第73話:新装備と次の依頼
ぶさかわのお披露目を終えたその足で、まどかといろはは素材整理と装備の強化を目的に街の工房通りへと足を運ぶ。
目的地は、いつもの鍛治屋 《ミナト・ワークス》 。
入口のドアを押し開けると、軽い金属音がチリンと鳴る。
「こんにちわー。ミナトさん、サラさん、来たよー」
「やあ、まどか! いろはも……お疲れさま! 大会、見てたよ」
鍛治士のミナトが、金槌を持ったまま片手を上げる。
受付のカウンターでは、サラがにこにこと笑っていた。
「ほんと、かっこよかったよ。あんな大舞台で堂々と戦ってて、すっかり有名人だね」
「いやいや、そんな……でもありがとー」
まどかが照れ笑いしながら工房の奥へ進むと、いろはが後ろで「……うふふ」と小さく笑っていた。
その後ろには──とことこ。
ぶさかわが、律儀に距離を取ってついてきていた。
「…………えっ?」
「……それって、例のペット?」
ミナトとサラが同時にぶさかわを見て固まる。
「うん。イベントの報酬でね。さっき卵から孵化させたの」
「ぶさかわ、って言うんだよ」
「ぶさか──っ!?」
サラが思わず吹き出し、ミナトが口元を押さえて肩を震わせる。
「……え、ぶさかわ!? それ、名前!?マジで!?」
「なにそのセンス! いや、うん、わかりやすいけど……!」
▶︎ まあそういう反応になるわな
▶︎ ぶさかわ本人の前で笑わないであげてw
▶︎ ぶさかわ「きゅ……」
ぶさかわは事情がよくわからないながらも、口を半開きにしてきょとんとしている。
「まあでも、なんか……似合ってるな」
「うん。見れば見るほど、ぶさかわ……だね。……かわいい」
「でしょ!?」
「かわいい……かなあ?」
まどかが頭を撫でると、ぶさかわは小さく鳴いた。
ミナトとサラも、それを見てようやく笑顔を整える。
「さて、それはそうとして。今日はね、イベントで手に入れた素材を持ってきたんだ」
まどかが差し出したのは、あの大会の報酬でもらった強化素材【幻水晶】と、狩りで集めた鉱石や獣皮、魔石の数々。
「おお、これはいいものだね……!」
ミナトが目を輝かせて素材を一つ一つ手に取っていく。
「幻水晶は、硬さこそないけど武器強化に使えば相手を惑わす効果を付けれるよ。トリックスターと相性も良いはず」
「おぉ、じゃあ、それで強化お願いします」
「了解、 じゃあ30分くらいで仕上げるよ」
「ついでに私のロッドの見た目パーツも変えられます?」
「もちろん。あ、ちょうどいいのが入ってるよ。スイッチ入れた時の光り方が星型になる新型。要る?」
「買います!」
その間に、サラが小さな棚から何かを取り出して戻ってきた。
「そういえば、ペット用の装備もちょうど入荷したところだったんだ。よければ見ていって」
そう言って差し出されたのは、小さな革製の爪装備(攻撃力0)と──
「……シルクハット?」
「か、かぶせるの? ぶさかわに?」
「絶対似合うでしょ!」
シルクハットをそっと被せると──
「……っぷ」
思わず全員が吹き出す。
「なにこれ……似合ってる……ような、似合ってないような……」
▶︎ 乗せてる感ww
▶︎ クラシック路線www
▶︎ これは……ぶさエレガンス!
ぶさかわ本人はまんざらでもない顔で、帽子を落とさないように頭を傾けていた。
そうこうしていると、ミナトが作業を終えて戻ってくる。
「よし、まどかの武器、強化完了だ!」
《ブレイザークロー・幻》 に進化!
ナイフの刃がわずかに霞んで、蜃気楼のようにゆらゆらと揺れているように見える。
「わ、なんか炎みたいでカッコいい!」
「演出的にもかなりポイント高いからね。配信映えは保証するよ」
一息ついたところで、ミナトが思い出したように声をかける。
「そうそう、実は新しい鉱山の情報があってさ。もし時間があるなら、探索お願いできない?」
「鉱山?」
「うん。 《ミスリル》 が採れる可能性があるって噂の場所。今、調査中なんだけど、現地はちょっと強めのモンスターも出るから……まどかたちみたいな腕の立つ人に行ってもらえたら助かる」
「面白そう。まどにゃん、行ってみようよ!」
「うん、いいよ。場所だけ教えてもらっていい?」
ミナトが地図を差し出す。指差されたのは、街の東、山岳地帯にある《グラナ鉱山跡》。
「準備が整ったら、気をつけて行っておいで。報酬は期待してて!」
「オッケー、それじゃまた後でね!」
「ぶさかわー、帽子落とさないようにねー」
「きゅっ!」
▶︎ 次回、ぶさかわ鉱山へ
▶︎ ミスリルって、まだかなり貴重だよな
▶︎ まどにゃんといろはの新装備たのしみ~




