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愛人さんと小休止

 両親や知り合いの安否が確認できたので、現在の状況を整理したいと思う。



 電話に出た親父やお袋にダンジョン内部にいることと、ティナがエルフであることを伏せ、ひとまず避難中に外国人の彼女ができたと伝えたのだが、ここで問題点が判明した。

 翻訳くんの能力不足である。


 言葉による空気の振動を変換する特性上、電話相手の言葉はスピーカーから発された音声を使用するので、ティナにも理解できる。

 しかしアーティファクトから距離が遠すぎるせいか、ティナの発した言葉の意味を直接両親の脳内へと届けることができないようなのだ。

 思わぬ誤算ではあったが、作り直す魔力も不足しているので後回しだ。

 ある意味外国人という設定の真実味が増したので、結果オーライだろう。

 親父には、お前に外国人の彼女とか冗談だろ?なんて言われたので、電話を変わってやったらティナの話す謎の言語に見事にテンパってくれた。

 どうだ!

 俺にもその言語の意味は分からんぞ!



 社会情勢についても、いろいろと変化があった。

 現在、全国の都市部及びその付近にダンジョンが出現し、特にその数が集中しているのがここ、東京だ。


 また、一部のダンジョン外壁に向けて、日米連合軍による各種砲撃や空爆が行われたが、結果は無傷。

 物理攻撃をことごとく遮断する障壁があることが判明したようだ。


 街中に展開している魔物に対しては現代兵器が有効であるものの、特殊能力持ちやドラゴンを始めとした大型の魔物には苦戦を強いられ、未だ外部からダンジョンへの突入に至っていないのが現状らしい。



 情報収集するにあたり、当初からお世話になったまとめサイトへアクセスしたのだが、いつのまにか冒険者ギルドを呼称している。

 もうね、さすがだよ。

 現代人は思いの外逞しいようだ。


 ある意味では魔物が敵で良かったな。

 敵がゾンビのように、生きている人間を取り込んで増殖する存在ならば、今頃人間同士で阿鼻叫喚の地獄絵図だったであろう。

 それに比べて、魔物という明確な相手は分かりやすい。

 社会的なインフラも機能しているので、こうして団結してやりとりができる。

 犠牲者は多く楽観視はできないが、匿名のインターネット上なら多少不謹慎でも、こういったおふざけでどこか希望が湧いてくるのだから面白いものだ。






 現在時刻19:33



 ティナと相談して、歩くホームセンターになることにした。

 なんだそれは?と言われても、そのままの意味だ。

 魔物の気配に注意を払いながら、俺が最初に進んで来た道を辿り、各階層のホームセンターの商品を根こそぎ異次元リュックに詰め込んでいく。

 こんな場所に物資があっても、取りにくる人なんてまずいない。

 ならば俺が緊急避難という建前のもと、すべて持ち運んで有効活用しようというわけだ。

 幸い異次元リュックは底なしである。

 後で事業者に商品を返せと言われれば、残りを返すこともできるしな。

 ほ、本当ですよ?

 だから代金とか請求しないでね!



 俺のいらぬ心配を余所に、愛人さんはといえば興味津々でいろんな商品に目を輝かせている。

 いかに未来の記憶があるといっても、見たことがないものが殆どらしい。



「渉様、これ何ですか?すごくカッコいいです!」


「それはエンジンカッターだね」


「この面白い形をした棒は?」


「バールのようなものかな」



 ただ、真っ先に反応するのが工具類の中でもちょっぴり物騒な代物であるのはどうかと思うんだ。

 もっとも、彼女にとって不思議な物のオンパレードなので、喜んでくれているようで何よりだが。



「ティナ、そろそろご飯にしよう」



 商品もすべて収納したし、森でたくさん運動もしたので、いい加減腹ペコだ。



「はい、あの……もしよろしければ、またカレーを食べてみたいのですが」



 物欲しそうな顔でじっと見つめてくる。

 やはりティナはカレーがお気に召していたらしい。

 残念ながら今はレトルトしかないが、いつか有名店の本格カレーを食べさせてあげたい。

 どんな反応をするか楽しみだ。



 早速商品を詰め込んだばかりの異次元リュックから、ガスボンベ式のコンロや鍋、レトルトパック、ご飯、使い捨ての皿やスプーンを取り出す。


 この異次元リュックときたら、すごいのですよ。

 ジッパーを開けて中を覗き込んでも謎の空間が見えるだけなのだが、取りだしたい物をイメージすると霧の中から浮かび上がるかのように目的の物が出現する。

 最初は手を突っ込むのに多少勇気がいるが、慣れてしまえばどうということもない。

 むしろ楽しい。

 あれでもない、これでもないと無意味にポケットから取り出しまくる某ロボットさんの真似をしたくなる。

 はい、折り畳みテーブル!

 はい、折り畳み椅子!

 やはりキャンピング用品は便利だ。


 しかし、実際にリュックから何倍ものサイズの物体が取り出せるのを目の当たりにすると、物凄い違和感を覚える。


 ふっ、俺も現実に染まりすぎていたな。

 これが魔法の力だ!







 現在時刻21:33

 現在地:1F アウトドア用品売り場




 もうすっかり夜です。

 この騒動が始まってからというもの、何かと夜間に活動することが多かった。

 ブラックな職場は嫌だと言いつつ、俺自身が率先して夜間に働いていては世話はない。

 ということで、探索はさっさと切り上げ愛人さんとテントの中でイチャイチャすることにした。

 床に引いたクッションマットの上で、ティナが膝枕してくれているのである。

 ヤバいぞこれ、幸せすぎる。

 もう探索とかしないで、ずっとこうしてたいのだがそうもいかないのが世知辛い。

 せめてもの慰めに、スカート状の装束の裾から覗く瑞々しい太ももを撫でてみた。


「んっ……やっ、く、くすぐったいですよ」


 表面は柔らかく、少し揉んでみるとその層の下にしなやかな筋肉があるのが分かる。

 やっぱり男の体つきとは全然違う。

 ティナの身体はどこもかしこも俺を魅了して止まない。



「もぅ、渉様はえっちです……」


「その通り。ただしティナ限定でな」


「それは嘘だと思います!」



 一瞬で看破されてしまったが、特に怒っている様子はない。

 ジトッと見つめるその顔も、どこかこんなやり取りを楽しんでいるみたいだ。

 だが、今の俺にとってはあながち嘘だとは言えないのだ。


 身体強化魔法の効果は絶大過ぎた。

 代謝機能やら筋力といったあらゆる能力を増幅したようで、時間が経つと当然のように、理性で抑えるのが難しいほどに男の欲望も滾ってくる。

 側にいるのは、俺だけの可愛い愛人さん。

 階層一帯には人も魔物もおらず、テントの中で二人きり。

 こんなの、我慢できるはずがない。

 俺の一部が滾っていることなんて、ティナもとっくにお見通しだ。



「こんなえっちな人は、わたくしがお相手しないと……他の女性が危険ですね?」



 上気したティナの表情が色っぽくて、目が離せない。






 夜は長い。





 理性など一瞬で吹き飛び、彼女へ色々と教え込むことになった。





読んで下さっている皆様、いつもありがとうございます!


どこまでセーフ?

作者の頭がアウトなのは知っているのですが……発禁にしてしまうと意味がないと思うんです!

見えそうで見えないのがぐっとくると思うんですよね。


執筆の速さについても今後の課題にします。

要修行ですね……

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