探索前の情報収集
最悪だ。
ダンジョンから逃げたつもりが、ダンジョンに取り込まれてしまうとは。
気がつくと、ホームセンターは見事なダンジョンに生まれ変わっていた。
展開された巨大な魔方陣が消え去った後、建物の外壁があった場所は正体不明の鉱物と混ざり合い、新たな通路が生成されている。
内部の空間は以前より明らかに拡張されており、体感でも倍以上に広がっていると思う。
しかし設備や商品はそのままで、物資の調達には事欠かないのが不幸中の幸いといったところか。
また、建物が変化したせいで電線が切れたのだろう。
照明はすべて落ちているが、壁と融合した鉱物が薄っすらと青い光を放っているので探索に支障はない。
見渡すかぎり周囲に魔物の姿はないが、外への出入口もなくなっている。
まあ、これに関しては素直にラッキーかもしれない。
もしここが出入口のままならば、今頃魔物の群に取り囲まれ詰んでいただろう。
とりあえず情報収集のためスマホを確認すると、LTEのアンテナ表示が二本も立っている。
どうやらダンジョンの外壁が電波を完全に遮断したりはしないようだ。
ネットに繋がるならば話は早い。
元ホームセンター周辺道路のwebカメラサイトにアクセスすると、やはりダンジョン化したこの場所と、少しずつ溢れだす魔物の群の姿が映し出された。
ついでにこの騒動のまとめサイトにもアクセスし情報を書き込んでおいた。
内部の状況を伝達することで何かしら役立てばいいが。
せっかくなのでダンジョン探索実況生放送とかするべきかと思ったが、そんなことをしていたらガチで死にそうなので断念した。
アクセス稼げるだろうな……実にもったいない。
他にもまとめサイトにはいくつか追加情報があった。
ひとつ。
ダンジョンから外に出た魔物はそのまま周辺区域に散らばって、種族ごとに縄張りを作ると一定範囲から外には出ない。
ふたつ。
何種類かの魔物の対処方や、有効な攻撃方法だ。
外で死闘を繰り広げた人々が積極的に情報をやり取りしている。
これは大変ありがたい。
ついでに、魔物が死亡すると肉体は霧散し未知の鉱石に変化する。
性質については不明だが、早くも魔石と呼称されているようだ。
みっつ。
日本政府は国家非常事態宣言を発令。
災害対策の名目で魔物と交戦を開始。
政府施設及び社会的インフラを最重要拠点とし、防衛を優先。
国民には避難を推奨するが、移動のための特別措置として武装および魔物との交戦を正式に許可するものとする。
しかしあれだな。
文明の利器を使うと、ダンジョン探索の風情もへったくれもない。
まるで攻略サイトを見ながらゲームしてる気分だ。
現代社会すごい。