第78話:鉱脈龍との死闘2
大地がうねり、天井から細かい砂粒がぱらぱらと降り始めた。
ジル=メテリオの体表が再びきらめき、砕けた結晶の欠片が空中に浮かび上がる。
それらは不規則に震えたかと思うと、急激に加速して四方へ弾けた。
「きゃっ!?」
「うわっ、なにこれ──!?」
砕けた鉱石の破片が、まるで意思を持ったように高速で4人へと襲いかかる。
その勢いは、流星群のごとく、終わりが見えない。
「避けても避けても……!」
「きりがないっ!」
「くそっ、硬い……壊しても壊しても、次が来る……!」
サーシャが斬り、まどかが弾き、いろはの結界が光を放っては散っていく。
だが鉱石は次々と生み出されているかのように数を減らさない。
▶ エフェクトすげぇ……
▶ これいつまで続くんだ?
▶ まどかたち耐えて!!
「……っ、これじゃ押し切られる……!」
まどかが一体をナイフで弾き返しつつ、視線を鋭く走らせた。
その時、壁際で爆ぜた破片が粉々に砕けて、灰のように舞い散るのを目撃する。
「……あれ? あそこの壁に当たった鉱石、他より砕けてない……?」
「壁……ほんとだ! あのあたりだけ壁が光ってる!」
「……これって、もしかして──」
「ミスリル!? あの壁、ミスリルなんじゃ──!?」
まどかの叫びに、サーシャがスキルで確認をする。
「反応ある! 確かにミスリル混じってるよ!」
「よし! じゃあやることは決まったね! いくよっ、クロスヴェール!」
まどかの幻影スキルが発動し、ジル=メテリオの認識を一瞬だけ狂わせる。
その隙にいろはが流星群の軌道を調整する魔法陣を展開し、サーシャとロロが壁へと鉱石を誘導。
「こっちだよ〜!」
「ぶつかれっ……!」
バシュッ──! ガガッ!
数個の鉱石がミスリルの壁に叩きつけられ、砕けた破片が閃光のように飛び散った。
「効いた! 敵の鉱石、確実に減ってるよ!」
「じゃあ、一気に畳みかけるよ!」
サーシャが前へ飛び出す。
「スラッシュ・バースト!」
大剣が鉱脈龍の皮膚を切り裂き、傷口が破裂する。
「いくよ、ナイフ連撃──トリックブレイク!」
まどかのナイフの起動に合わせて、複数のナイフのエフェクトが四方八方から鉱脈龍を傷つける。
「援護、任せて! ヒートライン・バインド!」
設置済の陽炎の環から伸びた炎が、鉱脈龍に絡みつき動きを阻害する。
「ロロもやっちゃうぞーっ、爆弾投げ投げ祭り!!」
▶ うおおお!新技祭りだ!!
▶ ロロだけ、いつも通りだけどww
結晶の雨を切り抜け、4人の攻撃が重なる。
ジル=メテリオが咆哮を上げ、立ち上がった背中の鉱石が一気に黒く染まり──
轟音とともに広間全体が閃光に包まれた。
残ったのは、砕けた結晶の欠片と、沈黙した巨大な躯体。
「……終わった、ね……!」
「ふぅ……マジで強かった……!」
「ぶさかわも……よく耐えた!」
「きゅっ!」
▶ 勝ったあああああ!
▶ 演出すごすぎ!!
▶ 今の連携最高だった!
▶ ぶさかわよく生き残った!
しばらく息を整えたあと、広間の隅に視線を向けたまどかが、ふと立ち止まる。
「あれ……これって──」
壁の一部、ミスリルに覆われた部分が流星の一撃で崩れており、
その断片が床に落ちて、かすかに青く輝いていた。
「……これは採れる……!?」
「壁から直接採掘はできない仕様みたいだけど、壊れた破片ならいけそう!」
いろはが素早く採取ツールを取り出し、丁寧にかけらを拾い集める。
「やった! ミスリル、ゲットだよー!!」




