第90話:最高のもてなし
緩やかな通路を抜けた先。
石畳が整備された円形のホールには、静かな光が満ちていた。
そして、そこに──いた。
スモーク演出、スポットライト、完璧なタイミング。
──例の男が、中央に登場する。
「──よくぞここまで辿り着いた!」
背中のマントがバッと翻り、両腕を大きく広げる。
その姿は、まるで舞台俳優か何かのようだった。
「ここに足を踏み入れた人間は、貴様らが初めてだ……!
だが──しかし!! これで終わりではない!!」
「うわ、きたきた……」
「フラグ立った……最終戦……?」
息を呑む、まどかといろは。
▶ 壮大なBGMが聞こえる……
▶ ラスボス感は満点
▶ ちょっと楽しみになってきた
男は高らかに叫んだ。
「そして、ここからが……本当のパーティーの始まりだ!!」
ズンッ!!
彼の足元に配置されていた、なにやら巨大な物体。
白い布を掛けられたそれに、彼は片手をかざすと──
バサッ!!
布を取り払った。
「……え?」
その下に現れたのは──
豪華すぎるディナーセットだった。
煌びやかな銀の食器、温かそうな料理の数々、
そして卓上に飾られた文字列。
「『ようこそ、まどいろ』『WELCOME!』……?」
▶ ……ん?
▶ えっ、敵じゃないの?
▶ パーティーってもしかして……
▶ あの演出でごはん出てくるのは草
「さあ、早く席に着いてディナーを食すが良い!」
男は腕を広げ、きらきらした目でこちらを見ている。
「最高のもてなしを用意すると……確かに言ったであろう!」
「……言ってた気がする」
「うん……演出のとき、確かに……」
あっけに取られながら席に着くふたり。
一瞬の警戒もあったが、料理に毒などはなかった。
そして男は、急に口調を崩す。
「いや〜やっぱ本物は違うなー。普通クリアできないんだけどなー、ウチのダンジョン……」
「おい、素が出てるぞ」
「おぉぉ! 生まどにゃんのツッコミいただきました!」
まどかは苦笑しながら、静かに言った。
「……わかった。こいつ、私たちのファンだ」
「しかも拗らせ方が斜め上すぎる……!」
▶ ただのガチファンだったwww
▶ なるほどそういうことかw
▶ わざわざダンジョン作って招待してくるのは重い
食事の後は、どこからともなく取り出されたお土産袋を手渡され、
「今後も期待してますッ!」という満面の笑みとともに、
ダンジョン入り口までしっかり転送してもらった。
出口でふたりが顔を見合わせる。
「……なんだったんだろう、あれ」
「ファンの全力って、すごいね……」
▶ 最終戦の肩透かしw
▶ でもなんか嫌いじゃない
▶ 調子に乗って第2弾が来そうw
▶ ……なんだこのオチ?
こうして、人工ダンジョン攻略編──
予想外すぎる“もてなし型ラスボス”によって幕を閉じた。
そして次の冒険が、また始まる──!
これにて第3章終了。
本日はもう1話、第4章のプロローグまで更新します!




