4 ソードスキルがアップしたみたい
コンビニをあとにした私達は、更にダンジョンを進んでいった。
相変わらず暗いダンジョンが続く。
道中、3回ほど、俳諧する骸骨と遭遇したけど、もう慣れたので、ラヴの剣で簡単に倒した。
そのたびに西島はいちいち発狂したけど。
骸骨はでっかい鎌とか棍棒とか持ってたけど、ラヴの剣で軽くなでるだけで、武器ごと骸骨を切り裂いて、こっちはちっとも怪我を負わずに済んだ。
拾った剣だけど、なにこれ凄すぎる、と改めて思う。
んで最後の骸骨を倒した時、ピロロローンって私の頭の中で軽快なSEが鳴った。
「え、今の何の音!?」と、西島が驚いた顔で言った。
「へ? 音って、あんたも聞こえたの?」
「聞こえたよ」
まじで。
私の脳内の妄想SEかと思ってたけど、どうやら実際に鳴り響いた?
すると、私の両手が薄っすらとピンク色に発光した。
ラヴの剣の刀身を纏う光と、似たような光だ。
「なな、なんこれ! 何が起こった?」と、私が取り乱していると、
西島がぽかんとした顔で、私の頭の上を指差した。
見ると、私の頭の上に文字が浮かび上がっている。
『 Sword Skill Up > 2 』
「ええっ、これ何。CG?!」
手を伸ばして触ろうとしたが、擦り抜けた。ホログラムみたいなものだろうか。
でも、いったいどこから投影されてるんだろう。
見ると、手に持ったラヴの剣からチカチカ光が漏れている。
剣が表示させてるみたい?
「ねえ、これ何て書いてるの? スオー……」
「ソードスキルアップ……だけど」
「ああ、ソード。知ってるわよそれくらい」
西島が据わった目で私を見る。
頭が悪いのはしょうがない。ほとんど学校行ってないし。
「んー、何? ソードって剣でしょ? ってことは私の剣のスキルが上がったってこと? やったー。イエーイ!」
と言っても、特に何かが変わったような実感はない。
きっと自分でも分からない感じで強くなってるのかも。
見ると西島はどこか腑に落ちない顔をしている。
目の前で起こっているのが本当に現実なのかどうかを、まだ疑っているような顔だ。
「何あんた。私がソードスキルアップしたから、妬ましいわけ?」
「そういうわけじゃ」
「別に気に食わないなら、別行動したっていいんだけど。あんたなんか別に興味ないし」
「そ、それは……、だ、駄目だよ! 僕じゃあんな骸骨倒せないし……」
私はその言葉を聞いて、カカカカと高らかに笑った。
「ほらね、分かった? 私の存在価値。私がいないとあんた死ぬよ」
「うう……」
「"間宮様、一緒にお供させて下さい。私はなんでもしますから"って言ったら、ついてきてもいいよ」
「ええっ」
「ま、間宮様……、一緒にお供させて下さい。私はなんでもしますから……」
すると西島は俯きながらも、あっさりと言った。
なんか全然悔しそうに見えない。
っていうかなんか嬉しそう?
「うわ、おまえMかっ。きもっ」
「ち、違うよっ」
「やっぱ私一人で行動するわ。あんたついてこなくていいから」
「ええええ、お願いだよっ、一緒にいさせてっ」
「あー分かった分かった。うぜー」
そう言いつつも、一方で、そうやって頼られてると思うと、それはそれで悪い気もしない。
そうこうする内、私達は再び開けた場所に出た。
暗闇の向こうから、大きな建物が見えた。
どこかで見たことがあるような建物だなと思ったら、学校の校舎だった。
校舎のほとんどの窓には明かりがなかったが、体育館だけ電気が灯っているようだった。
「人がいるのかも」と、私が言うと、
「また化け物かもしれないよ!」と、西島は警戒した。
「行って確かめてみよう」
「ええっ、怖いよ」と半泣きの顔をする西島。
「おまえ本当に女々しいな……。まあもしもの時は私のラヴの剣で守ってやるから、ほら行こ」
そして私達は体育館の方へと進んでいった。