予期せぬ出会い
今まさに村に我々の部隊を進めようとしたところ、何かが現れた。砂嵐が数秒続きそこにフードの奴が村人を守るように立っていた。
(なんなんだ、あいつは・・・)
イージオ軍第29部隊を率いるヴォルク・ファルガーはただ立ち尽くした。
「隊長!どうしますか?」
副隊長が命令を待っていた。周りを見ると部隊全体を何やら異様な空気が取り巻いていた。これでは戦う前に終わってしまう。
(部隊の士気を高めなければ)
「我々はイージオ軍第29部隊この村を統制すべくきた。わが名はヴォルク!お前はなんだ!!」
部隊の不安を吹っ飛ばすが如く威厳ある声色で相手をけん制する。はずだった。だがフードは全く動揺していなかった。それどころか、村人達が急に騒ぎ出した。
「なぜあなたが?今は緊急事態じゃ。おぬしはこの村の者ではないし、何もここで命を落とすこともない!」
村長らしき老人がフードに向かって語る。と、村人の中から年頃13、4の少女が出てきた。
「あ、あんたこんなところで何してんのよ!今朝勝手にいなくなっておきながら今頃帰ってきてヒーローにでもなるつもり!?」
そう叫んだ。だがフードは動こうとはせず、言葉すらない。
(なんなんだこいつは)
「おいそこのフード!名はなんという!お前は敵か?」
そう言うと相手の出方を待った。もし敵というなら全力で排除しなければならない。数秒の沈黙があり、
「俺は黒。」
ただの一言。だが違和感があった。声が変なのだ。複数の男女が一度に話しているような声だ。それにブラックという名前(?)だ。これは名前というよりもコードネームといった方がしっくりくる。あごひげをなでながら思考していると
「た、隊長・・・」
「ん、なんだ?」
「剣を抜きました。どうしますか?」
(何のことだ?)
そう思いながら兵士たちの向いている方を見ると、フードが剣を握っていた。
(それがお前の答えか)
「先攻隊!奴を殺せ!」
そう言うと同時に5人が動きだす。村人の間からはもう期待の空気はなく静まり返っている。
「これでわしらの村も終わりだ。あのフードの人一人じゃどうしようもならん。」
そんなことを言っているのが聞こえる。それも仕方ないこちらは46人の精鋭部隊だ。そこらの村が太刀打ちできるものではない。
(キンッ)
(ぐあっ・・・く)
「なんなんだお前は!!」
そう叫んだのは先攻隊の一人だ。その先にはフードがいて、
「なっ・・・」
残りの4人が奴の周りで膝をついている。剣で体重を支えているようだがしばらく動けないだろう。遠目でも苦痛に歪む顔が見て取れる。
(くそ!なんなんだ・・・あいつは・・・)
おれは奴をもう一度見て絶句した。フードの下からのぞかしている仮面。黒く、両目があるだけの仮面。
「なっ!お前、ノーフェイスか!!」
俺は叫んでいた。
「おい、副隊長。撤退するぞ。」
すかさず隣にいた副隊長に告げる。
「どうかされたのですか?」
「あれとは戦うな。命がいくつあっても足りん。奴はノーフェイスのブラックだ。」
「ノースフェイス?一体どのような部隊なのですか?」
「奴らのことは一部の人間と先の大戦で戦ったことのある者しか知らん。ノーフェイスというのは誰もあの仮面の下を見たことがないからだ。それに声もな。奴らは虹色部隊とも言われていた。あの仮面は一人一人違っていて虹の7色、黒、白。それぞれが最強を名乗っていいほどの実力者だ。だが奴らは大戦時に常に中立を守り最後の戦いでは帝国、イージオ両軍数万の兵に9人で挑んだ。だがその際に全滅したと聞いていたが。よもや生き残っていたとは。」
最後の方はしっかりとした説明ができず副隊長もあまり分かっていないようだった。俺は苦虫を噛みつぶしたように語った。
「とにかく撤退だ。」
そう言ってその場を後にした。