プロローグ
彼女は嘘を吐いている。
幼馴染だから僕には判る。
彼女は嘘を吐いている。けれど、どんな嘘かまでは判らない。
彼女は嘘を嫌っているし、他人を騙して喜びに浸るような人物では決してない。そもそも彼女が嘘を吐く場面なんて初めて遭遇する。彼女のことだから必要に迫られてということなんだろう。
問い詰めることも考えた。
大声を張って、暴力を振るって、彼女が隠している本当のことを喋らせることも考えた。
けれど、頑なな彼女はいわないだろう。
彼女が嘘を吐いている。と判ってしまうと同時に、決してその内容を彼女が僕に教えることはない。ということまで判ってしまう。
だから、僕は彼女の拙い、嘘を吐いていないという演技に騙された振りをして毎日を過ごしている。
僕自身も嘘が下手で演技もできないから、傍目から見れば、随分と滑稽な二人に映るかも知れない。
一つの嘘はそれを守る為に、より大きな嘘を吐き続けなければならないのが常だ。彼女が諦めない限りそうなるだろう。
僕は騙されやすいし、頭の回転が悪い。一つの嘘を守る為に彼女が他のどんな嘘を吐いているのか、それすら判らなくなってくる。
どれが嘘だか判らないということは、どれが本物か判らないということだ。
それでも僕らは一緒に居続けた。
彼女は嘘を吐いている。
それだけは終始、僕には判っていた。
もう出来上がっているものなので、短期間に、ずらずらとあげていく予定です。
感想やアドバイスなどありましたら是非。
以上。