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徒然なるままに短編

賢者に弟子入りしたはずなのに、ギルド最強夫婦に捕まりました。

作者: siro

「なろうラジオ大賞」の文字数にしていたのを元の文字数にもどしましたー

「おかしいだろぉ!」

 僕は学院からの紹介状を死守しながら、剣と雷の攻撃から逃げ回ってた。

「あはっはっは!!やっぱ、根暗には持ったないな!!俺の弟子になれよ!!金稼げるし、モテるぞ!」

 すげぇ笑顔でさっきから僕を追いかけて紹介状を奪おうと…いや攻撃してくるのは、知らない癖っ毛の金髪碧眼の美丈夫の冒険者だ。

「いやいやいやいや!!彼は僕の弟子の予定なんですけど?!学院から預かる大切な子なんですけど?!」

 そして、ちょっと離れた場所から一応声をかけてくれているのが、僕が弟子入りする白髪の賢者のおじさん。

「お前昨日まで弟子なんて面倒だって言ってたじゃねか」

 え?そうだったの?初耳なんだけど、見れば賢者のおじさんが苦い顔をしてる。


「諦めた方が楽よ?」

「え?」

 可愛らしい声に振り返るとそこには黒髪こげ茶の瞳の可愛い女の子がいた。しかもいい匂い。まさに女神!とか思ってたら。


「隙あり!」

「どぅふっ!!」

 強烈な一撃を腹にくらって僕の意識は反転した。



 おかしい、本当におかしい。僕はやっと貰った推薦状でここまできたのに。あの熾烈な試験と実技と蹴落としあいから頑張って術式の賢者の弟子入り推薦状を手に入れたのに。なんで冒険者に追いかけられたんだ??


 数刻前までは、賢者と待ち合わせしていたギルドの待合室兼食堂にいたんだ。そこで、賢者のおじさんが現れて話をしていた時に、そいつがいきなり後ろから声かけてきたんだ。


 「いやいや、お前術式より、前衛向きだろう?どう見ても魔法も身体能力も。なんで術式の賢者に弟子いりしてるんだよ。もったいないだろう。竜族なのに」

「え」

 なんで僕の種族速攻バレてるの?僕が目を白黒していると。賢者のおじさんがため息をついた。

「悪いな、こいつは冒険者のフロイアンス。めっちゃ強いじゃ」

 へー、そんな強い人が何で俺に絡むだよ。

「向き不向きってあるだろう。俺も同じ竜族だぞ。まどろっこしい術なんかより、殴った方が早いぞ?」

 その言葉にカチンときた。そう、何度も何度も聞き飽きた言葉だったから尚更だ。

「これだから脳筋リュウゾクは!僕は頭脳派を目指してるんだ!」

 竜族は力が全て、肉体派ばっかりだ。親族が集まれば自分の筋肉自慢と戦い自慢が始まる。俺はひょろっとしていたせいでいつも弄られていた。珍しく筋肉もつきにくい体質だったから尚更兄弟の間でもバカにされてたんだ。

 そんな中、あんな兄弟でもやられたのが術式の男だったんだ。確かに前準備とか色々大変だけど、それでも先を読んで仕掛けておけば、あの脳筋供を倒せる!

 それに気づいてから、僕は術式にどっぷりハマったんだ。周りの反対を押し切って術式専門の学科がある学校にまで入ったんだ。


「へー。で、打撃と剣どっちがいい?」

「おい、聞いてるのか?!僕は術式の勉強のために来たんですよ!やるわけないでしょ!」

 って言ってるそばから俺のシャツを捲り上げてきた。

「ひぃ?!」

「んー筋肉はあんまりないな。まずは腹筋からかな」

「何話を進めてるんですか!」

 何とか振り払って距離を取ると、フロイアンスと名乗る男はふむっとか言ってるし。

「腕の力はそこそこか、だったら普通の長剣からでもいいかな」

「聞いてねし!!僕は!!冒険者になんてなりませんって!!術式の賢者、グレファス様の弟子になりきたんですよ!!!!」


「ふーん。やめとけよ。俺の弟子になれよ。育てがいがありそうだしお前」


「はぁあ?!」


 全然話が通じない!何こいつ、これだから本当嫌だ!


「わかった、じゃー俺を倒したら諦めてやるよ」

「何言ってるんですか!かなうわけないでしょ?!僕は学生でかつ、術式を専門なんです。戦い方なんて知りませんよ」

「ほいっと」

 そう言ってるのに、いきなり俺に木刀を投げ渡してきた。思わず受け取ってしまったら、いきなり攻撃?!


「ちょ!?」

「ほらほら、避けないと怪我するぞ」


「困ったのーとりあえず、外に逃げとけー物壊すと弁償だからな」

 グレファス様がのんびりと教えてくれたけどあんまりありがたくない!しかも僕たちのやり取りを聞いてた人たちも馬鹿騒ぎしてるし。

 容赦無くフロイアンスは俺に剣を突き立てくる。しかも顔面狙いて何?!しぬしぬしぬ!!!

「ひぃいい」


「おーーー!!坊主が逃げてるぞすげー」

「フロイアンスの初撃も耐えたし、やっぱ竜族は違うな。」

「そうだな、大抵のやつは吹っ飛ぶからな」


 そんな恐ろしい会話を聞きながら何とか建物から外に出て隠れるように路地裏に入った。のに!

「気配でバレバレ、そんなんじゃ。このあたりの獣にあっという間に食われるぞ」

頭上から降ってきた!

「ひぃ!!」

 何とか回避したけど、横の地面がガンッといい音をさせて、少し揺れた。というか、木刀が埋まってる?!

「僕はか弱いだ!!!」

 もつれる足を何とか走らせて僕は大通りに駆け出した。


 そう言っているのに、僕はこの地域の冒険者組合の最強夫婦の旦那の方に強制弟子いれされてしまいました。おかしい、僕は術式の賢者に弟子入りするはずだったんだ。それなのに。


「ほら、行くぞー」

 長剣を軽々振り回しながら、魔の森を悠々と歩いていく師匠。そしてその横をスキップするかのように進んでいく可愛い奥さん。見た目だけなら二人は、王都に住んでる金持ち若夫婦に見える。それなのに、この二人めっちゃ強いんです。師匠は長剣を棒切れのように振り回すし。奥さんは戦ってる姿を見た事無いけど、冒険者組合の人達曰く、戦わせたら駄目だ。(周りも巻き込まれて)死ぬって涙目で言ってたし。


 とか思ってる間に二人は奥に進んでるし!

「ひぃ、まっ、待ってください!」


「ほら、今日入るダンジョン。早くしないと夜になるぞ?夜は夜で面白いけどな」

 やめてくれ。夜活動する魔物とか最悪じゃないか!師匠は楽しそうだけど。ほら、師匠の愛する奥さんが嫌そうな顔してますよ!


「死霊系は嫌」

「俺に抱きついてもいいぞ?」


 いちゃつきやがってバカップル夫婦め!弟子から外れたい!絶対師匠から逃げる術式を作ってやる!

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