第32話:敗北の先にあるもの
【公式実況視点】
フィールド各地で、参加者たちがボスモンスターとの戦いに挑み始めていた。
【サロロ組視点】
サロロ組が遭遇したのは、ひときわ巨大な存在だった。
砂に埋もれかけた遺跡の中から姿を現したそのボスは、LV45・デザートジャイアント。
──イベント中、確認された中で最高レベル。
10メートル近い体躯の砂の巨人が静かに佇んでいた。
「ロロ、あんまり無茶するなよ!」
「だいじょーぶ! いけるいける、たぶん!!」
勢いよく飛び出したロロに、サーシャが慌てて追随する。
最初のうちはテンポ良く攻撃を当てていたものの──
ゴゥン、と巨体が拳を振り下ろす。
ロロは拳をよけるが、その衝撃だけで二人の体勢が崩れた。
二度三度と繰り返される衝撃にサーシャたちでは堪えきれない。
「──まずい、支えきれない!」
サーシャがすぐに撤退を指示し、ロロも渋々ながら後退。
ロロは悔しそうに砂を蹴ったが、サーシャが肩を叩いてなだめる。
「いいよ、ロロ。今回は仕方ない。普通に宝石集めに戻ろう」
▶ サロロチャレンジ失敗かー
▶ まああのレベル差じゃしゃーない
▶ サーシャさんやっぱ頼れるなぁ
▶ ロロが大人しく引き下がってる時点で相当だろ
【まどいろ視点】
ほぼ同時刻。
まどかといろはもまた、森の外れでボスに遭遇していた。
相手は、黒く光る甲冑をまとった騎士型モンスター。
表示されたレベルはLV43・ダスクナイト。
「……どうする?まどにゃん」
いろはが小声で尋ねる。
だが、まどかの目はもう前を向いていた。
「やるよ。逃げる理由なんて、ない」
さっきまで不安な表情を見せていたいろはも、まどかの声で引き締まった表情へと変わる。
気持ちは、すでに一致していた。
戦闘開始。
最初の数合で、二人は気づいた。
──基礎ステータスは、先ほど倒したゴーレムよりもさらに一回り強い。
しかもその上で、剣の一振りごとに範囲攻撃やスタン効果を伴う多彩なスキルを繰り出してくる。
ボスモンスターらしい厄介さだった。
すべての攻撃を避けきるのは不可能、致命傷になりそうな攻撃だけを最優先で避けて、いろはの支援とポーションを使い何とか回復を間に合わせる。
回避に専念するあまり、攻撃を通す機会も少なくなってしまう。
「まずいね、このままのペースじゃ、削り切れないかも……」
息を整えながら、まどかが短く呟く。
──けれど、まだ奥の手は残している。
戦闘が続く中、残り時間が10分を切った。
「──絶影、使っても間に合うか……?」
スキルを発動しようとした、その時だった。
視界の端に、二人の人影が映った。
──サーシャとロロ。さきほどボスから撤退したサロロ組だ。
まどかは即座に呼びかけた。
「──そっち、手を貸して! 報酬は山分けで、このままじゃ削りきれない!」
サーシャは一瞬、迷ったようだった。
「……いいのか? 点数、競ってるんだぞ?」
だが、ロロは迷わなかった。
にっこり笑って、ぐっと親指を立てる。
「やろーやろー!! 協力戦っ!」
▶ うお、共闘くる!?
▶ まどにゃんのお願いに即OKするロロかわいい
▶ この組み合わせアツすぎるでしょ!
サーシャも苦笑いを浮かべると、大剣を構え直した。
「了解。じゃあ、一緒に決めよう!」
──共闘、成立。
その瞬間。
まどかは意を決して、スキルを発動する。
「絶影──発動!!」
身体が軽くなる。
視界が広がる。
時間の感覚すら、ほんの少しだけ変わる。
「──よし、ここからたたみかけるよ!」
4人の連携が、新たな勝負を切り拓こうとしていた。
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