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ダンジョン:ホームセンター探索②

 ジリジリと確実に目標へ接近しているのが分かる。

 通路は曲がりくねっていて、未だに足音の正体が視認できない。

 しかし近づいたせいで余計に音が反響し、正確な距離が掴みにくくなった。

 スコップを握る手が汗でじっとりと湿る。


 焦るな。


 気取られるな。


 物音を立てぬよう細心の注意を払いながら、無限とも思える追いかけっこを続ける。




 もう少し。



 あと少しで…………。





 目の前、左にカーブした通路を越えると、ついにその後ろ姿を捉えることに成功した。




 子供のような体躯に、暗緑色の肌。

 軽装でボロボロの鎧を纏い、手にはダガーを装備している。

 間違いない。

 ゴブリンだ。


 少しだけ、ほっとした。

 足音からして大型の魔物ではないことは分かっていたが、実際に何がいるかなんて分かりはしなかったのだ。


 だが気を抜くのはまだ早い。

 情報では最弱種とあったが、戦った経験もない俺には依然として脅威であることは間違いないのだから。



 背負っていたリュックサックを静かに下ろし、得物を軽く振って調子を確かめる。

 頼むぜスコップさん!


 ゴブリンはまだこちらに気づいていない。

 身軽になったおかげで軽やかに、だが静かに距離を詰める。



 あと三十メートル。





 二十メートル。





 十メートル。




 全力で駆け出す!



 心拍数が一気に上昇し、足がフワフワするような妙な感覚。

 物音に気がついたのであろう、こちらを振り向いたゴブリンの表情が驚愕と絶望に染まった。

 こいつにも感情があるのか……。


 だが、ここで躊躇するほど甘くはない。

 しくじれば死ぬのは俺なのだから。



「ーーッオオオオオ!」



 気合いとともに、肩上に構えていたスコップを袈裟懸けに思いきり降り下ろす。



 ゾブリ、と鈍い音を立てゴブリンの無防備だった首もとを半分以上切り裂いた。

 どす黒い鮮血を撒き散らし、濁った断末魔とともに床に崩れ転がり回る。

 やがて力尽きたのか、今の出来事がまるで嘘であるかのように肉体が跡形もなく霧散した。




 呆気ない。

 残ったのは僅かな装備と、緑色の小さな魔石。




 リュックサックを回収し戦利品を収納すると、荒い息をついて俺はその場にへたりこんだ。

 緊張が溶け、どっと疲れが押し寄せてきたのだ。



 スコップは想像していたよりも凄かった。

 不意討ちが決まったとはいえ、一撃でゴブリンを仕留める威力があったのだから。



 ありがとう、スコップマスター!

 推し武器を素直に受け入れて正解だった。

 スマホを取りだし、まとめサイトの掲示板に称賛とお礼のメッセージを書き込んでおいた。



 ついでにダンジョン内部のこれまでの情報も書き足そう。


 データを編集するため少し目を離した隙に、専用の掲示板がいつの間にか盛り上がっていた。

 どうやら俺の情報が嘘か本当かで一悶着しているようだ。

 探索ついでに撮っておいた写真をアップロードしてやるか。

 ダンジョン内部の情報は、俺以外ほとんどないから疑う気持ちも分かる。

 あってもごく僅かな断片情報で、書き込んだ人が死んでいるのかネットが繋がらないのかも分からない。



 情報収集で目新しいものはなかった。

 適当なところで切り上げ、探索を再開しよう。



 この通路はまだ先がある。

 曲がりくねったこの道は、よく見るとどうやら少しずつ上に向けて登っているようだ。



 しばらく歩き続けると、やがて開けた空間が目に入った。




 現在時刻02:55

 第二階層に到達した。

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