第4章
彼女の話によると、その金持ち夫婦は、最初は悪い人ではなかったらしい。
しかし、引っ越してきて2ヶ月頃から、だんだん険悪な雰囲気になっていったそうだ。
そして、彼女は目撃してしまったらしい。
金持ち夫婦が周りの住人の弱みを握って恐喝しているところを。
そして、彼女の番になった。
桜の場合、実家がかなり裕福な家だということがもう既にその夫婦に知られていたらしく、かなりの金額を要求されたそうだ。
桜の弱みは「人ではない」ということ。
“は?”と思うかもしれないが、思い出して欲しい。
桜は人でもあり、猫でもあることを。
「研究者に知られたくなければ、自分たちの言うことを聞け」と、言われ続けたそうだ。
………いくらなんでも、酷すぎる。
「……桜。取り敢えず、荷物だけ取りに行こう」
「……え、でも……家……」
「家なら、俺の家に住めばいい。
ご覧の通り馬鹿でかい家だし。
今はやってないだけで、もともとはシェアハウスだったんだよ」
「……え…?」
「大丈夫。
今、この家にいないだけで、もうすぐしたら、他にも居住者が増えるんだよ。
そこに便乗して、一緒に住まないか?」
桜は暫く考えた後、こう答えた。
「お願いしますっ!」
「うん、こちらこそお願いします」
お互いにぺこりと頭を下げてから、顔を上げる。
「あ、そうそう。
いくつか言わないとダメなことがあったんだった」
「?はい?」
俺は、桜を信じて、誰にも言わないと信じて、あることを打ち明けた。
「もうすぐ、同居者が増えるって言っただろ?」
「はい」
「そいつらに関して、なんだが……」