9 イオンの道具屋で装備を買いました
足立区ギルドから南側のダンジョンへと入ると、そこもまた、分岐のない一本道だった。
途中、再び開けた場所があり、そこにはスーパーのイオンが建っていた。
試しに立ち寄ってみると、店内に入ってすぐのフロアに青族の女がいた。
「いらっしゃいませ!」
その青女以外には人影はない。
「えーと、ここは何を売ってるの? もしかしてここも女子の奴隷?」と一応聞いてみる。
「いいえ、ここは道具屋になっております」
「道具屋?」
「はい。傷ついた体を癒すための薬草や、ポーション類。MPを回復させるためのハーブ類など、様々な使用アイテムを取り扱っていますよ」
ゲームの中でよく聞くようなアイテムだ。
「スキルを恒久的にアップさせるための強化アイテムも取り揃えています。こちらはちょっとお高くなっておりますが」
「あ、それいいかも。剣スキルをアップさせるアイテムってある?」
「はい、ございます。こちらの『ソードスキル・サプリメント』がそうです。1個で10スキルアップします」
「すごい、それ頂戴、いくら?」
「1個、30万ポイントとなっております」
「高!! えっと、今私が持ってるポイントは……3万3千だから、これで買える値段の商品で、何かいいのないかなー」
「でしたら、こちらの洋服などいかがでしょう。見た所、お連れ様が下着しか身に着けておられないようですので……」
青女は西島の方を見ながら言った。
西島はヨシコのシャツとスボンを貸したので、タンクトップとトランクスのままだった。
「あ、じゃあアタシの服買ってよ。今着てるのは西島に返すから」とヨシコ。
「そうだね、そうしよう。すみません。このヨシコに合う服を下さい」と私。
すると店員は適当に服を見繕って持ってきた。
「こちらでいかがですか」
ゲームで魔法使いが着ていそうな、フード付きの緑のチュニックと、裾にいくつものリボンがあしらわれた広がりの大きな白いスカートだった。
「あ、いい! それっぽい!」とヨシコも気に入ったので、それを買った。
値段は丁度3万ポイント。
残りは3千になった。
また敵を倒して貯めないと。
試着室で早速着替えたヨシコは、本当にゲームの中のキャラクターみたいな雰囲気の、可愛げな魔法使いになっていた。
マスカットグミの髪飾りの黄緑色と、チュニックの緑色がいい感じに合っている。
「ヨシコ、可愛い~~」と私が言うと、
「へへへ」と、ヨシコは照れて鼻の下を掻いた。
すると、ピピピというSEと共に、ヨシコの頭の上に文字が浮かび上がる。
『防御+1 魔力+5 回復魔力+5 回避+5 MP+5』
どうやら、新しく着たチュニックとズボンの装備効果のようだ。
回復魔法使いのヨシコには持ってこいのステータス上昇になっている。
「ほら返すよ」と、ヨシコは西島に、さっきまで着ていたシャツとスボンを投げ返した。
西島は、可愛い魔法使い姿になったヨシコに、ぽーっと見惚れていたようで、投げ返された自分の服を床に落とした。
「なんだよ、シャキっとしろよ!」とヨシコ。
「あ、う、うん」
西島は、自分の服を着ると、何かに気付いたようにすんすんと鼻を鳴らし、
「あ、なんか……、このシャツ、いい匂いする……」と呟いて、またもや顔をぽーっとさせた。
ヨシコが着ていたせいで、西島のシャツに匂いが移ったのだろう。
「はぁ? お前何匂い嗅いでんだよ、殺すぞ!!」
「ご、ごめんごめん、あ、でも、これがヨシコの匂いか……、口は悪いのに、匂いは甘いっていうか……」
「お前、まじで殺す」
「う、嘘嘘嘘」
……というわけで、制服姿の私と、制服姿の西島と、魔法使い姿のヨシコ、といういでたちとなった私達は、中立の青族の女店員に見送られ、イオンの道具屋をあとにした。