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第60話:崩れかけた均衡


 メルザレク=ルーメン──

 宙を漂う巨大なその存在は、圧倒的な力で冒険者たちを迎え撃った。


 だが、開始数秒で全滅していた配信者たちは、

 そこから驚異的な粘りと成長を見せて戦線を整え、持ち直していた。


 「平均レベル40にも満たないプレイヤーが、レイドボス相手にここまでやれるとは……」


 実況の声が漏れる。

 

 参加者も、視聴者も、誰一人としてまだこのボスの討伐を諦めてはいない。


 まどかとフィーノが前衛で攻撃を誘導し、

 コノエとソラが火力を叩き込み、いろはとクレアが全体を支える。


 サーシャとロロも独自の立ち回りでヘイト管理と奇襲を繰り返す。


 20分経過時点でボスのHPは60%を切り、


 30分の時点で──残り40%。


 戦場に光が見え始めた。


 「これは──いける……!」「あと30分、いけるよこれ!」



 全員がそう信じた、その矢先だった。


 「……なんか、今の動き、変じゃなかった?」


 まどかが気づいた瞬間だった。


 メルザレクの体が、ぐらりと震える。

 光と闇が混在していたその姿が、ビリビリとノイズを走らせて崩れていく。


 そして──



 2体に分裂した。


 天使のように神々しい光を纏う上半身と、

 悪魔のように禍々しく禍を引きずる下半身に。



 「分裂……!?マジかよ!」


 「うそ、パターン変わった!? まだ30分あるのに!?」


 コメント欄も一気にざわつき、


 実況も「こ、これは想定外の……!」と声を上げる。



 「天使」と「悪魔」


 フィールドの上空に浮かぶ天使型は、範囲回復・連続ホーリーショット・リジェネ・光爆など広範囲魔法の支援&妨害型。


 放置すれば延々と全体に干渉し続ける。


 一方、地を走る悪魔型は、突進・掴み・範囲スラッシュ・テレポート追撃など強引に後衛を狙いに来るアサシン型。


 特にいろは、クレア、コノエら支援・火力型を優先して狙ってくる。


 「ロロ、回避して!……あ、くそ、間に合わない!」


 「うひゃっ!? あっぶな!? ちょ、サーシャ、ちょっと助け──ぎゃーーー!」


 悪魔の突進をモロに受けてサロロ組が同時に戦線離脱。


 ソラも同様。


 身を隠せる場所が少ないこのフィールドでは、後衛狙いの悪魔の前に身をさらさざるを得ず、回避しきれずに地に伏す。


 さらにユーリが前に出すぎたところを天使の範囲攻撃と悪魔の奇襲に挟まれ無念のリスポーン待機に入る。


 「クレア、支援できる!?」「間に合います、支えます……!」


 「いろは、フォロー任せていい!?」「うん、まどにゃん、無理はしないで!」


 最前線に残されたのは、フィーノ、まどか、そして彼女たちを支えるいろはとクレア。


 残りの仲間が復帰するまでの数十秒、この4人が2体のボスを引き受ける時間帯が生まれていた。


 たとえ1分の待機を終えて復活しても、バラバラで復帰をしたら順番に各個撃破されてしまう。

 この前線だけは、何が何でも死守しなければならない。


 フィーノは天使型のヘイトを引きつけ、ホーリー系の魔法を盾で耐え、


 まどかは悪魔型の猛突進を回避し、すれ違い様にナイフで一撃、


 いろはとクレアは、そのどちらもを視界に入れて支援魔法を飛ばし続ける。


 緊張感は、まさに針の穴を通すかのような連携。


 復帰したロロは、開口一番に「やば、戻ったら修羅場ってる!?」と叫び、

 サーシャはその横で「まったくもう……手間かけさせて」と苦笑。


 それでも2人は、再び天使と悪魔を分断するために動き始める。


 残り時間15分。

 HPゲージは──25%。


 「……間に合うか?」


 誰かの呟きに、

 配信を見ていた者たちはそれぞれの想いを抱いた。


 希望はまだある。でも、このままじゃ……

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