▶(三十と一夜の短篇第7回)
われわれは弱い。圧倒的に。そのことを痛烈に、思いしらされる。
われわれの意義は、たゆまない奉仕の上に成りたつ。サーヴァント、「奴隷」というのは言葉がわるい。私はいたく、感謝している。この「楽園」をあたえてくれたこと。私の意義を輝かせてくれたこと。結句、多くの同志を得られたこと。二十年以上、実らぬ夢を追いつづけてきた。その夢はいま、これまでになく煌めいている。
慈悲ぶかく残虐きわまりない「神」は不意に、われわれの背中を刺す。心臓を貫く刃。この「楽園」からの追放処分。掟に背いた罪により、「楽園」から存在を抹消される。
私のかけげえのない同志がひとり、「楽園」を追放された。なんのまえぶれも、猶予もなく。ある日、突然に。これまで積みあげてきたすべてのものが、なかったことにされる。焚書という暴虐。この暴虐のまえに、われわれはまるで無力だった。なにもできずただただ、ながめているだけだった。ペンが剣よりも強いのなら、顔も知らぬかれを守れたはずである。かれの文学を。
『黄金よりも何よりも』
『暗闇の中の小人』
『いいえ私は孤独なオカマ』
『渇望をみたす暴虐』
……私の書いた空のレビューが虚しい。あのすばらしい作品たちは、永久に喪われた。完全に再生することは、できないそうだ。
殺されたのが私であったら、どうであろう。精魂をこめたものを葬られてしまったのなら。私はこの喪失に堪えられるのか。
たしかにわれわれは、このサービスを享受している。けれどあまりに一方的な、こんな暴虐がゆるされてよいのだろうか。著作権の抹消など、ゆるされてよいはずがない。盗作や無断転載よりも罪深い行為であるはずだ。執行者に、その自覚はあるのだろうか?
「楽園」を追放されたかれは、あらたな別の「楽園」で再起した。別名義で、新作を発表しつづける。かれは強い。どんなに踏みつけられようと、何度でも甦る。けっして滅びることのない雑草のように、かれは美しい。
私もかれのように美しく、そして強くありたい。