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第37話:静かな熱

 

 特設会場でのインターバルが始まって、15分ほどが経った。


 【コノエ】


 薄く目を細め、無表情のまま画面を操作している。

 視線の先には、第一ステージの公式配信──ダイジェスト映像。


 「……ルート選択、良し。効率、良し。修正は不要。……次。」


 戦いぶりだけでなく、自分自身の動き一つ一つを冷静に検証していた。

 

 基本的には自分の動きの見直しだけを行っていたコノエだったが、ふと目に入ったまどいろのシーンに目を止める。


 「この動き……非効率な動きが混ざっているのに、結果的には最高効率に繋がってる……」

 

 まどかの動きは非常に効率的だ。自分の考えとも合致している。

 しかし、いろはの支援が自分の考える効率的な動きからは大きく外れている。

 

 だがその後の結果だけを見れば、自分の考えと同等、いやそれ以上の結果をもたらしているシーンが多く見えた。

 

 気がつくとコノエは自分のシーンより、まどいろのシーンばかり目で追うように分析を続けていた。

 

 

 【ソラ】


 小さな物陰に腰掛け、静かに目を閉じている。

 眠っているのか、ただ休んでいるのかは分からない。

 微動だにせず、まるで空気のように休息していた。

 

 

 【フィーノ組】


 フィーノ、ユーリ、クレアの3人は、スマホサイズの端末を囲んで何かを見ている。


 「……これ、掲示板……?」


 覗き込んだクレアが、指を口元にあてて小首を傾げる。


 「お、うちらのことも何か書いてある?」


 ユーリがごそごそとページをスクロールすると丁度フィー農場の話題を見つける。。


 《てかさ、フィーノ組だけ……最後MCコメントなかったよな……?》


 「え……ちょ、待って、もしかして──スルーされてた!?」


 「えええええーっ!? 俺ら……ちゃんと頑張ったのに……!!」


 衝撃の事実を掲示板で知らされ、大げさなリアクションで肩を落とす。

 

 3人で肩を寄せ合い、わちゃわちゃと騒ぐその姿は、ある意味平和そのものだった。



 【サロロ組】


 「いやぁ〜最高だったねぇ、サーシャ!」


 「どの口が言ってんのよ……」


 ロロは元気いっぱい、サーシャは若干疲れた顔をしながらも、やれやれと笑っている。


 オアシスで魚に丸呑みされた話を、再現芸付きで何度も披露し、周囲を和ませていた。


 サーシャは最後のまどいろとの共闘を思い出す。

 

 人数が多い分当然と言えば当然だけど、いつもより調子が良く動けていた気がする。

 

 それはまどかの前衛としてのターゲット確保と、いろはの支援の判断のレベルがそれだけ高かったという事。

 

 負けちゃいられないなぁ。と頭をポリポリと掻いていると、ロロが一緒になってサーシャの頭をポリポリし始める。

 

 まったく、しまらないなと苦笑いをするのだった。



 【まどか&いろは】


 「──さて、私たちも見ときますか。ステージ1ダイジェスト。」


 「うん!」


 端末を2人で覗き込みながら、第一ステージを振り返る。

 

 「やっぱりコノエさん、すごい安定感だね……」


 「うん、冷静でさ、無駄がない感じ……!」


 画面には、高レベルモンスターを寸分違わず処理するコノエの姿。


 「ソラさんも、最後のラッシュ凄かったなぁ。あれ、ほんとに一人で落としたんだよね?」


 「うん。ラスト1分で撃ち抜いたの、見てて震えたよ!」


 笑いながら、自然と尊敬の色を滲ませる。


 「サロロ組は……想像以上にハチャメチャだったね。」


 「でも、ちゃんと“魅せる”のは上手いよね、なんだかんだで!」


 そして──


 「フィーノ組はなんていうか、職人さんみたいだったね。ボス相手でも全然崩れる気配がなかったよ」


 「うん、一発で崩れかねないうちとは真逆って感じだね」


 「地味だけど、ミスも少ないから、長期戦イベントとかだとめっちゃ強そう」



 それぞれ違う強み、それぞれ違う輝き。

 だからこそ、この場に呼ばれている。


 「──やっぱり、すごい人たちばっかりだね。」


 「うん。でも、私たちも負けたくない!」


 ぱんっと手を合わせ、まどかといろはは小さく気合を入れ直した。


 ──次はもっと高く跳ぶために。


 30分の休憩は、静かに、しかし確かに、熱を育んでいた。



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