歳の誕生日。俺、クレリス・A・フォルトの人生は大きく変わった。


来週、クレリスは首都イースにある『シーリン魔術学院』へ入学する予定だ。

最新の魔術を学ぶ事ができる、この国の最高学府だ。


こんな田舎町とも明日にはおさらばできる、ウキウキしながら荷造りをしていたクレリスに父がこんな事を唐突に言った。


ドアの外へと追いやろうとするクレリスに苦笑を返すと、父は恥ずかしそうに鼻の頭を掻きながら続けた。



「ヴェルと話し合って伝える事を決めたんだけどな?…20年前の『境界戦役』の事はお前も知ってるだろ?…俺はあの戦争の『七英雄』の内の一人なんだよ」


「待ってくれ父さん、知らん固有名詞を連発されても追いつけないから。『境界戦役』ってなんだ?次に『七英雄』について説明してくれ」


「イヤだこの子、シーリン魔術学院に行くのにこんな事も知らないなんて。親の顔が見たいわ〜」



腰に手を当ててクネクネする父親を無視して荷造りに戻ろうとするクレリス。それを慌てて引き止めると、



「悪かったって!…ったく、これでも一大決心をして来たんだぞ?そう、俺が勝ったあの古の龍と対峙した時のように……俺が勝ったけどな!」


「父さん…マジで話す気があるのか?俺、明日早いからもう寝たいんだけど」


「話すからぁ!!……『境界戦役』って言うのは、20年前に起きた自然災害みたいなもんだ。世界の境界が弱くなって、外からヤバい魔物とかがわんさか押し寄せてな。世界中から強い奴らが集まってなんとか押し返したんだ」


「…で、まあ大体想像はつくけど『七英雄』ってのは?」


「まあ想像通り、活躍した7人の英雄の呼称であってるぞ。その内の1人が俺…『真人』テスラ・A・フォルト様って訳だ」


ドヤ顔で言い放つ父、テスラ。……こいつからどう威厳を感じろと?


「百歩譲って母さんは分かるけど、父さんが英雄は…ないな」


「あ、母さんも『七英雄』の一人だぞ」


「マジかよ、勘弁してくれ…17年分の驚嘆と無理解が一気に押し寄せてきた気分だよ…」


「ちょっと、夜にギャーギャー騒がないでよ。近所からまた『年中騒音パラダイス』って呼ばれちゃうでしょ」


扉を開けて入ってくる銀髪の女性。一見子供にも見えるほど若作りだがれっきとしたクレリスの母だ。


「『年中騒音パラダイス』、めっちゃ語呂がいいな!表札に掲げておこうか?」


はしゃいだ様子で母の手を取るテスラ。母の側は急に手を握られて照れてるし……デレデレかよ…


「父さん、脱線」


「あぁすまん。…母さんは、『天剣』と呼ばれている。『天剣』ヴェル・A・フォルトって訳だ」


テスラは、自分の時より誇らしげに言い放った。母…ヴェルは照れた様子で、


「いや、昔は本当に暴れてただけで…まあ、『七英雄』最強の名をほしいままにしていたのは事実だけど…」


「コイツ照れてるフリだなぁ!?両親揃って相変わらず喧しいこと!……んで、その事実を伝えたのはどう言う意図があったんだ?」


「「別にないけど?」」


「お帰りください」

今度こそドアを閉めて2人を追い出した。



「……ったく、『七英雄』夫婦の息子かよ。なんでこんな辺鄙へんぴな土地に住んでるんだ…まあ、冷静に考えれば平穏に暮らしたかったって事だろうな」


荷造りを完成させて、寝床に寝転がりながらクレリスは一人考える。

息子が大都市へと旅立つ前日にこんな事を伝えるってことはつまり…


「面倒な事に巻き込まれるかもしれない、って事か…俺はただ、平穏な学院生活を送りたいだけなのに」


「ハロー息子!そう言うと思ったから、偽名で通せる様に話はつけてあるよ」


ニュッ、と突然現れるヴェル。この母、家の中なら何処にでも出現できるらしい。壁を通ることも可能…らしい、見たことはないけれど。


「部屋に入るときはノックせよ、と教わったんだけど?」


「細かい事を気にしてると白髪が増えるよ。ま、私は美しい銀髪だからそんな心配はないんだけどね?…んで偽名、はいどうぞ」


ヴェルは自慢げな顔で2つ折りの紙を渡してきた。


「『クレリス・T・フォルト』……一文字しか変わらないじゃんッ!」


クレリスが噛み付くも、


「大丈夫だって。フォルトの家名は大都市に行けばい~〜っぱい居るからバレないバレない!…多分ね」


ヴェルはサムズアップしてスルー。こうなると母はもう手がつけられない事を、クレリスは理解している。


「…わかったよ。ありがと、母さん」


大人しくお礼を言うと、ヴェルの顔にパッと喜びが浮かび、むっすーと鼻を膨らませると、


「いへへ、存分に感謝するといいよ!」



「……母さんの大嘘つき……………」

今はここに居ない母に呪詛を吐く。何でこんな事に、と天を仰ぐと空には鯨のような形をした船がちっぽけな人間を嘲笑うかのように浮いていた。


何故こんな事になったのか、時はクレリスが到着した時点に遡るーーーー

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