第34話:それぞれのラストスパート
まどいろ&サロロ組のボス討伐から遡ること数分前。
ステージ終了まで、残りわずか──。
【コノエ視点】
コノエは最後まで、まったくペースを崩さなかった。
無駄な戦闘は避け、
確実に討伐し、
確実に宝石を拾い上げる。
「断閃連牙を再展開。敵HP残り15%なので──通常魔法でフィニッシュ」
ぼそりと呟く声も変わらず淡々と。
コノエは最初から最後まで、理詰めのまま宝石を積み上げ続けた。
▶ コノエ、マシーン説
▶ ブレない女、コノエ
▶ 職人技すぎるwww
ボスの討伐こそ成しえなかったが、倒し続けたモンスターのレベルは全て30後半。
格上のモンスターを、大量に、ソロで倒し続ける異様さは見ている者を十分に魅了していた。
【フィー農場組視点】
一方、フィーノたちも、ボスモンスターとの健闘を続けていた。
「いける!あと少しだ!」
フィーノが耐えて、ユーリの拳が閃き、クレアの支援が飛ぶ。
だが──
「くっ、あと少しなのに……間に合わないっ!」
無情にもタイムリミットの鐘が近づいてくる。
ボスの体力はわずか、あと少し、ほんの少し。
──結局、フィーノたちは討伐を達成できなかった。
原因は明らかだった。
──途中、フィールドの宝石を拾うために何度も足を止めたこと。
「……やっぱり、欲張りすぎたか」
フィーノが静かに呟く。
モノを大事にする性格が裏目に出たかたちだった。
▶ フィー農場らしいwww
▶ でも悔しいなこれ
▶ 無念だけど、ナイスファイト!
フィー農場、ボスのHPを残り10%まで削るも、倒しきれずに無念のタイムアップ。
消えゆくボスの巨体と特設フィールドを前に、3人は天を仰ぐのだった。
【ソラ視点】
そして、最後は1人で延々と矢を放ち続けるソラの戦い。
崖の上。
砂嵐を背に、一本の弓を引き絞り続ける。
30分近く。
ソラはひたすら、たった一人でボスモンスター《LV42・サンドビースト》の体力を削り続けていた。
一発。
また一発。
矢が放たれるたび、確実にボスの体力が減っていく。
その間、一度も攻撃を外さず、気配を悟らせることもない。
まさに超人的な集中力。
──残り1分。
さすがにソラの表情にも焦りがにじむ。
だが、最後までミスはなかった。
──残り数秒。
──最後の一矢。
放たれた矢が、ボスの胸部に突き刺さった瞬間──
ボスの巨体が、ガクリと崩れ落ちた。
【ボス討伐成功】
このイベントで唯一、たった1人でボス討伐を成し遂げた瞬間だった。
▶ うおおおおおお!!!
▶ これソロでやるのおかしいだろwww
▶ 間に合った!! ソラ神すぎる
だが──
直後に、無情なアナウンスが響いた。
【制限時間終了】
ソラがボス討伐で得た宝石の半分以上は、回収が間に合わなかった。
タイミングの悪さに、ソラは珍しく、ほんの僅かに悔しそうな表情を浮かべた。
その様子を、公式カメラがばっちり抜き取る。
▶ ソラさんめっちゃ顔に出てるwww
▶ かわいいwwww
▶ これ保存した
──こうして、第1ステージ宝石集め、それぞれの戦いが幕を閉じた。




