第62話:最後の10秒、最後の一撃
残り6分──
ボスのHPは13%。
まどか、ソラ、コノエ、サーシャ、ユーリ──
全ての火力が、怒涛の勢いでボスに襲いかかる。
残り5分、10%。
4分、8%。
3分、5%。
2分、3%。
もはや1%減らすのに、誰一人として手を抜けない。
視聴者も息を飲みながら、打ち込まれるスキルの波にただ見入っている。
▶ 全員全力すぎる
▶ 誰一人引いてない……!
▶ もうちょっと……! ほんとに倒せそう!
──そして、残り1分。
ボスのHPはついに1%を切った。
その瞬間、ボスの体がふわりと揺れ、天と地に広がっていた二つの存在──
天使と悪魔の姿が重なり合い、一体へと再統合される。
「……合体した!? でも──あと1%だよ!押し切れえぇぇ!!」
コノエが魔法の詠唱を加速し、ソラが矢を連射し、まどかが駆ける。
だが、次の瞬間。
ボスの動きが止まり、
その右腕がゆっくりと、空へと掲げられた。
──あのモーション。
「うそ……でしょ……!?」
ほぼ1時間前。
開始数秒で全員をリスポーン送りにした、あの落雷の開始モーション。
「今発動されたら終わりだって……! あれだけは……!」
もう1分の猶予はない。
ここで倒し切らなければ全滅、それで終了。
「間に合って……!」
まどかがナイフを構え、《終絶》 を叩き込む。
ソラの影が矢を放ち、コノエの魔法が空を埋め尽くす。
その時──
ふと、視界の端でまどかはいろはの姿を見た。
「……いろは? なんで前に──!」
本来後方支援であるはずのいろはが、いつのまにかまどかの横に並んでいた。
だが、まどかは振り返らない。──そんな余裕は、もうない。
HPゲージが0.2%、0.1%、そして……
──0.01%。
あと一撃、あと一歩。
そのはずだった。
だが──ゲージが、止まった。
「っ……!?」
どれだけ攻撃しても、HPバーが動かない。
攻撃が通っているエフェクトは表示されているが、手ごたえが一切ない。
▶ え、止まった?バグ??
▶ このスキル発動中は絶対に死なないやつ!?
▶ 終わった……マジで……
困惑している間にボスの発動モーションは完了する。
天に掲げられた右手に、雷の粒子が集中していく──
そして。
「いやあああああああああ!!!!」
ロロの叫び声と同時に、
視界、画面が真っ白に染まる。
参加者たちは、1人ずつ光となって弾けるように消えていく。
あの時と同じ。
初手で成す術なく全滅した、あの雷撃。
だが──今は、違う。
あとほんの少し、あと0.01%の場所まで辿り着いていた。
けれど……。
間に合わなかった。




