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第86話:逃げ場は──


 「──っ、来てる来てる来てるっ!」


 天井から流れ込むマグマが、じわじわと床を飲み込んでいく。


 はじけた火の粉が装備の端を焦がし、空気が灼熱に満ちていく。


 「ちょっと待って、ほんとに、どうすんのコレ──!?」


▶ えっぐ!!!

▶ これは炎上配信(物理)

▶ 詰んだか……?


 まどかといろはは部屋を見渡す。

 扉は固く閉ざされ、天井からは止まらぬマグマ──


 そんな中、いろはが叫んだ。


 「──まどか! こっち!」


 いろはが指さす先、動かした宝箱の下──

 床がズレるようにして、階段が現れていた。


 「……隠し階段?」


 「うん! いけるかも──!」


 いろはが飛び出そうとした、その瞬間──

 まどかの手が彼女の肩を掴んで引き留めた。


 「待って!」


 「えっ……!?」


 「……もし、この先が行き止まりだったら? その間にマグマが階段に流れ込んできて、逃げ道がなくなっちゃう。」


 「階段を下りるにしても、それは最後の手段にしなくっちゃ……」


▶ うわあああそれな!!

▶ 確かに下も死ぬw

▶ ゾンビゲームとかでよく見るやつ


 「でもっ、他に……!」


 視線が彷徨い、ふと──さっき動かした宝箱に目が向いた。


 「……あれ」


 まどかが呟く。

 燃え盛るマグマがすでに床に広がっているのに、あの宝箱は──燃えていない。


 それどころか、ほんの少し、浮いているように見える。


 「──これ、まさか……」


 答えを出す時間はない。マグマはすでに、足元を舐めている。


 「いろは、入るよ!!」


 「ええっ!?」


 「いいから、早く!!」


 まどかが、反転してそのまま宝箱の中に飛び込んだ。


 いろはも、ぶさかわを掴んですぐに飛び込む。


 大きな装飾のついたその箱は、中に人2人がギリギリ入れるサイズ。


 狭い、暑い、圧迫感がすごい──

 だが確かに、宝箱の内側にはマグマの熱が伝わっていない。

 

 この宝箱がマグマに耐えうる耐久力を持っているのは間違いなさそうだ。


▶ 中入ったァァァ!!

▶ そんな退避で大丈夫か!?

▶ この判断力はなかなか出来んww


 マグマはとうとう床をすべて飲み込み、地下への入口はすぐに満たされる。

 

 地下はそこまで深いものではかったのだろう。

 どこかに通じていたのかはもう知る手段はない。

 

 熱波と共に、マグマが部屋全体を埋め尽くしていく──

 

 宝箱の外壁が、マグマに触れてなお、沈まず、燃えず。

 マグマの上をぷかぷかと浮き続けている。


 「……まどか、これ……」


 「──賭け、だったけど……」


 「当たった、っぽい……?」


 密室の中で、2人は無言で汗を流しながら、

 押し寄せるマグマにただ、祈りを捧げていた。

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