一刻
私はまだ重たい目をこすりながらベッドから起き上がった。昨日はいろいろなことが一度に起き過ぎて疲れえてまだ頭はぼーっとする。それにしても昨日の晩は何を話してたんだろ?キッチンに向かいながらそんなことを考えていた。あの少年は結局何だったんだろう?
「おはよーお父さん」
「おー娘よ。今日もきれいだな!今日も元気かー?」
背景にキラキラが見えるぐらいの満面の笑顔を向けていつもの決まり文句を言う父に少しうなだれながら昨日の少年のことを聞いた。
「あぁ、彼なら今朝早くに出てったよ。なかなか面白いやつだったな。昨日なんて女という生き物についてのことから始まってやっぱ肉は鳥が一番だな、というところにたどり着いたんだよ!」そう力説する父を横目にあきれながら父の話を流していた・・・。
「って、え!もう出てったの?なんで・・・まだお礼も名前も聞いてないのに・・・」
「さあなぁ・・・なんでかなぁ・・・」
首をかしげながら父は答えた。
* * *
俺は「ありがとう」と置手紙をして晩飯をごちそうになった家を後にした。正直とても居心地のいい家だった。村もそんなに大きくないのにとても暖かい雰囲気を出していた。「あーあ、もう少し長居すればよかったかなーでもまぁしょうがないか・・・」
山道を数分歩いたところで、森がやけに静まり返っていることに気が付いた。
(なんなんだよこれ・・・)
鳥のさえずりも動物の動く音も聞こえなかった。俺はその場にしゃがみ地面に耳を付ける。かすかだが(ザッザッザ・・・)と数十人が歩く音が聞こえる。そう遠くはない。が、ついさっき俺がいた村に向かっている。農村であるあの町に攻め込まれては数時間ともたない。
「くそっ」
俺はすぐに来た道を全速力でかけだした。数分すると村の入り口の門が燃えているのが目に入った。
(遅かったか・・・いやまだだ)
そう胸の中で言い聞かせ走り出した。