第27話:それぞれの戦い1
──特設フィールド、ステージ1開始直後。
「まずはマップ広げながら、探索と討伐、並行で行こっか」
「うんっ! まずは地形も把握しないとね!」
まどかといろはは、森の中を慎重に進んでいった。
視界の端に開いたミニマップは全体がグレーアウトしているが、
自分が通った付近は色がつき詳細に表示される。
ただグレーアウトしている部分でも、
地形の起伏や構造物の影はなんとなくで把握できる。
「……倒れた遺跡の柱の影、見える?」
「どれどれ・・・? あ、あった! 宝石もあった!」
フィールドで拾い集めた宝石は、合計で3個。
だが、やはり自然湧きだけではペースは鈍い。
探索と並行して、モンスターとの戦闘もこなしていく。
- LV25 フォレストオーク:宝石1個ドロップ
- LV28 トレント:宝石1個ドロップ
- LV31 シルバーウルフ:宝石2個ドロップ
- LV33 ツリーベア:宝石2個ドロップ
「うーん……やっぱりレベル30超えたあたりから、ドロップ増えるね」
「だね〜。だったら、31以上を安定して狩れるルート探そっか!」
「そうだね、敵の数もそんなに多くないみたいだし、質で勝負したいかも」
まどかはミニマップを確認する。
未踏の領域に、不自然な四角い影──人工物らしきものがいくつか映っていた。
「とりあえず一番近いここ目指そう。道中、狩れそうな敵も拾いながら」
「了解〜! 道中でも宝石キラキラ見逃さないようにね!」
再び、森の奥へと進路を取る。
【公式実況視点/コノエ】
コノエが転送されたのは、ひび割れた墓地のエリアだった。
平均モンスターLVは30台後半──
フィールド難易度は最高クラスだが、宝石ドロップも一体あたり3個、4個と上々だ。
コノエは小さく呼吸を整え、無機質にスキルを唱える。
「まずは断閃連牙展開、命中、スタン成功、敵の反撃モーション停止、バリアは不要。
スタン解除後に自己強化バフを確認、幻理斬でバフ効果を無効化。断閃連牙クールタイムが終了、すぐに再発動。
敵HP残量約10%なのであとはMP節約で通常魔法連打でおっけー。これでおしまい。次行きます。」
感情を挟まない解説。
だが、その動きに迷いはない。すべて計算された手順通り、確実に敵を削り落としていく。
▶ コノエの解説ほんと脳に刺さる
▶ この安定感、ソロってレベルじゃねえ
▶ もはや魔法工場
【公式実況視点/ソラ】
静かな断崖の上、風に揺れる草の中で、ソラは弓を構え続けていた。
1体、また1体──
矢が放たれるたび、敵はその動きを止める。
ただし、相手がLV30を超える強敵ともなると、さすがに一撃では仕留めきれない。
ソラは矢を二発、三発と間断なく撃ち込み、確実に急所を貫いていく。
モンスターたちは、攻撃を受けたことすら気づかぬうちに崩れ落ちた。
倒れた敵から落ちた宝石も、紐付きの矢を用いて遠隔回収。
無駄な接近は一切しない。
▶ ソラさん、矢を打つ動きが速すぎて見えん
▶ 二撃目以降の冷静さがヤバい
▶ あの距離で全部急所抜くのマジで異常
▶ ていうか、今日まだ一言も喋ってなくね?
──それぞれの戦場で、静かに進む戦い。
まどかといろはは、慎重に人工物の影へと近づきつつ、
効率の良い狩場を探してフィールドを進み続けていた。




