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僕と彼女のアンリアリティー  作者: 四十路小作
一章 二人のファーストステップ
10/21

steppe005 パワースポット

「「わああああ!!」」

「「ギャギャ!?」」


 ダンジョン駆除を再開しての一戦目。最初の十字路を真っ直ぐに言った所で餓鬼2匹に遭遇した。

 これで三度目となる餓鬼との戦闘だ。既に順応し始めている僕たちは特に相談する事も無く大声を上げて襲い掛かった。

 体格では僕より頭二つ分くらい小さな白山さんを含めて勝っているので、数が同じで不意が撃てれば苦戦するような相手では無い。無防備な所を一撃。反撃を躱したところで一撃。そのまま押し込むように一撃二撃した辺りで餓鬼は霧散する。


「ふう。三度目の正直だね。やっと無傷で倒せた」

「うん! 上手くいったね!」


 白山さんは喜んで餓鬼の残留品。2本目となる匕首を拾って即座にストレージにしまう。まったく白山さんの順応性と適応力は凄い。僕にとっては嬉しい誤算なのだけれど、今時の女子高生としてそれで良いのだろうかと心配になってしまう。

 実際には死なないとはいえ、どこの世界にクリーチャーと戦いアイテムを奪い取って喜ぶ女子高生が居るのだろうか。戦闘で足を引っ張るどころか大いに助かっているのでそんな事は言わないけど。


「さあ次々行くよ! もう一時間くらい経っちゃったからね!」

「そうだね。今日は一階を突破する糸口くらいは見つけたいから」


 気合十分。パワークリスタルで回復のSNPを手に入れた白山さんのテンションは僕よりも高い。この状態を維持するのが良いのか悪いのか。とりあえず僕はこの一階に手が出せないほどの強敵は居ないと仮定して先に行くことを決める。

 十字路やT字路を重ね、所々に小部屋を配置した典型的な迷路のMAPを手帳に記入しながらどんどん進み、時折遭遇する餓鬼たちを倒しては装備品を充実させた。

 しかし残念ながらSI。パワークリスタルを核にしたクリーチャーには出会って居ない。餓鬼しか出てこないみたいだからそろそろ遭遇しても良さそうなんだけど。

 そんなこんなで一時間ほど探索した辺りで目的の場所の一つを見つけた。それまで見つけた小部屋より広い部屋。その中心で昇る光の柱だ。


「やった。パワースポットだ」

「え、これが! SNPの使用回数ってどうやって回復するの!」


 もう何度も餓鬼を倒してすっかり危機感が抜け落ちた白山さんが光の柱に駆け寄る。幸いにもこの階には罠が無いようだから良いけど、難易度の高いダンジョンならきっとホラー映画の脇役の如く面白い目にあっていることだろう。


「光の柱に触れれば良いよ。毎回の如く仮説だけどそれはダンジョンの力の一部らしい。触れているとパワークリスタルの力を補充してくれるらしいよ。それに丁度良いから休憩しようか。パワースポットは階段前みたいにクリーチャーが近寄ってこないらしいから」

「……休憩ポイントだね」


 白山さんが光の柱に触れながらボソっと言った。思春期な僕は休憩ポイントとか言われたらイケナイ場所を想像してしまうけれど、またゲームか何かの用語なんだろうきっと。

 僕は光の柱を面白そうに触りまくる白山さんの近くに腰を下ろして息を吐く。流石にもう2時間もダンジョンに潜っているから精神的な疲れを感じる。戦闘数も10を数えるほどとアマチュアで初心者な僕たちにしては数をこなした方だろう。

 しかしそのおかげで装備品は充実した。

 二つ目の《白い布の鉢金》や《白い布の籠手》。それを脚用にした《白い布の脚甲》。そんな無いよりマシな物よりかは防御力が高そうな木?の胸当てに腰当て。それらを一つずつ制服やジャージの上に装備した僕たちはどこのB級コスプレ高校生かとツッコみたくなるような格好になっている。

 だけど僕は武器を《匕首》から《脇差》へ、白山さんは《匕首》から《短槍》へと持ち替えた事も含め戦闘力は初日の無手よりかは遥かに増強されていた。

 特に防具一式装備によりHPの最大値が倍の200になったことが大きいだろう。防具で攻撃を受けた時のHP損傷代理を含めれば死に難さが数倍になったのだから。

 白山さんじゃないけどレベルがそれなりに上がったというわけである。もう餓鬼の通常個体なら数で負けていても苦戦することは無いだろう。


「よいしょ。……なんか不思議だね」


 人一人分の距離を空けて横に腰を下ろした白山さんが言った。


「ん? なにが」

「だってダンジョンにクラスメイトの男の子と二人で来てるんだよ」

「はは、そう言われるとそうだね。僕にとっては将来の仕事場だから地続きで考えてたけど、一生関わり無い人がほとんどだしね」


 関わっても所有地にダンジョンが出来たってくらいだろう。白山さんの家みたいに自分で駆除しようなんて人はほとんどいない。かかる時間もそうだけどわざわざ自分から怖い思いをしようだなんて人は稀だ。


「なんでこんな不思議なのがあるんだろ? 実際に来てみて解ったけど、完全に異世界だよね」

「さあ、それは解らない。不思議すぎて今の科学力で判明できる物でも無いし。中には世界崩壊の前触れだとか神様の仕業だとか言う人もいるけどね」

「あ、知ってる。“エンディングノート”と“オーディアル・コングリゲイション”だよね」

「……うん。それに加えるなら“ギルド”もだね」


 それら三つはダンジョンを廻って過激活動を行う犯罪集団の中でも三巨悪と呼ばれている。前述二つの行動範囲は海外だけど、ギルド、正式名称“冒険者ギルド”は日本が主な活動地帯としているテロリスト集団だ。

 なにせそいつらのせいで冒険者と言う言葉はあらゆる情報媒体で検閲されるほどだ。

 まだ高校生の僕たちが“ギルド”に関わる事はないだろうけど、スイーパーを目指す僕は何れ相対する可能性がある。


「やめよ。言い出したの僕だけどあんまりしたい話じゃないし」

「うーんそうだね。悪い人たちのことを話したって楽しくないね。じゃあもう行く? 私は大丈夫だよ」

「いや、その前にダブった装備品をいくつかパワースポットに還元しよう。パワークリスタルに変わるから」

「なんと!?」


 立ち上がってストレージからダブった装備品を取り出す僕に白山さんが続く。そんな慌てなくてもパワースポットは逃げないよ白山さん?

 取りあえず初めは僕からと言うことで一番余っている白い布シリーズの防具を光の柱の中に放り込む。籠手を3個、脚甲を2個、木?の胸当てと腰当を一個づつ入れてしばらく待つと、光の柱の中からコロリと光る結晶が転がって来た。


「ファンタジー!?」

「ど、どうしたの突然?」


 光る結晶。SI物より小ぶりで光も弱いパワークリスタルを見て白山さんが叫んだ。

 この子ほんとにドンドン壊れて行くな、と若干残念に思いながら僕は言うなれば劣化パワークリスタルを拾い上げてストレージに入れる。


「……ん。これはHP強度UPかな? 効果が低いから焼け石に水だろうけど」

「HP強度UPって?」

「う~ん、白山さん風に言うと防御力上昇になるのかな? 敵の攻撃を受けた際のHP損耗を低減してくれるらしい」


 視界の隅に映るHPゲージを意識して操作してみると、数値の横に-1と追加された。これは僕の意識上で損傷数が1減るって事だろう。


「私も私も」


 当然の如く白山さんが自分の分の余剰装備品を“全部”ポイポイ放り込んだ。

 あ、ああっ。武器は消費が激しい上に無くなったら困るから残しておいてねって言ったのに!

 止めようと手を伸ばした僕だけど遅すぎたようだ。白山さんの足元に在った余剰装備品は一つ残らず放り込まれてしまった。


「出た! あん、でも小っちゃい!」

「……天然物の方が品質が良いってことだね。変換は質の低いのしか出ないって言うから」


 コロンと出てきたパワークリスタルをシュパッと音がするような動作で拾った白山さんは上にかざし見ると残念そうに言った。

 僕のもそうだけど大きさも光も小さい。父さんたちの話だと入れる物が良いほど大きさも光も良くなるそうだから、いづれは良い物も出て来るようになるだろう。


「んん~私のは何だろ? なんか体が軽くなったような? あっ、身体能力UPかな!」


 そう言うが早いか急にシャドーボクシングを始める白山さん。いとうつくしい体がピョコピョコと小刻みに飛び跳ね、シュシュッと可愛らしい拳を繰り出す。


「そうだったらレアだね。効果自体はやっぱり低いだろうけど、なんか白山さんって運良くない?」

「あ、うん。漫画の懸賞とか良く当たるよ! この前はP○VR3当たったし!」


 あ、それ知ってる。廃人量産機って言われてる最新のゲーム機だよね。ゲームをしない僕でもニュースとかで話題になっていることなら知ってるよ。

 しかしまあこの話からやっぱり白山さんがゲーマーだったことが発覚した。ゲーム廃人にならなきゃ良いけど。……ある意味では今なってるのか?


「ふう、やることやったし行く?」

「行くよ! このチカラ試さずにおくべきか!」


 僕はなんか変なスイッチが入った白山さんと共にダンジョン駆除を再開する。

 その後30分くらい探索して更に戦闘を5回くらいこなしたが、今日はもうSIには遭遇しなかった。僕も強めのSNP欲しかったのだけど、今日はもう遅いと言うことで更に30分ほどかけて帰還した。

 明日からはパワースポットを拠点として探索しよう。父さんたちの話ではパワースポットが在るのはダンジョンの中心辺りらしいから次階への入り口は近いはずだ。


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