第87話:マグマの洪水、ノアの宝箱舟
床から徐々に上がっていくマグマの水位は、部屋の高さの中央あたりまでたどり着いていた。
まどかといろはは、ほとんど直感で飛び込んだ宝箱の中で、肩を寄せ合うように身を縮めていた。
「これ……正解、だったんだよね?」
「もう、そうであってくれって感じ……!」
▶ マグマに飲まれずにはすんだけど……
▶ こっからどうすんだwww
▶ そのまま天井までたどり着くんじゃ……
しかし突然、ギシッ……ゴゴゴ……と不穏な音。
宝箱が、ぐらりと揺れる。
「え、なに……動いて──」
「うわああああああっ!!」
ドンッ!
浮いた宝箱は、壁に現れた横穴に吸い込まれるようにして滑り込んだ。
そのまま──
「え、待って、斜面!? これスライダーじゃん!!」
「ぎゃああああああああああああ!!」
宝箱ごと、急傾斜の下り通路を猛スピードで滑り落ちていく。
まるでマグマ製のウォータースライダー。
熱と振動で体が跳ねるたび、ぶさかわが「キュッ!」と叫んだ。
▶ 乗り物になったぁぁ!!
▶ マグマボブスレーw
▶ 宝箱頑丈すぎるだろww
あまりの速度と揺れに耐えきれず、まどかが、ガンッと蓋を閉めた。
「うわっ、暗ッ!」
「大丈夫? 息できてる!?」
「だ、大丈夫……たぶん……!」
十数秒ほど経った後に、宝箱ごとマグマに流される感覚が徐々に緩まっていく。
外の音はだんだん遠のき、代わりに冷たい空気が染み込んでくる。
「え、なんか……急に冷えてきてない……?」
「まさか……」
ゴトッ。
箱が何かにぶつかり、完全に止まった。
沈黙。熱も、揺れも、もうなかった。
「……開けるよ?」
まどかがゆっくりと蓋を押し上げる──
ぱかっ。
「……うそ、でしょ……」
そこに広がっていたのは、白銀の世界だった。
氷に覆われた床、透き通った氷柱、白い霧。
ついさっきまでマグマで煮られていた2人が立つには、あまりにも不釣り合いな景色。
「氷ステージ……? ここ、もう第四階層……?」
▶ 火から氷www
▶ お約束といえばお約束
▶ 体温バグりそう
▶ ぶさかわ固まってるww 凍ったか
そして、突如として声が響いた。
「まさか……ここまで来れるとはッ……! やはり君たちは本物だ!!」
あの声だ。挑戦状の主。演出のクセが強い、あの男。
「さあ、早く……早く、我の元へ降りてくるがいい!! 最高のもてなしを約束しよう── ただし、この氷の地獄はそう簡単には突破できぬぞ!!」
「ハーッハッハッハッハッハッ!!」
▶ 来たwwwwwww
▶ ボイス演出が細かい
▶ 今たぶん近くでしゃべってる
まどかは、しばらく黙ってからぼそりとつぶやいた。
「最下層で待つって言って、さっき……三階層にいくせに……」
「──まどにゃん、声に出てるよ」
「……あっ」
こうして、まどいろの挑戦は次なるフロアへ。
第四階層・氷の地獄に、足を踏み入れた──!




