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僕と彼女のアンリアリティー  作者: 四十路小作
二章 襲来のファーストカズン
19/21

steppe004 竹林道

(´・⑪・`)来年はDQ11とアトラスの完全新作と楽しみブヒィ……スマフォだったら泣くけど

「ただいまー。塚杜君待たせてごめん…ね? どうしたの、そんなに落ち込んで」

「ああ、白山さん。お帰り……」


 元気良く帰宅した白山さんが応接間のソファーでグッタリ座っている僕を見て首をかしげた。

 美人さんに初見で恨まれるようなぼっちの僕だけど、それをわざわざ気になっている女の子に言って同情して貰おうとは思わない。なのでいとうつくしい白山さんの姿を見て渇いた心を潤し、なんでもないよと首を振った。


「そう? じゃあ着替えて来るね」


 あっそ、とか。ふうんそうなの、とか。大して興味が無い素振りで家の奥に消える白山さん。

 もうちょっと心配してくれても良いんですよ? ああどうでもいいんですね。そうですよね。ハハ、ワロス。

 まだ一週間も経ってないから仕方ないけど、一体何時になったらデレてくれるのだろうか?

 僕は読まないジャンルだけど、ライトノベルとかのヒロインだと主人公に意味不明なレベルですぐ惚れたりするらしいのに。

 まあそもそも白山さんにとって主人公じゃない僕には関係ない話だけど。

 もう家に帰って七奈と遊びたい……。


「お待たせ、行こ」

「あい」


 数分でジャージに着替えて戻ってくる白山さんに促され、僕はトボトボとダンジョンに向った。


    ◆


「ザッザッザッザッ」


 ダンジョン一階、階段前広場に新しくできた2階へと続く階段。それを下りながら白山さんが妙な言葉を口にした。


「なにそれ」

「階段の音」

「?」


 階段の音って普通コツコツかカンカンだよね? このダンジョンの階段は木製でコンコンだけど、ザッて一体どんな階段なんだろうか。

 珍妙な事を言う白山さんのいとうつくしい姿に若干元気を取り戻した僕は、いよいよダンジョンとして本格的な物になり始める2階層へと到着する。

 目の前に広がるのは高く伸びた竹が密集して出来た壁と、その間に通る石と土の道路。点在する灯篭が煌々と赤い光を放つ、夜の竹林道だ。

 上を見上げればまるで星の無い夜空の様に暗い天井。一分足らずで下りてきたとは思えない凄まじい高さだ。

 理屈通じないダンジョンの中だと解っていても、一体どうなってるんだろうかと見上げてしまう。白山さんも見えない天井に向けて手を伸ばし、不思議そうに聞いてくる。


「外ってわけじゃないんだよね?」

「違うよ。竹の匂いがする風も少し吹いてるし、自分でも凄く疑問だけどね」


 誰かを目隠ししたままここに連れて来たらきっとここがダンジョンの中だと気付かないかもしれない。今の日本ではまずありえない竹林道の広大さとそこに徘徊するクリーチャーを見れば瞭然だけど。


「……よし、行こっか。準備は良いよね?」

「うん、大丈夫」


 ダンジョン一階階段前広場で装備を整えていた僕たちはそれぞれの武器を手にして竹林道を進む。

 歩いてみて実感するのはやはり一階の餓鬼路より広大なところだ。餓鬼路の幅が天井も合わせて学校の教室分くらいと歩く分には悠々としているけど、多数で戦う分には狭かった。

 しかしこの竹林道はその倍近い幅があり、真っ直ぐに続く通路の長さも餓鬼路以上。構造を考えるに餓鬼路と同じく十字路とT字路を掛け合わせたスタンダードな迷路になっていると思うが、スケールが段違いである。特に天上の見えない頭の高さがそれを強調している。

 白山さんも言ったけど、人が想像する地下迷路ダンジョンとは違った光景だろう。


「……ん?」


 絶景を眺めながら進んでいた所で僕たち以外の気配、物音や息遣いと言ったものを感じた。丁度竹林道の最初の分岐点、T字路に差し掛かっていた所なので、そのどちらかにクリーチャーが居るのだろう。

 僕と同じように気配を感じたのか。それともこれまでの経験で足を止めた僕の行動を察したのか。自然と口を噤んだ白山さんと気配がした方の壁際により、曲がり角の竹に隠れて通路の先を覗き込んだ。

 そこに居たのは一階でおなじみの餓鬼が2匹。そして一階の通路では見かけなかった大柄な異形の餓鬼。一階の守衛の間でSG(ステップガード)として出てきた大餓鬼だった。


「なんかちっちゃくなってる」


 確認後直ぐに頭を引っ込めたところで白山さんが言ってくる。


「だね。守衛の間で出てきた大餓鬼はSGとして強力なパワークリスタルを核にしたSIだったし、そのうえ異常個体だったからね」

「そうなんだ。あんなのがうようよしてたら嫌だったけど、あれくらいならなんとかなりそうだね」


 竹林道に居た大餓鬼は苦労して倒した大餓鬼SGよりも二回りほど小さく、鎧兜も身に着けていないと明らかにランクダウンしている。通常の餓鬼が1mちょっとくらいの矮躯だったのに対し、通常の大餓鬼は成人男性よりも少し大きいくらいに見えるので、180㎝以上2m足らずと言ったところか。

 春の身体検査で178㎝あった僕とはそれほど差は無いけど、その僕の胸元くらいまでしかないいとうつくし系少女の白山さんからすれば十分に大きな相手なのだが。190㎝くらいある白山(クソ爺)さんに見慣れている白山さんからすればなんとかなるレベルらしい。

 頼もしいなあ。


「ふう……行こうか。段取りは一緒。多分大餓鬼には驚かしは効かないと思うけど、初手で驚かした餓鬼2匹を落として二人で大餓鬼を攻めよう」

「りょーかい。じゃ行くよ。1…2の…3」


 白山さんの可愛らしい掛け声で曲がり角を飛び出す。対象まで少し距離があるから出来るだけ静かに駆けより、座り込んでボウッとしていた餓鬼たちが気づく前に大声を出して驚かせる。大餓鬼がやっぱり驚かなかったけど、異様に大きい頭と腹で動きが鈍いので初動に戸惑っている。

 これならいける。僕と白山さんはそれぞれが相対する餓鬼へと得物を突きだした。


「「たああ!」」

「「ギギャァ!?」」


 僕の脇差の切っ先が振り返った餓鬼の喉元に突き刺さり、白山さんの短槍の穂先が餓鬼の背中の真ん中へと突き刺さる。更に怯んだ餓鬼に追い打ちをかけた僕たちは、反撃を喰らう前に餓鬼たちを倒しきる。

 光の粒子となった餓鬼がその場に核となった物体を残して消える。後は大餓鬼一匹。しかしこの後に及んで何もしない筈も無く、餓鬼に集中していた僕たちが気づいた時には攻撃態勢に入っていた。


「白山さん!」

「うん!」


 慌てて距離を取る僕たちが居た場所を長い腕の一薙ぎが走った。様子見としてさらに距離を取った僕たちに大餓鬼がヨチヨチと短い脚で這うように追って来る。……き、気持ち悪!?

 異様に大きな頭と妊婦の様に張った大腹。生殖器の無い灰色の体には一糸も纏っていない大餓鬼が不細工に這う様は夢に出てきそうなくらいに怖い。と言うか気持ち悪い。


「うにゃあああ!」

「ちょ、白山さん!?」


 嫌悪感に我を忘れたのか、白山さんが妙な声を上げて前に出た。円を描くように大餓鬼の側面を回ると、振り返るのにも苦労している大餓鬼の背後を取って一撃を繰り出した。ザックリと突き刺さる短槍。大餓鬼は痛みか怒りのせいか長い腕を振り上げると、そのまま後ろに倒れ込んだ。


「きゃあっ!」

「くっ」


 悲鳴を上げる白山さんは心配だけどここはダンジョンの中。HPと言う謎のシステムに守られているので小さな白山さんが大きな大餓鬼に押しつぶされて即死なんてことはまず無い。僕は仰向けになった大餓鬼へと横から飛びかかり、その横っ腹に脇差を突き刺して突き刺して突き差し回る。


「グギャアアア!!」


 なるほど。長い腕はこういう時には不利に働くのか。大餓鬼が腕を上げた状態から引き戻すのに少し手間取っているのを利用して僕は距離を取り、目標を変えた大餓鬼をこちらへと誘い出す。

 大きな口を開けて威嚇する大餓鬼がヨチヨチと這ってくる。でもそこまでだ。後ろに居た白山さんが可愛らしい柳眉を上げて短槍を突き刺した。下から上へと突き抜けた短槍の切っ先。遅れて大餓鬼の体が光となって消え、後にガランと長柄の武器を落とした。


「いたた。うう、ビックリしたよ~」

「お疲れさま白山さん」


 短槍を支えにもたれかかった白山さんを労いながら近づいてくる物音が無いか神経を尖らせる。

 ……ん、餓鬼路より広い道路なのが幸いしてか戦闘音を察知して向かって来る敵は居ないようだ。

 僕は大餓鬼の核となっていた長柄の武器……なんだろう? 結構な長さの刀と言うか薙刀と言うか……を拾って首を傾げた。


「あ、それ長巻だね。珍しい」

「長巻?」

「うん。大きさからみると中巻野太刀かも知れないけど」


 白山さんが言うに薙刀とは違うらしい。柄の長い大きな刀、太刀を長巻や中巻と言うのだとか。

 ふうん…と日本の武器のややこしさを感じながら餓鬼の残留品も確認する。けど、一階の餓鬼が落とす物と同じ防具なので割愛する。ダブりなのでパワースポットに放り込むくらいしか価値が無いので。


「それにしてもまた餓鬼だったなあ。このダンジョンって餓鬼ばっかりなんだろうか?」

「だったら嫌だなあ。可愛いモンスターとかいないのかな?」


 だからモンスターじゃ無くてクリーチャーだってば。それに可愛らしいクリーチャーが出て君はどうするんだい白山さん。

 僕はカピバラ型のクリーチャーを前に「殺せないよう」と体を震わせ半泣きになっている白山さんを妄想してホッコリした。


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