2 玄関の前はダンジョンになりました
とりあえず骸骨を倒した私は、とにかく混乱しまくって、
「ちょっと、どういうことなの!!」と、私の足元で腰を抜かしている西島に詰め寄った。
「ぼ、僕だって、わ、分からないよ……」
「分かるでしょ!? あんた学級委員長でしょ!? 頭いいんでしょ!?」
「家に戻ろうと思ったら、急に辺りが暗くなって、そしたら突然骸骨が襲ってきて」
言われてみて気付いた。辺りは夜みたいに暗い。まだ夜には早い時間なのに。
よく見ると、上空には天井らしき壁が見えた。
周囲を見渡すと、家全体が岩壁に囲まれている。
「ええ? なにこれ!? どうなってんの!? 知ってること教えなさいよ、西島!!」
「だ、だから分からないって……、あんな骸骨、ゲームの中でしか見たことないし……、なんかこれって、まるでダンジョンの中にでも閉じ込められたみたいな……」
「何よ、やっぱり知ってるんじゃない! これってダンジョンなの!?」
「い、いや、あくまで喩えで、似てるっていうか」
「そうか、ダンジョンね。ナルホド」と私は納得した。確かにこういう感じ、ゲームで見たことある。
「よしよし。で、これが私のラヴの剣。つまり私が勇者ってことね」
私はそう言いながら、地面に落としていたラヴの剣を拾い上げて、鞘に戻した。
「え、どういうこと? それラヴの剣って言うの?」
「そうだよ。よし、冒険に出発するかー」
「え、冒険!?」
「そうよ」
「ちょっと待って、何かの大災害かも知れないんだよ!? 助けがくるのを待ってた方がいいよ」
その時、ブーンと車の走る音がして、見ると、私の家の前を一台のトラックが走り去るのが見えた。
「あ、車! 助けを呼ばないと!」
と、西島が慌てて立ち上がり、トラックに向かって手を振りながら叫ぼうとした。
その瞬間、トラックの運転席に、緑の化け物が座っているのが見えた。
どう見ても人間じゃない。
私は咄嗟に西島の肩を掴み引っ張って、その口を手で塞ぐ。
トラックが通り過ぎ、その荷台が見えた。
荷台には、人が数人座っていた。
体をロープのようなもので縛られ、口には猿轡をされていた。
そして、一瞬だったが、その中に、クラスの中でナンバー1のイケメンの高野の姿もあった。
トラックはそのまま暗闇の中へと進んでいき、やがて見えなくなった。
「ま、間宮! 今の見た!? ば、化け物が……!! それに高野とか、他にもクラスメートが乗ってた!! っていうか、捕まえられてた!! なんなんだいったい!!」
西島は、自分の口から私の手を払いのけると、パニックのようにそうわめきちらした。
「うるさい!! 私も自分の目で見たから分かってるって」
「で、でも、どうしよう!! そうだ、警察に通報しよう!!」
西島はスマホを取り出して、110番を掛けようとしてる。
多分、繋がらないだろうな、って何となく思った。
「あれ、なんでだろ、繋がらない!!」
やっぱり。
「よし、行くよ西島」
「えっ、どこへ!?」
「決まってんじゃん。あのトラックを追いかける」
「ええええ、なんで!?」
「バカなの? 見たでしょ? 高野とかが捕まってたでしょ? 助けるんだよ。そして高野を助けて、君のおかげだよ……、ありがとう、チュ、とかなんとか、うへへへへ」
「えええええ、無理だよ!! 警察とか自衛隊とか待った方がいいよ!!」
「そんなの来ないよ」
「どうしてそんなことが分かるんだよ」
「分かるのよ。なんとなく」
「で、でも、追いかけてどうするんだよ。高野達があっさりと捕まってたんだよ? きっとあの化け物すごく強いんだよ! 僕と間宮の二人で行っても、かないっこないよ!!」
私は手に持っていたラヴの剣を、西島の目の前に掲げて見せた。
「これがあるし」
「ええええ、本気で言ってんのか!?」
「本気だし。あんたも見たでしょ。さっきの骸骨を倒した私だよ」
「そ、それはそうだけど、でも」
「あーもううぜー。男だろ。ぴしっとしろよ」
そう言うと、その言葉がささったのか、西島は急に神妙な顔をして、そして生唾を飲み込んだ。
「わ、分かった」
どうやらやっと腹をくくったようだ。
「で、でも、間宮、その格好で行くの?」
言われてみれば、私はまだパジャマのままだった。
ちょっとだけ考えて、やっぱまずいな、と思い、部屋に戻って制服に着替えた。
ついでに簡単にお化粧もして、髪も綺麗にして後ろで結った。
玄関に戻ると西島は退屈そうにしている。
頭をぱしっと叩いて、「ほら出発だ」と言った。
西島は化粧と髪をきちんとした制服姿の私に見惚れたらしく、またぽーっと頰を染めてる。いちいちウブ過ぎてうぜー。
そして、トラックが消えた方へと私達は進み出した。