俺、この戦いが終わったら結婚するんだ④
食事が終わるとティナを連れて村の散策に出ることにした。
気分はデートだ。
初めてのな。
いろいろ過程が時空ごと吹き飛んでいる気もするが、いきなりプロポーズした馬鹿が何言ってんだってな。
いまだ唇にはしっとりとした柔らかな感触が生々しく残っており、正直色々もて余す。
しかし左手に抱き付いている当のエルフさんは、そんなことも知らずに終始ご機嫌だ。
歩く度、形を変えながら押し付けられるたわわな胸に、漂う異性のフェロモン。
握られた左手に触れる肌はキメが細かくスベスベだ。
これね、我慢するの辛いんですよ。
男がハニートラップに簡単にひっかかる理由がよくわかる。
たぶん俺はこの娘に狙われているのだ。
貞操を。
駄目、このままではお嫁に行けない身体にされてしまう!
悶々としながら一緒に歩いていると、口々に俺達に話かけてくる村人たち。
美男美女揃いのエルフたちの中でも、特に若そうなイケメン男子達が嫉妬とやっかみを込めて突っ掛かってくるが、俺に抱き付いているティナの満面の笑みと共に繰り出される言葉に次々と撃退されていく様は、誠に痛快であった。
きっと彼女に好意を抱いていた独身者だろう。
残念だったな!
しかし比較的年輩らしきエルフ達は概ね祝福してくれるようだ。
俺をと言うより、見るものを蕩けさせるようなティナの幸せそうな表情を前にしては何も言えないといったところか。
「いいかお前、ティナちゃんを泣かせたらドラゴンの巣穴に両手両足引きちぎって放り込んでやるからな!」
「それじゃぬるい!スライムの中に一時間置きに少しずつ身体を浸し、生きながら溶かされて産まれてきたことを後悔させてやる!」
しかし比較的祝福ムードとはいえ、エルフの叔父様たちが俺に向ける言葉はいささか物騒だ。
異世界仕込みの拷問術……いやいやいや、どう見ても殺す前提じゃないか。
「それが嫌だというなら、オークなんぞ蹴散らして無事に帰ってこい」
「ジークリンデさんに大見得切ったからには、お前は彼女を幸せにする義務がある」
彼らなりの応援、なのだろうか?
「当然そのつもりです。オークごときに我が道を遮ることなど不可能なのですから!」
「相変わらず言ってくれるぜ!まあ分かっているだろうが、既にこの村はオーク3個大隊に包囲されつつある。まったく、こんなタイミングでここに現れるとは……まさしく予言通りだな」
今なんと?
聞き間違いでなければ、オークが3個大隊とおっしゃいましたか。
にわか知識から推察しても1個大隊は最低2個中隊以上から編成される。
中隊は平均で200名程度で構成されるから、少なく見積っても1200以上の軍勢ということになる。
ハイネ村の人口はおそらく500もいない。
その中から老人や子供等の非戦闘員を除くと、エルフの戦士団も300に届くかどうか怪しい。
ジークリンデさんはこれを討伐と言ってたわけでございますか?
ものは言い様だが、これではどう見ても戦争だ。
それも、圧倒的劣勢の……。
正直、オークと聞いてどこか甘く見ていた自分に今更ながら気がつく。
オークはゴブリンの次に弱い。
これはネットのまとめサイトからも、動画で見た様子からも事前に分かっていた。
個体の身体能力だけを鑑みるのならば、魔法を使えば俺でも十分太刀打ちできる目処はついていた。
しかしこれ程の大規模な軍団での戦いとなれば話は別だ。
ひょっとして、この村相当ヤバい状況なんじゃ……?
改めて村人たちの表情を観察すると、皆どこか不安や焦燥を押し隠して普段通りを装っているように見える。
舞い上がっていた俺が気がつかなかっただけで、きっと最初から。
村に着いたとき、ティナの無事を喜んでいた理由が今なら分かる。
そして、そんな状況下で村長の娘をくれと言い出す馬鹿一人。
俺だよ!
空気読めないとか以前に頭大丈夫か?と問い詰めたい。
真に申し訳ございませんでした!
だが、だからこそ彼らの俺に対する態度の不自然さに気がつく。
けれど……。
「……あなた様なら、大丈夫です」
いつのまにか汗ばんでいた俺の左手を両手で優しく包み込み、耳元で囁く声があった。
「今度はきっと乗り越えられます」
それは世界を改変する魔法。
長い旅の始まりを告げる言葉だった。
なかなかうまく書けません。
自分の未熟さを痛感するばかり……。
ストーリー上、キリがいいところまで書いたら、投稿済みの全話加筆、修正を予定しています。




