第30話:渡りに船
巨大なゴーレムを前に、まどかといろはは武器を構えた。
──戦闘開始。
幸いにも、ゴーレムは特殊なギミックや即死級のスキルを持っていない様子だった。
だがその代わり、ただただシンプルに強い。速い。硬い。
「うっわ、これ、やばい硬さ……!」
「でも、いける! タイミング合わせれば、絶対いける!」
まどかのナイフは、強化後の鋭さで着実にゴーレムの装甲を削り、
いろはの支援魔法は、わずかながら隙を作り出していく。
一撃でももらえば危ない。
それでも、二人はギリギリの間合いで回避と攻撃を繰り返し、
少しずつ、少しずつゴーレムの体力を削っていった。
▶ いやいや、これ普通逃げるだろ……
▶ 今LV34だっけ? 格上相手にゴリ押しは草
▶ まどいろ強くなったなぁ……
戦いは長期戦になり、気づけば開始からすでに15分近くが経過していた。
レベル差のせいで一気に攻めきれない部分はあるが、動きそのものは単調。
パターンに嵌るともうまどかに攻撃が掠ることすらない。
そして──
「トリックフェイント! ──これで、終わり!」
まどかの渾身のカウンタースキルが、ゴーレムのコアを穿つ。
巨体が地響きを立てて崩れ落ちた。
討伐完了。
倒したゴーレムからは宝石4個のドロップが落ちる。
強さを考えると割に合わない報酬ではあるが、本命はこちらではない。
王座跡に並べられていた宝石の数はなんと10個。
合計で14個の宝石を獲得する大きな成果となった。
「……でも、15分かけて14個って考えると、
雑魚を狩るのと効率そんなに変わらなかった気もするなぁ……」
何とかスキを見て落ちてる宝石だけを拾って逃げたほうが良かったかもしれない。
でも配信映えも考えると、戦わない手はなかったし、うーん、間違いではなかった……よね?
まどかがナイフを手に考え込んでいると──
──ピロン、とシステムアナウンスが鳴った。
【ステージ1・中間発表】
──開始から60分経過。現時点での宝石獲得数ランキング──
1位 コノエ 52個
2位 ソラ 46個
3位 まどいろ 44個
4位 フィーノ組 39個
5位 サロロ組 36個
「……っ、やっぱり、結構差ついてる……!」
「まだ巻き返せる!まだ時間あるから!」
二人が気を引き締める間もなく、続けざまに追加アナウンスが響く。
──残り30分となりましたので、フィールド各地に5体のボスモンスターが放たれます。──
──ボスはすべてレベル40以上、倒すことができれば大量の宝石を獲得可能。──
──ただし、敗北時は当然ペナルティが発生するため、各自の判断で挑戦を。──
──ハイリスク・ハイリターン! 残り30分、皆様にご武運を──!
「……どうする?」
いろはが、不安そうにまどかを見る。
まどかは一拍だけ迷い──それでも、すぐに決意を込めて言った。
「渡りに船だよ。 当然、やるしかないでしょ!」
この一戦に、すべてを賭ける。
二人は、再び前を向いて走り出す。




