プロローグ
―――プロローグ
むかしむかし、あるところに、すべての願い事を叶えた王さまがいました。
王さまはとても傲慢で、慈悲深く、誰よりも優しい人でした。自分が誰よりも王さまに相応しいと疑わなかったし、けど、それ故に民の願いを叶えるのもまた王さまだと述べていました。誰よりも優しく、誰よりも強く、王さまはあり続けました。
そんな王さまは心の欲望に誰よりも忠実でした。自分が欲しいと言ったものは手に入れました。すべての欲望を、願いを、叶えるだけの力があったのです。
手に握っていたのはひと振るいの剣でした。
その武器はどんな武器よりも強く、王さまが心から願えばどんな願い事も叶える、魔法の剣でした。
願いを叶える剣と、願いを叶える器はすべて王さまが持っていて、王さまはそれを使って次々に願い事を叶えていきます。
時には愛した人の命を救い、時には多くの人民の為に金を作り出し、時には恵みの雨を降らせ、時には大きな混乱すらも抑えてしまいました。
王さまを中心に世界は回っていました。そう、何ひとつ不自由なく、命の危険にさらされる事もない。皆、笑いながら暮らしていたのです。
……だけどある時、ひとりの愚者が現れたのです。
愚者は王さまの力を独占したいが為に、王さまを暗殺しました。どんなに強い王さまも自分の家族に殺されるとは思ってもみなかったのです。
王は死に、願いを叶える力は愚者の手に渡りました。心の力は闇に染まり、暗黒がこの世界を包み込みました。太陽の光は届かず、ひたすらに暗黒。不安と疑心暗鬼に陥った人々は争いを始めて、いつしか世界は混沌と化していたのです。
王さまの側近に、七人の魔法使いがいました。
魔法使いたちは言いました。
「混沌の世界を切り離し、心の力を封印しよう」
すると七人の魔法使いたちは暗黒の世界を切り離し、幾つかの大陸にしました。多くの人が争わぬよう、切り離したのです。
そして暗黒の力に七人の魔法使いは立ち向かい、愚者を打ち倒し、心の力の封印に成功しました。
ですが心の力とは、人間誰しも持っている「欲望」の力。そう簡単には封印する事はできません。王さまの願いを叶え続けた欲望の力は膨大で、とても全てを封印するのには大き過ぎたのです。
いつかその力は滲み出て、多くの人間の心を試すでしょう。
真に強い力を持った人間を新たな王さまとして迎える為に。
願いを叶える王さまを選ぶ儀式。