第3話:突発パーティー配信
「……あっ、しまった。いまも配信中なんだった。コメント、心配してくれてありがとうー!」
「ちょ、配信してたの!?」
あまりに自然だったので、まどかは完全に気づいていなかった。
あのドジっ子救出劇が、すでに全世界に配信されていたとは──
「うんっ!毎日配信チャレンジ中〜!今日で28日目っ!」
慌ててまどかがUIを操作すると、いろはの配信ウィンドウがサイドに展開される。
映像の右端には、今しがた自分が毒消しを投げるシーンが映っている。
チャット欄には文字が次々と流れ──
▶ だから毒沼に気をつけてっていったのにー
▶ 救世主登場
▶ てきぱきすぎて笑う
▶ シーフかな?かわいいもっと見たい!
「いやーごめん、あせってて配信してるって言ってなかったや」
いろはは気まずそうに笑いながらも、手を振ってコメントに応じている。
まどかは何かを言いかけたが、口が止まった。
なんだこの空気。
配信に映ってる、というだけで、息苦しいような、でも少し浮いたような、妙な気持ちになる。
しかもコメント欄が盛り上がっていて──完全に“主役”に引っ張り込まれている。
「ねえ、せっかくだからこのまま一緒に進まない? コメント欄も盛り上がってるみたいだし」
唐突な誘いに、まどかは少し眉をひそめた。
腕を組み、ほんの少しだけ視線を落とす。
──突然、カメラの前に引っ張り出されて。
──いきなり“盛り上がりの渦”の中に入れられて。
拒否したら、場が冷めるんじゃないか。
そんな気持ちがよぎる。でも、でも──
「……いや、無理じゃないけど。気分的にちょっと、整ってないっていうか……」
「つまり整えばOK、ってこと!? やったー!!」
「言ってない言ってない! 今のはそういう意味じゃない!!」
▶ 照れてるの可愛い
▶ 突発パーティーきた!
▶ 若いっていいなぁ
あー……なんか……
思ったより、悪い気はしなかった。
少しだけ、心がふわっと浮いている。
これまでのソロ行動では感じたことのない感覚だ。
「……わかった、わかったよ。私はまどか。今日はよろしくね」
「やったー、わたしはいろはだよ! よろしくね、まどちゃん!」
まどちゃん、というあだ名を自然に口にしたいろはに、まどかは軽く目を見開いた。
不思議と嫌じゃなかった。
配信ウィンドウのコメント欄も、笑顔の絵文字や好意的な感想で溢れている。
▶ いい感じの凸凹コンビになりそう
▶ まどちゃん落ち着いててかっこいい
「じゃあ、行こうか! こっちのルートが安全だと思うよ!」
「ちょっと、それ逆方向だってば!」
「えっ、うそっ、あっほんとだ!」
……不安しかないけど。
この子と一緒なら、何かが変わるかもしれない。
そう、ほんの少しだけ思った。