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5歳での入店

「そっちにいたか?」


「いや!いない!」


「良く探せ!絶対に見つけ出すんだ!!」


 真昼間の街はいつも活気に賑わっている。


 商売のしやすいサンディアでは、なおさらだ。


 しかし、今の状態は、良く知られているいつもの状態とは少し違う。


 騒いでいるのが、屈強な体に鎧と剣を身に着けた、男達。


 もっというと、傭兵、いや、家紋のようなマークが付いているのを見ると、どこぞの貴族の私兵だろう。


 そういった奴らが、昼間の街を駆け巡り、大声で怒鳴っているのだ。


 全く、迷惑な話である。


「くっそ!おい!見つけたか!5歳くらいの男のガキだ!服装は平民のそれ、ナイフを腰に差してる!!」


「んな奴、一体何人いると思ってんだ!!普通にいくらでもいるぞ!!もっと特徴ねえのか!!」


「燃えるような赤毛で、兎に角滅茶苦茶強ええってしか分かってないんだよ!!とにかく早く見つけて、ワルガー坊ちゃまに引き渡そうぜ!!じゃねえと俺らが怒られる!!」


「坊ちゃまじゃなくて、父親のアーホイ男爵にだろ?全く、ついてないぜ。そんな条件でどうやって探せつーんだ。下手に偽物捕まえでもしたら…ああ!考えるだけで恐ろしい!!」


 どうやら、何かの理由である条件の5歳の男の子を探しているらしい。


 男爵と引き渡す、そうしないと怒られるという単語から、貴族が関係する物騒な話のようだ。


 こんな時の町人の反応は決まっている。


 目を伏せて、我関せずと、下を見て嵐が過ぎるのを待つのだ。


 時が解決してくれる。元は商人達の街であり、現在でも成り上がりの多い街。だからこそ、厄介事は、時間が解決してくれる。触らぬ神にたたりなし。そう、知っていた。


 たとえ、どんなに激情に駆られても、それは年単位では持ちはしない。


 時間と共に、捜索やそれに伴う人件費で金が減り、気が付くころには探す事も出来なくなっている。


 現に、アーホイ男爵の財産は、あと数か月程でこの捜索が出来なくなるほどの金しか残っていなかった。


 本来なら、捜索を続ける為に民から搾取すれば良いだけの話。


 善し悪しは除いて、そうすれば解決できる。


 しかし、それは此処、サンディアでは『破滅』を意味する。


 元々、ここは力の弱い商売人たちが集まり、商売を誰にも邪魔されずに、自由な、けれども規律を守った倫理ある商いをするためにできた国である。


 そんな彼らだからこそ、商売の元である、農民や狩人、職人等、一次産業者を手厚く保護するのがこの国では常識だ。彼らがまともに暮らせないようでは、商品など無く、商売ができずに己の首を絞めるからだ。


 すなわち、サンディアと言う国において、民に、特に一次産業者に、特別な理由なく重税を課したり、不当な扱いをすることは固く禁じられている。


 罪を被せるなど、言語道断だ。


 税の増加など、やむおえない場合は、事前に説明し、その埋め合わせも必ずするというのが、サンディアでは当たり前であり、サンディア貴族の責務である。


 これは、よそから来て、サンディアの貴族となった者にも当てはまる。


 ヒデラから来たアーホイ男爵もまた、その鉄の掟を破る事は許されず、破れば、最悪ほかの貴族全員が男爵と手切れにし、矛を向け、国民全員が男爵領地限定でヒャッハーパーティーするだろう。


 それくらい、民を正統な理由なく苦しめる事は、固く禁ぜられているのだ。


 それはアーホイ男爵も理解している。


 故に、予算ギリギリまで使って今回の、息子であるワルガーを瀕死の重体にした下手人探しに全力を注いでいたのである。


「くそ、何処を探せばいいんだよ…」


 アーホイ男爵の私兵隊の一人である若い男がそう呟いた。


 既に結構な人数で捜索しているのに、全く見つからない。


 しかも平民であるというなら貴族の怖さは知っているはずだ。


 サンディアは民に甘いと言われているが、実際は違う。


 確かに、手厚い保護をしているが、それは自分たちに有益な民にだけだ。


 犯罪を犯せば厳しい処分が待っているし、職に就けない者には期間付ではあるが強制労働をさせる事もあるという。


 根っからの商人が多いサンディア。お得意様には優しくするが、それ以外、もっというと利益にならない相手には厳しいという、商人の性質が如実に現れている国でもある。


 故に、そんな国で貴族の子息を瀕死状態にすればどうなるか。平民ならすぐわかる事だ。


 きっと、もうとっくに逃げただろう。探すだけ無駄だ。そう、彼は本気で思っていた。


 その時。


「!なあ!アレ!そうじゃないか!?」


「あ?」


 組んでいた私兵仲間が、指を指した。


 指さした方向は、ある通りの路地裏。


 そこには、一人のフードを被った、小柄な…それこそ、子供位の大きさの奴が歩いていた。


「こんな真昼間にフードで、路地裏。そして、あの体格…こりゃ間違いねェぜ!!」


 そう言って、走りだし、今にもそいつに飛びかかりそうになった同僚を。


「ふん!!」


「ぐげ!?」


 青年は、一撃で黙らせた。


 走ろうとした足を払って。


「な、何すんだ!?ま、まさか手前!!手柄を横取り…!!」


 文句を言ってくる同僚に、彼は、冷ややかな目で言った。


「馬鹿。ありゃちげーよ。ってかあれに関わるな。色々めんどくさくなる」


「ああ?」


 何を言っているんだという目を向けてくる同僚に、彼はため息をついて説明してやった。


「良く見てみろ。あいつの足を」


「足?」


 そう言われてみてみると、フード付きのコートの下から、何か見えている。


 靴だ。まあここまでは良い。


 問題なのは、その靴が全体的に錘を仕込んだ金属で作られた超重量のブーツであったことだ。


 そんな靴を履いて移動できるのは、相当鍛えた大人の男でも難しい。


 つまり。


「ありゃ、ドワーフだ。しかも、かなりの腕前みたいだな。ほら、前から見たら気づきにくいが、後ろから見たら良く分かる。背中に背負っているのは、かなりの重さの斧だ。アレをあの体格で操れるのはドワーフだけだ。完全に人違い…いや、種族違いだ」


 と、そんな話をしていると、件のフードを被った奴が、彼らの方を向いた。


 その時、顔がばっちりと見えた。


 たくましい顎鬚に、本物の鷲を連想させる鷲鼻。


 顔には傷もいくらかあり、歴戦の戦士の顔つきで、眼は全ての物を射抜くような鋭い眼光であった。


 余りの迫力に、思わず、二人がゴクリと唾をのみ、冷や汗が流れる程の貫禄があった。


 いや、ひょっとしたらさっきの話を聞いて人間の子供に間違われたのを怒っているのかもしれない。


 その様子を見て、二人はお互いを見た。そして。


「な、なあ俺の落とした金貨、見つかったか?」


「い、いや、もうちょっとそっちに行ったんじゃないか?」


 小芝居で、知らんふりを決め込んだ。


「…」


 それを見たドワーフは、何も言わずに再び進路方向を向いて歩きだし、町の裏路地の奥へと消えていった。


「…ふぅー助かった…」


「だ、だから言ったろう。関わると碌な事にならないって。ドワーフは気が短くて起こりやすい上に強いんだから…まさかあそこまで強そうな奴とは思わなかったけど…」


 そう言いあって、二人はその場に座り込んでしまった。よっぽど怖かったようだ。


 さて。


 その頃、路地裏に消えたドワーフはというと…。


「…ここまでくれば、良いですかね」


 その風貌に似あわない、品を感じさせる敬語を言うと。


 次の瞬間、その姿を大きく変えたのであった。


 まずは、鷲鼻。手で触り、左右に決まった角度に振って引っ張ると、スポンという音をたてて、鼻が取れ、その取れた所からは、人間の鼻が出てきたのである。


 次に、顎鬚を二、三度横にずらして引くと、これまた簡単に髭が外れ、髭一つない、むしろ幼い肌が露わになった。


 そして、ポケットから出した布で顔を擦ると…。


「ふー。やはりサリーヌは腕がいいし、教えも良い。『化粧もたしなむと世界が変わるわよ?』といって教えてもらいましたが、変装にはピッタリですね」


 そこには、変装を解いたクリス・ウォーカーの姿があった。


* * * 


 やあやあやあ。


 どうもお久しぶり。クリスです。


 メリーちゃんとロリーちゃんとのお話しが終わり、頼まれたことは至極簡単。


 『サーカス団員と飲みに行ったメリーちゃんのお父様を見つけ出す』。


 それだけなんですよね。ええ。


 しかも、国にいるサーカス団は家のサーカス団のみ。当たり前ですけど。


 そして、こんな時間に飲める人間はサーカスの団員でも限られます。ぶっちゃけ、飲みにいってるのは実質一人しかいません!!後は皆、サーカスでの練習や手伝い、お茶会に出ていますから。


 故に、彼女のお父様と飲みに行った団員もだれか分かりますよね?


 はい。私の父です。


 …。


 …あーもう。あの父上は…。


 これはもう、ケジメ案件ですね。


 いえ、飲むのは別にいいんですよ?ただ、相手の都合も考えて誘いましょうよ。


 そのせいで、年端もいかないメリーちゃんやロリーちゃんに危機が迫ったんですから。


 …?私ですか?いえいえ。私これでもサーカス団員ですので。


 自分の身くらい守れますよ。ええ。


 まあ、家のサーカス団にいる方々にはまだ勝てませんけどね。それくらいのレベルの相手なら、速攻で逃げます。三十六計逃げるにしかずです。はい。


 …さて。


 ではその抗議も含めて、さっさと父上を見つけてさっさと母上達に引き渡しますか。


 慈悲などありません。ええ。それと、メリー嬢の父上も見つけますかね。約束ですから。


 あ、ちなみに二人はまだあそこの喫茶店に隠れてますよ。あそこなら見つかりませんし、どうこうはできないでしょう。だって…


 あそこ、闇賭博してますからね。衛兵もそうですが、貴族とかにも関わり合いにはなりたくないんですよ。あそこの方々は。


 それ故に、わざわざあの二人を引き渡す事も、二人の素性を探る事も、二人に何かすることもしません。


 彼らはそういった事とは無縁に、静かに密かに賭け事を楽しみたいだけですから。


 故に、僕の行動はマナー違反です。緊急事態とはいえ、二人を連れて行って匿ってもらいましたからね。それに、変装用の小道具も少々お借りしましたし。



 まあ、その礼も込めて多目にお金を払ってるんですけどね。



 結構持ってるんですよ?栽培が順調でして。


 ああ、ちなみに、賭博の事を知ったのは連れて行ってもらったからです。サーカスで変身芸をする狼男のランウエイに。


 彼は、狼男に変身できる人狼族なんですが、金遣いが荒いのと、大のギャンブル好きでしてね。


 ギャンブルを数学として好きな僕と話が合うんです。それで、前に一緒に連れて行ってもらってその…まあ、ビギナーズラックを少々。


 それから、度々連れて行ってもらってる感じですね。僕は子供だからお小遣い程度で良いって言うんですが、彼曰く『仲間にはちゃんと報酬を払うのが掟だ。それを破った者には罰が下る。お前の為ではなくて、俺の為に貰ってくれ』と言われたら受け取るしかありませんよ。うん。


 さて、そんな訳で二人の存在は無事なのですが、速いとこ済ませる事にこしたことはありません。


 変装も解いたし、行くとしましょう。


 飲んだくれたちの、楽園ユートピアへ。


 そう。


 丁度、目の前にあるお店とかね。



 異世界の飲み屋。うん。楽しみだ!


* * * 


 扉を開けたそこは、まあ、普通の酒場ですね。


 外見は、西洋の古い屋敷のような、もしくは、森にある小屋のような外見でしたが、中身はいたって普通です。


 まあ、酒場の普通ですので。


「ひいいいいいいいいいはああああああああ!!!」


「おーい!追加持ってきてくれー!!」


「こっちは料理だー!!じゃんじゃんくれー!!」


「何だとコラァ!!やるか!!」


「おう!今日こその面、ぶん殴ってやる!!」


「いいぞーヤレヤレ!!」


「喧嘩だ喧嘩だ!!賭けろ賭けろ!!」


 うん。


 良い酒場ですね!!


 酒場はこうでないと!!


 これでこそ酒場です!!


 それにしてもいい匂いだ。


 お酒としては、ビール系が多いようですね。


 それも下面発酵ビールでしょうか?


 ビールのにおいの成分が、


 脂肪族高級アルコール100ppm、

 

 芳香族アルコールが50ppm、

 

 揮発性エステルが40ppm含まれているみたいですし。そのようですね。


 下面発酵ビールは、低温性酵母を使い低温で発酵させて、長期間熟成させ、発酵が終わると酵母がタンクの底に沈降するため、下面発酵と呼ばれているものです。


 19世紀の産業革命以降、世界的に主流となっているビールはこのタイプですね。機械式の冷蔵庫・冷凍庫が発達した元の世界では、一年を通じて加工・保存しやすいこの醸造方法が主流です。


 すっきりとした味わい、キレのあるビールを生みだしやすく、好きな方も多いのではないでしょうか?


 おそらく。冷蔵庫・冷凍庫の代わりに、氷魔法などを使っているんでしょう。


 とにかく、美味しいビールが飲める。それだけでいいのです。



 まあ、僕は基本、ビールよりも、ワインや日本酒の方が好きなんですけどね。



 ビールだと、ちょっとお腹で炭酸が膨れてあまり飲めないんですよね。


 一回だけ飲んだロシアの店の黒ビールは、度数の方の問題で、飲めませんでしたが。


 あんなの飲めるとは、さすがロシア人。ウオッカが飲めると飲めないかで戦争に勝つか負けるかが決まる国は他にないでしょう。


 あ、もちろんイタリアは除きますよ?世界大戦中にパスタを改良したイタリアは、全ての食通の誇りです。


 と、いけませんね。ここでビール談義をしていても始まりません。


 はやく、父上とメリー嬢の父上を探しましょう。


 母上から教わった場所は此処であっているはず。どこかほかに行っても、特徴を言えば分か…りますね。すごく。


「ぐ~ぐ~ぐへへへへ。レベッカ~クリス~愛してるぞ~ZZZ」


 はい。


 いました。


 わが父。ジョン・ウォーカーです。


 全く。


 酒は飲んでも飲まれるな。と言うのに。


「父上、父上、起きてください。帰りましょう。母上が呼んでいます」


「ZZZ~ん~わが天使の家族たちよ~僕を深き眠りに誘いたまえ~ZZZ」


 駄目だこりゃ。

 

 ここまで酒に酔っていると、色々と酒について考えさせられます。



 酒と女と歌を愛さぬ者は一生阿呆で過ごすのだ。


 Byマルチン・ルター



 責められるべきは酒を飲むことではなく、度を過ごすことだ。


 Byジョン・セルデン



 酒の害は酒が毒だからでなく、すばらしいが故につい飲み過ぎるからだ。


 Byエイブラハム・リンカーン



 酒は人間を映し出す鏡である。


 Byアルカイオス



 私は人生を忘れるために酒を飲んだことは一度もありません。

 逆に人生を加速させるためなのです。

 ただ加速しすぎると、カーブを曲がりそこねます。


 Byフランソワーズ・サガン



 酒は一番いいですね。酒というのは人の顔を見ない。貧乏人も金持ちも同じように酔わしてくれるんだ。


 By古今亭志ん生



 酒は何も発明しない。ただ秘密をしゃべるだけである


 Byシラー



 食前、食後、そして必要ならば食間に、タバコやアルコール摂取することは、絶対的な儀式として自分の人生のルールに盛り込まれている


 Byウィンストン・チャーチル



 酒をおいしく飲めないところに良い人生もない


 Byベンジャミン・フランクリン



 アルコールは人間にとって最悪の敵かもしれない。しかし聖書には敵を愛せよと書いてある。


 Byフランク・シナトラ



 思いつく限りでも、こういった言葉を偉人たちも言っていますしね。


 酒は、ほどほどが一番。そういう事です。


 さて、父上は見つけましたが、メリー嬢の父上は…どうやら、席を外しているようですね。


 父上の隣の席に、上着を掛けています。普通のモノに見えますが…作りはそうでも、生地や素材が超一級品です。見ただけで分かりますよ。サーカスでは色々な人を見ますからね。その装飾品や化粧、服、それらの素材まで見えるんです。それと合致していくとおそらく…。


 …恐らくですが、伯爵階級よりも上の方が着られていた服の素材と合致します。


 ええ。ほぼですが、合致です。この服の持ち主は、かなりの上流階級の方でしょう。


 …え、まさか本当に?


 いや、そうは考えていましたが、まさか実際にそうなるとちょっと緊張してきますね。


 大衆酒場で、普通の服を着て父上と飲んでいる事から、気さくな方、身分にこだわりのない方、相手にあわせられる器の大きい方と見えますが…。


 それでも緊張します。粗相のない様にしないと。


 って、それなら寝てる父上もまずいですよね!!お、起こさないと!!


「父上!父上!!起きてください!!父上!!」


 だ、駄目だ!!完全に寝ている!!寝言も言わなくなったぞ!!


 ど、どうする?激痛のツボでも突きますか?しかし、騒ぎを起こすわけにも…。


 そう、考えていた時でした。



「ふん!まだ見つからんのか!!そのガキは!!」


 

 誰かをしかりつけながら、一人の中年男性…いえ。


 おそらく、貴族、階級としては男爵位の男が入ってきました。


 何故わかったか?さっきの服と同じですよ。

 

 身に着けているものやその素材で、大体見当は付きます。


 その男の顔は、怒り。怒ってますね。発言から、子供が何かして、被害を被った。その為に探していると言った所でしょうか。


 『まだ』と言う所から、どうにもずっと探させている様子。


 そして、入り口から見えている、起こられている相手の服装は…ふむ。町を駆けずり回っていた男たちみたいですね。


 つまり、狙いは私か。


 よし。


 隠れよ。


 それしかありません。


 ここで騒ぎ起こすのは、得策ではないので。


 さっさと隠れてやり過ごしますかね。


「全く、本当に使えない奴らだな!私はここで飲んでいるから、さっさと見つけて来い!!」


「で、ですがアーホイ男爵、ここにはそんなガキ大勢いますぜ。それを見つけて来いというのは、ちょっと…」


「うるさい!絶対に探し出せ!!ただ、偽物だけは連れてくるな。それをするとめんどくさいんだこの国は…ったく!平民が強い国など間違っている!!何のための貴族だあッ!?」


「ああ!ご、ごめんなさい!!!」


 何が起きたのか、一部始終見てましたよ。


 お酒を持ったウエイトレスのお姉さんが、アーホイ男爵と呼ばれる男にぶつかり、お酒を掛けたんです。


 まあ、悪いのは男爵ですがね。進路方向にいきなり進み出ると、お姉さん躱せませんよ。


 で、それを笑って許す御仁には見えない。みるみる顔を赤くして怒ってますしね。


 これは、良くない。


 おそらく、次の行動は力任せにお姉さんを突き飛ばし『何をする!!平民風情が!!』と言って、更に魔法を撃ちそうです。


 暴力だけでもいけないのに、魔法はもっといけない。あの至近距離なら、最悪死んでしまいます。平民に術はありませんしね。


 なので。


 止めさせていただきますよ!!紳士として!!


 そう思った私の行動は早かった。


 近くのテーブルにあった、スプーンを手に取ると、素早く投擲の構えに移行。


 鍛えた体は即応え、理想のフォームから力強い投擲を実現してくれます。


 狙うは、お姉さんを突き飛ばそうとする、男爵の左耳。


 そこにスプーンをインして、その衝撃で三半規管を来るわせ、倒します。


 投擲から着弾まで、約0.2秒!!


 射線クリア!!


 この距離、このコースならいける!!


 そう思って!


 思いっきり!足を踏み込み!!


 その勢いを、体全体で加速させ!!


 最高スピードを乗せた威力満点のスプーンを放つ!!! 



 ハズでした。


 

 ええ。



 その筈が。


 

 思わず、急停止しましたよ。



 もう少しで、当ることろだったので。



 …何にかって?



 それは…。



「フォオオオオオオアチャアアアアアアア!!!」



「へブラァ!?」



 アーホイ男爵に、全体重を乗せた飛び蹴りを食らわせた。



 私の父上にです。



「おめにひひsしんjきjpうぇじょもじじ@@いsm;あああああ!!!」



 ええ。



 完全に酔ってますね。



 …色々言いたい事はありますが。とりあえず。





 父上。かっけえええええええええ!!!





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