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旅立つ者には祝福を  作者:
本編
28/36

第27話 蘇る炎

 Sランク魔装具。確認されている魔装具の中で3本しかないと言われる、最強にして最高峰の魔装具たち。


 黒の勇者レイトが所有するストレニア王国の国宝の一つにして、伝説の魔装具『アグナの宝剣』

 ギルドの創始者であり、鬼人の異名を持つベルソスが所有する、土属性では最強の魔装具『カンサズの大槌』

 

 そして、かつて王国騎士団の象徴にして、最強最古の炎熱系最強の魔装具。

 かつて『爆炎のガノ』と言われた男が使っていたその剣は、適応者が居ないばかりに地下深くに封印されることになった。

 その事実を知っているのは、国王イェノムと騎士団の上層部の一部、そして魔道学院校長のネセリンだけだ。


 ランクの高い魔装具の使用には、適応者と呼ばれる使用者の登場を待つしかない。

 そこで王国は、徐々にランクが上がり使用者に適応する魔装具を開発しようと考えた。

 それがシンジに渡された『進化する魔装具』であり、そのために勇者を利用した。


 ただ、当初の予定では進化することが確認されれば、回収する予定でSランクまでの進化は計画に入っていない。

 それでも予想を超える形、速さで進化を遂げたのはシンジの勇者としてのポテンシャルに反応した結果だった。

 

 国の貴重な戦力であり、魔装具使い同士の激突は他の追随を許さない。

 そんな魔装具使いに挟まれ、城の外で魔法を発動させるネセリンは動揺した。


「ネセリン……貴様は何をしているのか分かっているのか?」


 ポニーテールに纏められた褐色髪。40を超えてもなお男を惑わすその美貌。2番隊隊長フロリー・サスバルトの迫力は、元隊長のネセリンでも思わず狼狽えるほどだ。


「分かっています。でも、私に迷いはありません」


「今すぐ魔法を解除しろ。さもないと、貴様を殺すことになる」


 フロリーが愛用の魔装具の槍を手に取る。

 王国に忠誠を誓う彼女に、ネセリンは隊長の時代よく怒られていた。

 真面目で規律を重んじる彼女は、王国に反旗を翻した自分たちを許すことは無い。

 それはよく理解している。


「させません。隊長の貴方でもネセリンの邪魔はさせない」


「ルル……どうして二人とも……」


 魔法で動けないネセリンを庇い、ルルがハルバートを手にフロリーの前に立ちふさがる。

 魔装具ではないハルバートでは勝てないことぐらい、ルルも分かっていた。

 しかし、引くことは出来ない。お互いの譲れないもの為に。


「皆さん。おそろいで」


 突然の声。三人が声の方向を向くと半透明の結界を突破し、金髪の男が現れた。

 両手に魔装具の剣を持つその男。元騎士団隊長にして、Aランクの冒険者。


「ヌーイ……貴様もかっ」


 フロリーが吐き捨てるように言った。

 ヌーイは彼女の獣を殺そうかと言う視線に笑みを返し、剣を向ける。


「ギルドのボスの命令で王都に偵察に来たら、面白いことやってるからさ。フロリーさんは邪魔しないよう、足止めさせてもらうよ」


「面白い」


 元隊長の二人が向かい合う。

 10年前の第二次人魔戦争時、二人は魔物領に最も近い最前線で一緒に戦い続けた。

 かつての戦友にして、今は王国とギルドの敵同士。

 

 同じ隊長として共に戦ったネセリンが二人を止めようとするよりも早く、二人は地面蹴り武器を交えた。


















 牢獄から解放されたセイナは、ロリフィに渡された外套と『ある物』である剣を腰に差し、城の内部を走っていた。

 謁見の間に向かったシンジとは違い、二人は城内部に用意された訓練場に向かっている。

 呪われた一族の少女であるロリフィによると、そこにレイトがいるらしい。


 足止めをしているのは、騎士団総隊長のサラドルだろう。

 今の騎士団で黒の勇者を足止めできるのは彼ぐらいだ。


(私は……どうすればいい……)


 かつて父が信頼し、そしてまた父を慕っていた男、黒の勇者レイト。

 彼は今、勇者としての職務を放棄し、王国に牙をむいた。

 騎士団の隊長としてこれは見逃すことは出来ない。


 父であるガノの死の真相を知っている彼に問いただしたいこともある。

 

『父を殺したのは本当にお前か』と


 まだレイトが黒の勇者であり、アリッサが生きていた10年前。

 セイナはよくレイトと模擬戦で戦い、一度も勝ったことは無い。

 今やれば勝つ自信があるが、当時はそれほど力の差があった。


 今では自分が逆にシンジに手ほどきを与える日々。

 徐々に成長するシンジを嬉しく思う反面、レイトもこんな気持ちだったのだろうかと思うこともあった。

 

 父の死に関する情報はセイナも騎士団入団後に調べたことがある。

 しかし、何も出てこない。徹底して隠されていると思えるほど何も出てこなかった。

 そして父が死んだ日に勇者を追跡した100人ほどの部隊も今は誰も残っていない。

 不自然なほど徹底した情報統制。それほど父の死は王国にとって隠したいものだった。

 

 誰が? 何のために? 


 知りたかった。あれほど強い父がなぜ死んだのか。

 

「ここだ!」


 隣のロリフィが勢いよく扉を開けると、そこには向かい合う黒と白。

 レイトはまだ本気じゃないのか、アグナの刀身が黒いだけで

黒の波動を出していないようだ。


「ロリフィ」


「ふむ、セイナか」


 レイトとサラドルがそれぞれ部屋に入って来た二人の少女に気が付いた。

 セイナは二人の顔を交互に見て考える。

 どちらに加勢するべきか、自分が今、どうするべきか。


 自分は騎士団の隊長だ。

 逆賊の勇者を討ち取るのが理性では正しい。

 しかし、シエルを道具として扱おうとしたサラドルを見逃したくない。

 それは間違っていると、ハッキリと言いたかった。


(しかし……私には……)


 セイナにはサラドルに剣を向けるハッキリとした理由が無かった。

 シエルの件にしても、戦争が始めれば勝たないと意味がない。

 その勝率を上げるためにシエルに力を借りる。

 理屈ではわかる。自分が言っているのは感情論だと言うことは……


 そして、自分が今どうするべきなのか……理性で考えれば分かる。

 セイナは腰に差した『ある物』である剣の柄を握ろうと手を近づけた時、ロリフィがそれを制した。


「迷いがあるのに戦ったら死ぬよ。それにアナタって、爆炎のガノの娘なんでしょ? なら知っておくべきことがあるんじゃない?」


「知っておくこと?」


「あんたのお父さん……レイト君の恩人を誰が殺したのか」


 レイトは父のことを恩人と言っていたらしい。

 そんな彼が父を殺すだろうか?

 殺さないと思った。


 だから、今この状況で誰が父を殺したのか。

 直感で分かった。だけどそれを信じることも出来なくて。

 自分が10年間。正義の象徴として信じてきた彼がやったなんて。


「セイナも来たのか……丁度いい。父の形見と共に親子共々葬ってやる」


 サラドルが白い髭を遊ぶ独特のクセをしながらそう言った。

 セイナの腰に差してある『父の剣』に視線を落とした彼は、顔を上げ自分の顔を見て笑った。

 腹の底から、感じたことの無い感情が湧き上がるのを感じる。


「サラドル総隊長……あなたが父を?」


「その通り。ワシは貴様の父が嫌いじゃった。若造の分際で総隊長になった奴がな。クズは死んで同然じゃよ」


 プチッと頭の中で何かが切れる音がした。

 それと同時にレイトがサラドルに切りかかろうと、足に力を込めるのが見える。


「待て! 黒の勇者!!」


 セイナの叫び声に反応したレイトが、動きを止めて自分を見る。


「この男は……こいつだけは……」


 父の形見である剣を力強く握った。


「私が斬る!!」


 剣を鞘から抜くと同時に火花が舞い、爆炎がセイナを包み込んだ。

 爆炎のガノ以来、誰も適応しなかった魔装具は、同じ血が流れるセイナに反応を示した。


「クックック……ガノに比べれば未熟な貴様がワシを斬ると? 己惚れるのも大概にしろ! 小娘がぁぁぁ!!!」


「己の欲だけで騎士団を利用し、戦争で姫様を弄んだ罪、父の仇も含め……貴様に正義の鉄槌を下す!!」


 切っ先をサラドルに向けたセイナが叫ぶ。


「先に行け黒の勇者!」


 その言葉を聞いたレイトは頷き、ロリフィを見た。


「ロリフィ! お前はセイナのサポートだ!」


「りょーかい♪」


 敬礼ポーズをとったロリフィと共に、サラドルと対峙する。


「巻き込まれても知らんぞ」


「コロシアムであたしに負けた人に言われたくない」


 ニッと笑みを浮かべた彼女につられて、笑みがこぼれた。

 そうだ、ロリフィは強い。

 だからこそ、気兼ねなく力を振るえるものだ。


(私も戦闘狂だな……)


 ふとそんな事を思った。













 セイナが目覚めたことにより、サラドルに隙が出来た。

 その隙をついて、レイトは部屋を突破し廊下を走る。

 セイナとロリフィは心配だが、かつてガノが使っていた炎剣が目覚めた以上、負けることは考えられない。


「ガノ……あんたの娘は立派になったよ」


 小さく呟いた声は、喧騒に包まれる城の中では誰にも届かなかった。


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