好きな色
紅桜です。
少しシリアスっぽくなりました。
「ごめんね。茉歩」
母が言った転校という言葉に、僕は何も思いはしなかった。それは何度も何度もそれを繰り返した結果の慣れ。それに、別れを惜しむような友達なんていないから、新しい友達ができることなんてないだろうから。
その原因はわかってるし、無くすことだって簡単だ。でも、僕はそれをしたくなかった。鏡に写る真っ青に染められた髪。同じ色のカラーコンタクトが入った目。大好きな空と同じ色の髪と瞳。何度転校先で友達が出来なくても、変えることはなかったし、変えるつもりもない。この色を手放すつもりはない。誰も認めてくれなくても、僕が自分自身で決めたことだから。
「はじめまして。新峰 茉歩です。」
やっぱり友達なんてできなかった。みんな怖がるからやっぱり僕は屋上にいた。少しでも、怖がらせないですむように。屋上からもう一段高いところに登って、小さな花瓶に花を一輪挿して空を背景にスケッチしていた。背景にもう少し何かいれたくなったからふぅ、とシャボン玉を吹く。ふわふわと漂うシャボン玉はやっぱり綺麗で、消えない間に、と鉛筆に手を伸ばした。だけど、
「……あっ。」
うっかり、消しゴムを落としてしまって手を伸ばしたけれどそれを掴むことはできなくて、さらに花の入った花瓶を落としてしまった。
「あ……。」
ガシャン
カラカラカラ……
あぁ、割れちゃった。
「危なっ!」
え?人の声?僕が来た時は誰もいなかったけど……あ、絵に夢中になってたのか。って、下の人無事かなぁ……?
上から覗きこんだそこにいたのは黒い髪をした綺麗な人だった。
続きます。