第48話:崩落の淵で、なお進む
「よし……大丈夫、まだ時間はある。ここで巻き返すぞ!」
第3層に突入したフィーノ組。残り時間は28分。絶望的ではない──少なくとも、3人はそう感じていた。
「この難易度だ、他のチームも簡単には行ってないはず。 ワンチャンあるぞ!」
「うん、行きましょう。最後まであきらめなければ、きっといけるはずです。」
進み始めて暫くすると、3人は前方が開けた空間に出る。
中央に長い一本道が通っており、左右は深い谷。下は見えず、風が巻き上がっては底へと吸い込まれていく。
一本道の先には、……うっすらと光るポータルが見える。
ゴールの気配──しかし、その前にボスらしき姿は見あたらない。
「え? まさか、もうゴール……?」
「んなわけないだろ、どう考えても罠……けど、罠だろうが何だろうが、行くしかない!」
ユーリの率直な発言にフィーノが答える。
実際にその通り、ここで足踏みしていてもしょうがない。
フィーノを先頭に一本道を一歩ずつ慎重に進み始める3人。
奇妙なくらいに何も起きず、一本道の中頃までたどり着く。
「なんだよ、何もおきねえじゃねえか……このままゴールまで行けちゃうんじゃ……」
ユーリが呟いたその時、地響きが足元を揺るがした。
──ゴゴゴゴゴ……
▶ これは見事な死亡フラグ
▶ フラグだと分かってても言ってしまうのはわかる
▶ にげてぇーーーー!!
「っ……まずい! 崩れるぞ、走れ!!」
フィーノの声が響くが、前方も後方も、橋が崩れ始めていた。
「まずい、間に合わな──」
──バキィィンッ!
叫ぶ間もなく、橋が砕け、3人の身体が宙を舞う。
足元の石が音もなく砕けていき、彼らは底知れぬ奈落へと落ちていった。
「……生きてる?」
「いてて……砂? クッションにはなったけど……やば、HPがほぼ無い……」
「うぅ……ま、待って、今回復──」
その瞬間だった。3人の頭上から、巨大な黒い影が迫ってきた。
「ッ!?」
姿も形も判然としない、ただ異様な大きさと威圧感だけが襲いかかる。
その影が、無造作に振り下ろした腕の一撃で、フィーノが地面ごと叩き潰された。
「フィーノ──っ!」
ユーリも続けざまに吹き飛ばされ、クレアが悲鳴を上げる間もなく闇の中に──。
次の瞬間、3人はダンジョンのスタート地点に転送されていた。
「……なんだった、今の」
「わかんねぇ……でも、ボスだったんだろ、あれが」
「姿もよく見えなかった……まさか、こんな形でやられるなんて……」
残り時間、20分。
それでも3人は顔を上げた。
「……あれにやられっぱなしで終わりなんて、納得いかない」
「うん。せめて、顔だけでも拝んでやる! ……できれば一発、ぶん殴ってやろう!」
「なら、行こうぜ。まだ、終わってねぇ!」
フィー農場の3人は、すでに敵のいない道を全力で駆けていく。
もう一度、あの影の前に立つために。
そして、全力の一撃をお見舞いしてやるために……!
▶ フィー農場、全力で走ってるのエモすぎる……
▶ 立ち上がるのが早い!このメンタル、見習いたい……
▶ 最後に一矢報いてくれ……!




