第49話:再戦
「ゴールあっちだー! いってきまーすっ!」
「待て待て! 絶対なんかあるって、ロロー!!」
第3層に突入したサロロ組は、フィーノ組と同様に一直線の長い橋に差し掛かっていた。
遥か彼方、光るポータルが視界の中心で輝いている。
だがそれは──当然ながら、罠だった。
「やっぱりな……!」
「わー! 崩れてるー! でもだいじょーっぶ!」
道が崩れ、地面が割れ、サロロの2人はそのまま奈落へと落下──する、かに思えた。
だが、彼女たちは落下する事に慣れていた。
サーシャは冷静に両手剣を握り頭上から落ちてくる瓦礫を粉砕し、ロロが着地寸前で魔法の障壁を展開。
絶妙な着地で、落下ダメージは最小限に抑えられていた。
「ったく……こういうの慣れてるのも考えもんだよ……」
軽く回復をすませて、戦える準備を整えているとロロが目の前の巨大な存在に気がつく。
「あーっ!! 今回は逃げないもんねー!」
彼女たちの目の前に現れたのは、かつて──ほんの数時間前に彼女たちを打ちのめした存在。
ステージ1の終盤に登場した、LV45・デザートジャイアントだった。
「……おい、ふざけんなよマジで」
「サーシャ、リベンジのチャンスだよー」
2人は迷わなかった。敗北の記憶はまだ新しい。あの時とは違う──そう信じて、戦いの幕は上がった。
前回とは違い、行動パターンも多少は把握済み。初動で致命的なミスはない。
特にサーシャは防御と攻撃を両立させながら、ロロの動きと連携して戦闘を進める。
しかし、前回と決定的に違うのは──ロロの主火力、爆弾がもうないということ。
「くそっ、あれ全部スライムに使っちまったんだよな……!」
爆破戦法を封じられたロロは、回復と魔法支援に全力を注ぐものの、押し切るには一歩足りない。
中盤、回避のタイミングを誤ったサーシャが吹き飛ばされ、前線が崩れる。
すかさずロロに向かい攻撃を繰り出す砂の巨人。
「ロロ! くそっ……!」
急いで駆けつけるがロロの回避も間に合わず、2人同時にHPが尽き、転送──スタート地点へ。
「くっそー!! 爆弾さえあれば倒せそうなのにぃ!!」
「ダンジョンじゃ補充はできないからねぇ……」
再起を図る2人は全力でダンジョンを駆け抜ける。
幸いにも道中のモンスターはほとんど排除済み。迷いなくボス部屋へと到達する。
再戦。今度は慎重に、連携を重視してジリジリとHPを削っていく。
しかし──時間は無情だった。
「タイム、あと少しだよロロ……!」
「ううーっ、まだいけるのにっ!」
最後の攻撃の詠唱中、無情にもタイムアップの通知が表示される。
その瞬間、デザートジャイアントのHP残量は約30%──あと少しで倒せそうだった。
「……くっそ、あそこで死ななきゃ、あと数分あれば……!」
「もうちょっとで倒せたのにぃ〜〜!」
少しでも何かが違えば、届きえた可能性のある状況に悔しげに吠える2人。
だが、視聴者の反応は熱い。
▶ あとちょっとだったじゃん!? 悔しいー!
▶ ロロ爆弾なしでもあそこまでやれるのすごいわ
▶ サロロのテンポ、やっぱ最高だった
2人は唇を噛みながらも、役目を果たし消えゆくステージとボスを見据える。
「……次は、絶対勝つからな」
サーシャとロロはそう呟き、転送の光に身を包まれる。




