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「Beautiful things, beautiful because it is far away」

文化祭が終わった11月の始め。

少し寒くなったが、良く晴れている。お出かけ日和だ。


「で?今日はどこに行くんだ?動きやすい格好で来いって言われただけで何も聞いてないぞ」

「今日は歩くぞー」

「えー…?」

「絶対後悔はさせねぇから、な?」

「…絶対だぞ?」


電車に乗り都会に出る。そこからバスに乗った。だんだん景色が開けてくる。そこに大きな建物が見えてきた。


「今年できたアウトレットだよ。行きたいって言ってただろ?」

「そうかここか。想像はしてたけど結構辺鄙なとこにあるんだな」


バスがアウトレットの前で止まる。大勢と一緒にバスを降りて、店が立ち並ぶ通りを歩いて行く。


「うわー安っ!買いだな」

「買ってやろうか?」

「マジで」

「1万までならな」

「けちくせぇ男は嫌われるぞ」

「うるせぇな、こっちだって給料前なんだぞ。それとも給料上げてくれんのか?」

「いくら私でもそんな権限まであるわけないだろ」

「だったら我慢しろ。買ってやるっつってんだから」

「おk、上限ぎりぎりまで買ってやる」


買い物して、フードコートで昼食。そしてまた買い物。ここぞとばかりにあれでもないこれでもないと花子は品定めをしている。深夜はそれを見ているだけだ。気圧されているようにも見える。


「はー!買った買った!ありがとうな深夜!」

「ホントに1万ぴったりで買ってくるとは思わなかった」

「で、もう夕方だけど晩飯はどうすんだ?」

「ちょっと歩いたとこにいい店があるんだ。そこに行こう」

「もう歩きたくねぇよ」

「ホントに近くなんだ。それに、途中でいいとこがあるんだよ」

「はぁ?」


ふたりはアウトレットを出て、歩道がやたら広い道を歩き始めた。深夜が言った「いいとこ」はすぐに現れた。


花畑だ。一面に色とりどりな花が咲いている。夕日の中にとても映えている。きっと青空の下でもとても美しい景色だっただろう。


「使われなくなった畑に植えてるんだってよ」

「こりゃすげぇな」

「ここ自体は親戚家族が来たときに一回来たことあるんだけど…お前と一緒に見たかったんだ、この景色」

「最近見ることに随分執着してるんだな」

「まぁ近い将来見られなくなるからな」


深夜が苦笑いを浮かべて少しだけ花子を見た。


「目が見えなくなったら、多分いろんなことを忘れていくだろうな。それは苦しいことなのか…幸せなことなのか…」


花子も深夜を見た。不敵な笑みを浮かべている。


「変なことを言うんだな。忘れたってまた思い出せばいいじゃねぇか」

「…そうだな」


笑い合うふたりの間で、深夜が何を思っているのか、花子はまだ知らなかった。

ただ、今この時が楽しくて仕方がなかった。

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